プロローグ その1
初投稿です。拙い文章ですが、読んでもらえれば嬉しいです。
――ここはどこだ?
目の前には、真っ黒な壁がある。周りを見てみると扉が一つあり、その他は全て先程言ったような壁しかなく、窓は一つもない。部屋はそこそこ広く、形は恐らく正方形だろう。
天井を見てみると、部屋の中央に明かりが一つあるが、それは、電球などの一度は見たことのあるようなものではなく、球状の何かである。人魂を球にしたらそれに近くなるのではないだろうか。
そんなことを考えたところで、なぜこんなところにいるのか、という考えに至る。
(どうしてこんな訳の分からんところにいるんだ?俺は確か――
五月二日、いつものように朝の五時に起き、顔を洗い、服を着替え、朝食と弁当を三人分作る少年。
彼の名前は 剣 怜也、男子中学生である。彼の年齢は今年で十四歳、中学二年生である。
成績は平均よりもほんの少し上といった程度で、運動能力はそこそこ優れているといったところだ。容姿はイケメンと呼ばれるレベルである。女顔で、女用の服を着ると確実に女子と見間違えるが。
切るのがめんどくさいという理由で髪は伸びまくり、視力が悪いので眼鏡も掛けており顔が隠れるため、学校では、そんな外見は微塵も見られない。故に女子からの人気は皆無。彼は部活には入っていないが友達もそれなりにいる。そんな中学生である。
そんな彼は、作った朝食を食べ、歯磨きを終えると、部屋に誰かが入ってくる。
「怜也、おはよ」
「お兄ちゃん、おはよう!」
入ってきたのは彼の姉である剣 葵と、妹である剣 日向だ。
姉の葵は十四歳、怜也とは同じ中学二年生である。同じ歳ではあるが、双子ではなく、彼女が四月生まれなのに対し、怜也は三月生まれである。
妹の日向は今年で十三歳、怜也の一つ下の学年である。
彼女達は二人とも成績が優秀で、テストの点数は学年で十位以内には毎回入っている。さらに、運動も得意、容姿端麗である。
二人とも怜也と同じ学校に通っており、姉の葵に関しては、同じ歳なので、怜也と同じ学年になるのだが、今年に関しては、クラスも同じである。
彼ら三人はとても仲が良い。休日によく一緒に遊ぶ程度には。
彼女達に怜也は挨拶を返す。
「ああ、おはよう。弁当ここに置いとくから忘れずに持っていってよ」
そういって、自分の分の弁当を鞄に入れた怜也は、玄関へ向かう。
「いってきます」
そうして彼は、学校へと向かう。
(やっぱり朝が早いと一人で学校に行かないといけないから嫌だなぁ・・・)
などと考えながら歩いていると学校に着いた。
学校に着くと、彼はいつものように教室の鍵を借りに職員室へと向かう。
鍵を借りた後、彼は自分のクラス、二年三組の教室へと向かう。
教室の前まで着くと鍵を開ける。最初の頃は中々鍵が開かなくて苦労していたが、今ではすぐに開くようになった。
そうして、扉を開け、教室の中に入ると急に視界が暗くなり、何も見えなくなる。
(一体どうしたんだ?)
考えること数秒、周りが明るくなり、目の前には真っ黒な壁がある。
――ここはどこだ?
(という訳だったな。しかし、結局ここはどこなんだ?それに、俺以外に人はいないし・・・そういえば扉があったな。開くのか?)
そう考え扉へと近づき、扉を見てみる。
(ノブがない・・・押してみるか?)
そう思い扉を押してみるが、扉はピクりとも動かない。本気で蹴飛ばしてみたが自分の足が痛いだけだった。スイッチでもあるのかと周囲を見てみるが、やはりどこにもない。
「どうしろと・・・」
そう呟いたところで、後ろから声が聞こえてくる。
「もしかして、怜也なのか?」
(! この声は・・・もしかして)
聞き覚えのある声に振り向いて答える。
「ああ、お前は浩人・・・だよな?」
状況が状況なので、友人にそっくりの別人かもしれないと思い確認する。
「ああ、そうだ。やっぱり怜也だったか。なあ、ここどこなんだ?教室に入った途端急に暗くなって、気付いたら・・・」
今、俺の目の前にいるのは、柳 浩人、俺の友人だ。彼とは、保育園の頃からの付き合いであり、俺の友人の中で一番気の許せる相手だと思っている。なぜか彼とは一度も違うクラスになった事がない。
「そんなのこっちが聞きたいよ。俺もお前と同じような感じだからな」
「そうか・・・あの扉は?開かなかったのか?」
「ああ、ノブがないし、押してもビクともしなかった」
「部屋から出れんのか・・・しかし、怜也かぁ」
「・・・なんだよ?」
「いやぁ、何でお前と密室に二人きりなんだと思って。どうせなら、葵さんとだったらよかったのになぁ、と」
「・・・それは悪かったな。お詫びに、次に葵姉さんに会ったら、お前の小さい頃の夢について語っといてやるよ」
「じょ、冗談だからそれだけは勘弁してくれ」
などと話していると、目の前に人が現れた。どうやら、自分のクラスメイトのようだ。浩人との話を中断する。現れたクラスメイトに、浩人の時と同じ様なことを話した後に、話を再開する。
「まだ三人だけだから何とも言えないが、俺達の教室からこの部屋に繋がってるってことかな?」
「まあ、そうだとしたら、時間的に今からもの凄く人が増えてくるだろうからすぐ分かるだろ」
「ああ」
他にも色々と話しているうちに人は増え続け、気付けば三、四十人程になっていた。説明は、どうやら先程のクラスメイトがやってくれたらしい。心の中で礼を言っておく。
「自分のクラスの人しかいないな・・・やっぱり予想はあたってるのか?」
「なぁ、葵さんがまだ来てないんだが、今日は休みなのか?」
「普通に元気だよ。もうそろそろ来るんじゃないかな?。まあ、危険かもしれないから、来ないでくれた方がうれしいけど・・・」
二人で話している間に、クラスのほとんどの人がこの部屋に集まった。・・・いないのは自分の姉を含め、ほんの数人である。
周りはもの凄~くパニックになっているようだ。そこら中から、「どこなんだここは!」とか「ここから出して!」などの声が聞こえてくる。クラスの担任もいるようで、落ち着くように皆に言って回っているが効果はなさそうだ。そんな状況を見ていると、後ろから話しかけられる。
「怜也と浩人君じゃない」
「葵姉さん・・・来ちゃったか」
「おおおおおお!葵さん!来たんですね!」
浩人を無視して、俺は今の時点で、自分が分かっていることを姉に話した。
「なるほどねぇ・・・それにしても、皆パニック起こしてるのに、怜也も浩人君も落ち着いてるわね」
「まあ、驚いてはいるけど・・・」
「騒いだってしょうがないですし」
その後色々と雑談していると、不意に、見覚えのある顔が映った。
おかしいな、見間違えだろうか。学年が一つ下のはずなのに。
そう思っていると向こうも俺に気づいたらしく話しかけてきた。
「あ、お兄ちゃん!それにお姉ちゃんと浩人君もいる!」
ああ、やっぱ見間違えじゃなかったか。話しかけてきたのは俺の妹の日向だ。まず、最初に出てきた疑問を言う。
「ヒナ、俺達の教室に入った?」
「うん。そしたらこんな所に来ちゃった」
「なんで俺達の教室に来たの?」
「お姉ちゃんがお弁当忘れてたから届けに来たの」
「あ!・・・ま、まあいいじゃない。誰にでも失敗はあるわよ」
「・・・まあ、いいか。次からは気を付けてよ、葵姉さん」
「次があればの話だけどな」
浩人のその発言により、俺達は沈黙する。もう少し空気を読んだ方が良いと思う。
そんな微妙な空気の中、突然天井から声が聞こえてきた。
「皆さんをこのような場所へとお呼びしてしまい、申し訳ありません」