一方・・・ その2
怜也を探しに行ったミュウ。四時間程森の中を探し回った彼は、広い場所に出た。そこで、あるものを発見していた。
「これは・・・ドラゴンの足跡・・・と、体の跡?かな。ドラゴンのサイズと同じぐらいの跡がある。寝てたのかな?うわ、ここの木、焦げてる。っと、人の足跡もあるね・・・もしかして、レイヤ君の足跡?いやいや、まさかそんな」
彼はその足跡を辿ってみる。歩いていると、倉庫に山程積んである、ポーションの瓶が何個か見つかる。
「この瓶は・・・。この足跡、やっぱりレイヤ君の?」
そうではない事を祈りながら、歩く事二十分。彼は崖に辿り着いた。足跡はそこで途切れている。
「崖?・・・もしかして、ここから落ちて・・・。いや、まさか・・・ね」
彼は思い浮かんだ可能性をすぐさま否定する。
「そうだ。とりあえず、戻ってあの三人に話を聞こう。何か知ってるかもしれない」
そうして、彼は城へと向かった。
「あ、あいつがドラゴンを怒らせたんだ!あれを倒せば、俺も認められるって言ってよぉ!そのせいで、俺達まで襲われちまったんだ!」
叫んでいるのは近藤だ。他の二人も、概ね同じ事を叫んでいる。
城へと戻ってきたミュウが目撃したのは、そんな光景だった。
「あ、あの。デニスさん、これは?」
「ミュウさんですか。見ての通りですよ。どうして、ドラゴンに襲われたのか聞いた途端、この調子です。これから、部屋に連れて行って、改めて話を聞こうと思っていた所です」
「そうですか・・・。それなら、早く話を聞きましょう」
そう話して、デニスが三人を部屋に連れて行った。ミュウもその後についていこうとしたが、
「ミュウさん!怜也は!?」
浩人に声を掛けられる。その隣には、葵と日向もいる。
「・・・ごめん。見つけられ、なかった」
「そ、そんな・・・」
「本当に・・・ごめん」
「お兄ちゃんは!?お兄ちゃんは!?」
「怜也は・・・弟は死んでしまったんですか!?」
「・・・分かりません。・・・!ど、何処に行くつもり!?」
「怜也を探さないと!」
「待って!危険だよ!もう暗くなる!」
「でも、怜也が!」
「君達に行かせるなら、僕が行きます!元々、僕がしっかりと監視できていなかったから―――」
「ミュウさん。あの三人から話を聞いてきました」
ミュウが話している途中に、デニスが戻ってきた。
「三人の話によると、怒ったドラゴンは、三人にブレスを吐いた後、レイヤ君を追いかけて行ったとか。必死に逃げたので、その後はどうなったかは分からないそうです」
「!レイヤ君がドラゴンに追いかけられたんですか!?」
「なんでも、寝ていたドラゴンを怒らせたとか。それで、怒り狂ったドラゴンが吐いたブレスにあの三人は当りかけた、と言っていました」
「!?まさか・・・あの場所?もしかして、あの足跡、本当にレイヤ君の?だ、だったらレイヤ君は・・・」
「ミュウさん、どうかしたんですか?レイヤ君がどうしたのですか?」
「デニスさん、話を聞いた三人の内、一人でいいので連れてきてください!確認したい事があるので、一緒に山に行きます!」
「分かりました」
デニスは走って行く。浩人はミュウに質問をする。
「ミュウさん!怜也がどうしたんですか!?」
「え、と・・・。もし考えている事が当ってたら、その・・・レイヤ君は崖から落ちてると思う」
「え!?」
「が、崖から?」
「お、お兄ちゃん・・・もしかして、もう死んでるかもしれないの?」
「・・・」
「ミュウさん、連れて来ました」
デニスが近藤を連れて戻ってきた。ミュウは説明もせずに、すぐさま森に向かう。デニス、浩人、葵、日向もついていく。
ミュウが見つけた、広くなっている場所・・・焦げ跡や、足跡などがある場所へと着いた。
「・・・コンドウ君、ドラゴンが居たのって、ここ?」
「は、はい。ここで俺は襲われて、ドラゴンが剣を追いかけて行きました」
「そ、んな。じゃあ、やっぱり、レイヤ君は崖から・・・」
その言葉を聞いた後、浩人、葵、日向はその場に崩れる。
「嘘、だろ。嘘ですよね?怜也が・・・そんな・・・」
「うぇっ、お兄ちゃんが、ひっく、そんな、うう」
「怜也・・・。もっと、私がちゃんと見ててあげてたら・・・」
ミュウもデニスも何も言わない、いや、言えなかった。
そこへ、魔物が空気を読まずに現れる。猪型の魔物のようだ。
「ブルルルルル」
「・・・人の・・・気持ちも・・・知らないで!」
その言葉を合図に、浩人、葵、日向は魔物に襲い掛かる。三人に襲いかかられた魔物は、ものの数秒で仕留められてしまった。
「・・・城へ、戻りましょう」
誰が言ったかは分からないが、その言葉を聞いた全員は城へと戻った。
その次の日。怜也が行方不明となった事実は、召喚されたもの全員に知れ渡り、彼らに衝撃を与えた。と、同時に、彼のせいで近藤達が危険にあったという嘘の情報も知れ渡った。
そのせいで、
「こういっちゃあなんだが、剣のやつの自業自得じゃないのか?確かに、可哀想ではあるが」
「仕方ないんじゃない?自分だけ能力が低かったんだし」
「だけどよ、いきなりドラゴンに喧嘩売るなんておかしいだろ。俺としては、あいつよりも、柳とか、剣の姉と妹の方が可哀想だよ」
「それもそうね」
などと、それなりの割合のクラスメイトからそんな風に言われていた。
浩人、葵、日向達の三人。それに、訓練官全員(あのシェイドも)あいつがそんな事をするはずがない、などとは言っているが、効果は無い。
それから、更に二週間後。浩人、葵、日向の三人は王様に呼ばれた。
この話で、一旦本編に戻ります。
シェイド「フン、別にあいつの事を認めている訳ではない」




