謝罪と説明
扉を通った瞬間、教室に入った時と同じように視界が暗くなる。そして、数秒後、明るくなった視界に入ってきたのは、少女と、玉座に座る王冠を被った男の姿であった。
「お、おお!成功だ!よくやったぞ、リリィ!」
「遂に成功しましたね!お父様!」
この二人が、神様の言っていた王様とその娘だろうか。成功したというのは俺達を召喚した魔法の事だろう。王様が口を開く。
「ふむ・・・流石は異世界人だな。魔力の高い者が多いようだ。おっと、すまない、私の名は、ウェーバ=デロス。この国の王だ。急にこの場所へと召喚してしまい、申し訳ない。」
いきなり本物の王様が出てきて皆固まってしまった。無論俺もだ。
「とりあえず、お主たちを召喚したことについてや、この国のことの話をしたいんだが良いだろうか?」
どうやらショックから回復したらしい担任が返事をする。そういや、いたな。神様の話の時は何も言ってなかったので存在を忘れていた。
「えっと、私達をこれからどうするのかなども話して頂けるのでしょうか?」
「もちろんだ。他には何もないだろうか?」
「はい。お願いします。」
先生、凄い頼りになります。存在を忘れててごめんなさい。
「うむ、それでは話を始めよう」
そうして、説明が始まった。話が長かったので、簡単に説明する。
まず、俺達を召喚した理由。これはほぼ神様が言っていた通り。王様の娘(リリィ=デロスというらしい)が興味を持った理由は唯の趣味だった。王様が援助した理由は、将来何かあったときの保険になることと、異世界人の能力である。尚、召喚では結構な費用が掛かったようで、そうそう行えるものではないらしい。
次、俺達が帰る方法はあるか。これは現時点では存在しない。召喚の方法が無かったので当然だろう。まあ、既に神様から聞いてるしショックは受けない。
次、この国について。この国の名前はデロスというようで、王様の名前と一緒である。大陸の中央にあるようで、周りは森で囲まれているらしいが、街道が東西南北にあり、外の国にも行くことができる。人口は意外と多く、六十万人くらいらしい。また、この国には亜人などの人族以外の種族も住んでいるらしい。
最後に、俺達のこれからについてだ。
そこまで俺達を縛りたいという訳でもないらしく、基本的には自由に行動して良いらしい。援助などもしてくれるそうで、生きていくだけなら援助だけでも十分だと言われた。寝泊りする場所も用意してくれるようだ。
また、戦う意思があるものには、たまに魔物退治などの仕事を頼みたいとのこと。絶対ではなく、できたら、ということらしい。しかし、殆ど起こらないことではあるが、もしも国が魔物の大群に攻められた時は、援助が難しくなるかもしれないと言われた。
俺としては、無理矢理戦いに出されるという訳でもないので、凄くありがたいことだと思う。
戦闘に関してのことだが、この後、俺達の能力を測定するらしい。体力と魔力の量の測定や武器の適正、それと俺達の才能(特殊能力のことらしい)などだ。
体力の測定や武器の適正は、実際に体を動かしてみて行う。
魔力の量の測定は、測るための道具があるらしく、それで測るのみだ。実に簡単である。
才能は占いで、才能を使用している場面を視るらしい。
明日からは、城で全員に護身の為の訓練をしてくれるそうだ。なるべく死なせたくないのでこれだけは絶対に受けてもらうと言われた。
戦う意思がある者は、生き物を殺すので、それに慣れさせる訓練をするから覚悟をしておけとのこと。
話の内容は大体そんなところである。話の間に一悶着あったが、クラスのリーダー的存在の超絶イケメン君、竜崎 錬也によって騒ぎは鎮められた。
さて、召喚の原因の一つが唯の趣味と聞いた訳だが、そこまで悪い気がしない。王様が正直に話してくれたからだろうか?もう、そこまで召喚されたことは気にしていない。
まあ、正直に言うと元の世界に居るより色々と楽で面白そうだからだ。
「それでは、話も終わったことだ。予定通りお主たちの能力の測定をするとしよう。測定場所は、私の娘に案内させよう。リリィ」
「はい、お父様。それでは皆さん、私に着いて来て下さい」
そういって、リリィと呼ばれた少女・・・王女様は部屋から出て行く。俺達は王女様の後を付いていく。