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才能の才能  作者: 緑髪のエルフ
一年間
14/86

訓練?

 城に戻ると、五時半になっていた。

 帰る途中、冒険者ギルドの目の前を通ったので、ミュウさんに無理を言って寄ってもらったのだ。

 冒険者ギルドには、中には入ったが、冒険者登録はしなかった。というか、させてもらえなかった。

 結局、冒険者ギルドの雰囲気を見る事と、冒険者についての説明だけで終わった。

 冒険者についての説明は、冒険者のランクと、受けられる依頼などなど。しっかりと説明させていただく。

 冒険者のランクだが、冒険者は下からG,F,E,D,C,B,A,Sランクとあり、更にそれぞれのランクが下級、中級、上級と分かれている。

 つまり、全部で二十四個にレベル分けされているという訳だ。呼び方は○級×ランク冒険者といった感じだ。

 次に、受けられる依頼だが、原則、自分のランク以下の依頼しか受けられない。これは、同じランクの人間同士でパーティを組んでいたとしても同じだ。

 もし、パーティに自分よりも上のランクの人物がいるなら、その人と同じランクの依頼を受けることができる。

 依頼に失敗した場合は、基本的にはペナルティは無い。

 依頼についてはもう少し細々としたこともあるが、また必要になった時に説明させてもらおうと思う。

 冒険者については今のところはこのぐらいである。



 さて、六時から夕食なので、少し時間もあるし、着替えなどをしに、一旦部屋に戻ろうと思う。というか、着替えを買っておかないと、体育のジャージと制服ぐらいしかない。あとは、貰った服とズボン一着ずつか。ジャージと制服じゃ外に出られん。

 部屋に着くと、とりあえずジャージに着替える。

 着替え終わると、ちょうど、姉と妹と・・・浩人が入ってきた。

 

「あら、怜也帰ってたの、おかえり」

「おかえり~お兄ちゃん」

「ああ、ただいま。それはそうと浩人、どうしたんだ?」

「ん?いや、別に。三人で話してただけだ」

「なんだ、それだけか」

 とりあえず、飯食ったら訓練しないとな。俺は他の人よりも遥かに弱いのだから。

「あーあ、三人とも良いよなぁ。魔力の量多いし。武器の適正物凄い高いし。運動能力も凄い高いし」

「ああ、怜也は平均以下だもんね」

「でも、視力だけは凄く良いんでしょ?全部低い訳じゃないから良かったね、お兄ちゃん」

 視力だけ抜群に良いのって逆にがっかりするんだが、それは俺だけなのか?

「そーそー怜也。世の中もっと恵まれない人だっているんだぜ」

「お前は能力が高いからそんなこと言えるんだ・・・」

 自分の能力の低さについて愚痴をこぼしていると、五時五十分になっていたので、食堂へと向かう。

「よし、飯だ!」

 夕飯は、白米(あるのか!)とサラダと、苦芋で作られたジャーマンポテトみたいなもの。

 美味しい!信じられないくらい満腹だ!

 夕飯が終わったら、三十分程、この世界の文字の学習をしてから、訓練場へと向かう。

 就寝時間までの間は俺達の為に開けといてくれるらしい。ありがたいことだ。

 さっそく、今日買った武器で訓練しようと思っていたのだが、魔法の袋を持ってくるのを忘れてしまった。取りに帰るのも面倒なので、貸し出しの投げナイフで練習を行う。

「てい!とう!」

 掛け声を出しながら的にナイフを投げ続ける事二時間。後ろから、誰かが話しかけてくる。

「おおー、剣、こんな夜にも頑張って訓練してるなんて凄いなぁ」

「何言ってんだよ、こいつ弱いからさぁ、それぐらいしないと駄目なんだよ」

「そんなことしても俺達に追いつける訳無いと思うけどなぁ。ヒャハハハ」

「ハハハハ、おい、お前ら。そんなこと言ってやるなって、可哀想だろ?」

「本当の事言っただけだろ。それにお前だって同じ事考えてんだろ?」

「まあな。ギャハハハ」

 そういって、話しかけて来た三人・・・近藤大輝と、内藤ないとう 零司れいじ村上むらかみ 信二しんじはゲラゲラと笑っている。

 めんどくさいなぁ・・・とっととどっか行かないかなぁ・・・そう思ってはいるが当然そんなことは起こるはずが無い訳で。

「こいつ、妹よりも弱いんだぜ?兄として恥ずかしくないのかよ」

 俺の妹よりも弱いのはお前らも一緒だろうに・・・まあ、兄の俺が妹よりも弱いのが問題だから関係ないのか。

 ちなみに、俺としては恥ずかしくもなんともない。寧ろ誇らしい。俺の自慢の妹だ。まぁ、ちょっと羨ましいけどな。

「あーあ、あんまりにもこいつが可哀想すぎるからさぁ、俺達で『訓練』してやろうぜ。少しはマシになるかもしれねぇぜ?」

「お!それいいな大輝、俺達三人がかりでやるか!」

「おい、俺達が情けな~い兄ちゃんのお前にわざわざ『訓練』してやるんだ。ありがたく思えよ」

 頼んでも無いのに勝手な事を言う。邪魔にしかならん。まあ、これはいじめってやつだな。これから恐らく、三人掛かりで暴力を振るわれるんだろうな。

 力持った途端急にこれって笑えるな。こんなのが実在するんだってな。話のネタになりそうだ。

 ま、とりあえず覚悟を決めるか。その前に一応断ってはみる。

「や、わざわざ俺なんかの為に時間使ってくれなくても良いよ」

「はぁ?お前、何言ってんの?俺がわざわざお前みたいなのに訓練してやるって言ってんのに、それを断るとか調子乗ってんのか?お前みたいなのは大人しく、僕の様なゴミみたいな人間に訓練をしてくれるなんてありがとうございますって言っとけば良いんだよ!」

 はぁ・・・。まあ、分かってたけどさ。とっとと覚悟を決めますか。

 まず、近藤が鳩尾に一発、クリーンヒット。俺はその場に崩れ落ちる。

「がぁ・・・ぐ」

「お前、一発だけで倒れるなんてどんだけ弱いんだよ。おら、立てよ。まだまだ、訓練はこれからだぞ?」

 そういって、近藤は今度は脇腹を殴る。さらに、後ろに回った村上が背中を蹴りつけてくる。

「がは、うぐぅ」

「ほらほら、まだ倒れるには早いぞぉ?」

 そういって脇腹を何度も殴りつけてくる。近藤が左の脇腹を、内藤が右の脇腹を殴り、村上が背中を蹴りつけてくる。

 俺は既に立ってはいられない状態だ。しかし、ここまでやられても、何故か悔しいという感情は無く、ただ、ただ痛いだけだった。まあ、相手が滑稽に見えるからだろうが。

「お前さぁ、もう少しちゃんとやれよ。しょうがないな、やる気が無いんなら無理矢理にでも訓練をやらせるか。おい、内藤、村上」

 近藤がそういうと、内藤と村上が俺の後ろへと回り、俺の肩を掴み、無理矢理立ち上がらせる。そうして、俺を壁へと押し当てる。

「それじゃあ、続きやるぜ」

 そういって押さえつけられた俺の腹を殴る、鳩尾を殴る、とにかく殴る。

 村上と内藤が拘束を解いた途端、俺は地面へと崩れ落ちる。

「ほんっとうにお前はやる気がねぇなぁ。もうこのまま訓練続行するか」

 そういって、今度は三人で倒れた俺を蹴る、蹴る、蹴る。

 それから、十分程すると、俺はようやく、暴力の嵐から解放される。

「おーし、今回はこんなもんだな。訓練料を頂かないとなぁ」

 そういって、俺の服の中を探しはじめる。が、残念だったな。今の俺は2万ゼンしか持ってない!袋持ってき忘れてて良かった。怪我の功名とはこのことだ。

「なんだよ、こいつこんだけしか持ってねーぜ。まあ、今回はこんだけで我慢しといてやるか。どうせ次にはまた取れるしな。ハハハハハハ」

「また今度気が向いたら訓練してやるぜ。ギャハハハハハハハ」

 三人はゲラゲラ笑いながら去っていく。

 更に五分後、ようやく立てるまで回復した俺は、吐き気を抑えつつ、倒れないように少しずつ立ち上がる。

「っつつつ、あんなタイプの人間は小説の中だけにしかいないと思ってたぜ。しっかし、酷くやられたな。後が面倒じゃないか」

 誰にこの怪我を治してもらおうか。ミュウさんに治してもらうのは、面倒なことになりそうだ。かといって、このまま部屋に戻る訳にもいかないしな。・・・階段から落ちたっていって、ミュウさんに治してもらうか。

「あーあ、この状態で物を片付けるってのは苦痛だな・・・」

 しかし、ここまでやられた理由って、多分俺の姉と妹だよなぁ。それと、ちょうど俺が弱いからか。姉弟なのに何を嫉妬してるんだか。

 ああ、そういや珂白さんもいたな。あの人、彼氏いるのになぁ・・・。まあ、俺の姉妹とあとは浩人ぐらいしか知らない事実だけどな。

 ていうか、浩人もヤバいんじゃ・・・。俺だけに矛先が向いてくれれば良いんだが。

 ・・・あいつは俺みたいに弱くないし、大丈夫か。

 まぁ、とりあえずさっさと片付けて、ミュウさんに手当てしてもらお。

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