ショッピング!(デパート?で) その2
「何?竜崎君」
話しかけてきたのは竜崎だ。
「どちらが正しいのかも分からんのに出て行くな。今回は男の方が悪かったから良かったが」
・・・ん?もしかして竜崎って俺が殴られるまでずっと見てたのか?まあ、それはいいか。
「うーん、ああやった方が早いでしょ?反応ですぐに分かるし。それに、さ。どっちにしても、助けに行かなきゃ、取り返しのつかないことになってたかもしれないよ?まぁ、出て行った結果があのザマだけどね」
「それもだ。もう少し考えて行動しろ。いっちゃ悪いが、お前があんな相手に喧嘩売ったら間違いなく負けるのは分かるだろ。俺が出てなかったらヤバかったぞ」
「うん、そうだね。それぐらい分かってるよ。でも、見てみぬふりは嫌だしね。せめて、逃げる時間くらいなら稼げるかなって。もっと僕が強かったら良かったんだけどね」
「・・・それについてもだ。お前も弱いなら弱いなりに努力するものだろう。俺だったらそうする。それなのに、お前はなんだ?努力もせずに買い物をしてるのか?それで、自分は弱いって嘆いてるのか?」
・・・ん?もしかして、俺、努力してないって思われてんの?いや、まぁ、俺は努力してますよーって周りに広めてる訳じゃないし、そのつもりもない。
しかしなぁ。正しいかも分からんのにってついさっき自分で言ったのに、その間違いを思いっきりしてるってのはちょっと、ね?
「竜崎君。僕も竜崎君に言う事があるよ」
「・・・何だ?」
「自分の思ってる事が正しいかも分からないのに、人を責めない方が良いよ。それだけ」
竜崎が俺以外の心を抉る前に、一応注意する。
本当はすぐに説教をしない方が良いとも言いたかったが、それをするのが竜崎なので言わない事にした。
「自分は努力してるっていうのか?なら、なんでこんなところで買い物をしてるんだ?」
「この世界の服を買いに来たんだよ。地球の服装は目立つからね。他人にジロジロ見られながら訓練しろってのは嫌だと思わない?」
「・・・さっきまでは何をしてたんだ?服はもう買ったんだろう?」
「他の人達とはぐれちゃったから探してたんだ。そしたらあの騒ぎにね。僕だって本当は今だって訓練したいさ」
「念話の魔術使えばいいじゃないか」
「それイヤミ?あっちは使えても僕が使えないよ。魔力が足りないからね。僕が今使えるのは盗聴の魔術くらいだよ」
極自然にこっちのハートを傷つけてくれるなんて。なかなかやるな。
「まあいい。仮にお前が頑張って訓練していたとしよう。だとしたら矛盾している事がある」
・・・何言ってんだろう?俺は頑張って訓練してるから矛盾してることなんてない・・・と思うんだけど。
「俺は午前の訓練だけで、自分でも分かるほどに刀の扱いが上手になった。お前は、俺よりも訓練を頑張っているといったな?なのに俺よりも遥かに上達が遅い。それどころか、俺以外の全員と比べてもお前は上達が遅すぎる。事実、訓練を始める前より少し良くなったといった程度だろ?
これだけの理由があれば、俺が考えてることが正しいと思ってもおかしくないと思うんだが?」
うわ、これは・・・もうやめてほしい。俺のハートはズタボロである。こんなの・・・酷すぎるよ。正直、泣きたい。
「・・・」
「どうだ、言い返せないだろう?まぁ、これからは嘘も吐かずに精一杯がんb」
「いや、流石に、流石に酷すぎると思うんだ、竜崎君」
「は?何がだ?」
「そうだね、俺が得意な料理で 分かりやすく 例えてみるよ。
自慢だけど、俺は料理の上達が物凄く早いんだよ。なにせ、十日間頑張ったら俺は、一人でカレーを作れたからね。
それでね、料理が苦手だけど、精一杯頑張ってる人がいる。その人は俺よりももっともっと頑張ってる、でもね、何ヶ月経っても、カレーを一人では作れない。そんな人もいるんだ。
そんな人に、お前の料理が下手なのは、努力をしないからだ。なのに、料理が下手だって嘆いてるのか?とか、俺よりも努力をしているのに、俺よりも遥かに上達が遅いなんておかしいだろう。だからお前は嘘を吐いている。どうだ、言い返せないだろう?って俺が言った。
これなら僕の言いたいこと、分かるよね?」
上達の早さの違いと、言われた方の気持ち等等である。ぶっちゃけ、上達の早さの違いなんてちょっと考えればすぐ分かるだろう。
「・・・でもそれは例えであって―――」
「確かに、例えだけどさ、その例えと同じような事を竜崎君は僕に言ったんだよ?正直、僕じゃなかったら本気でブチ切れてると思うよ?お前は俺の事を全く知らないからそんなこと言えるんだ!ってね」
「・・・でもやっぱり、それにしても、お前の上達は遅すぎる。だから、お前が頑張って訓練してるってのは嘘だろう?」
「・・・はぁ。まあ、別に良いんだけどね。今更だけど、別に竜崎君に信じてもらおうと思って言ったんじゃないし。信じてもらったところで、俺の実力が上がる訳でもないし。あーあ、無駄な時間過ごしちゃったな、こんなこと言ってる暇あったらミュウさん達探して、すぐに帰って、さっさと訓練するべきだったよ」
俺が少しイライラして、イヤミっぽくなるのも無理も無いんじゃないだろうか。まぁ、言ってる内容は本心だが。
ぶっちゃけ、まだあのいじめトリオの相手の方がましである。
他の人の心が俺みたいに傷つかないように、と思ったが、きっと俺には無理だと思う。
まあ、善意で言ってくれてるのは分かってんだけどなぁ。それが空回りしてるってことも。
「竜崎君。僕の言いたい事は変えとくね。自分の考える事が全て正しいって思い込まない方が良いよ。それじゃあね」
もう俺から言える事はこれぐらいしかない。
「おい、まだ俺の話は終わって―――」
ふう・・・。やっと竜崎から離れられたよ。ん?あれは・・・
「ミュウさん!やっと見つける事ができましたよ」
「ん、うん。レイヤ君やっと見つけたよ」
「怜也だけはぐれるなんてねぇ。しっかりとついてきなさいよ」
「そうだよ、お兄ちゃん。次は迷子にならないように気をつけないとね」
「ははは、そうだね。あの、ミュウさん。僕、先に帰って訓練します」
「あ、うん。ねぇ皆、僕達も帰る?」
「あー、そうですね、怜也探したせいで疲れちゃいましたし」
「それは悪うござんしたね」
「あはは、じゃあ、皆で帰ろうか」
俺達は、雑談をしつつ城へと帰っていった。
もっと上手に書ければなぁ、と思った回です。




