ショッピング!(鍛冶屋で)
前回の料理で俺のおニューな包丁がさっそく駄目になってしまったので、今はゲイルさんに紹介された鍛冶屋へと向かっている。
今更だが、街並みは中世ヨーロッパのそれである。ベタベタなぐらいベタである。まぁ、異世界って感じがして良いが。
そして、だ。この世界にも冒険者ギルドが存在する。その事実を知ったとき、テンションが上がりまくって、大騒ぎしたのは内緒だ。
そんな黒歴史は置いといて、鍛冶屋についた。ミュウさんの案内もあったので、場所は間違ってないはずだ。
表にはこう書かれている。 [リヒトの鍛冶屋] と。名前が何か普通である。
俺達は鍛冶屋に入る。
中に入ってまず目に映ったのは武器と防具だ。まあ、鍛冶屋だし。
武器はロングソードやダガーとかハルバードとか、他にも色々ある。
防具もレザーアーマーからフルプレートまである。
まぁ、今回は武器が目当てではない。今日俺が買いにきたのは包丁だ。とりあえず、探してみたのだが、見つからない。お店の人に聞いてみようと、周囲を探してみる・・・が、店の中には他に誰もいなかった。
カウンターの奥に扉があるので、カウンターまで行き、俺は声を出した。
「すみませーん」
・・・しばらくして、がちゃり、と扉が開く。中から出てきたのは、身長の低い、小太りの髭を生やしまくった男である。典型的なドワーフをイメージしていただきたい。多分ドワーフだよなぁ。
「ごめんなさい、ちょっと作り物をしていまして」
なんか・・・外見に反して、口調は穏やかだ。ギャップが凄い。
「そうだったんですか・・・あの、じつは、ゲイルさんの紹介でここに来たんですが」
「ああ、そうなんですか。なるほど。あ、僕はリヒト・ブランと言います。よろしく」
「剣 怜也です。よろしくお願いします。それで、今日は包丁を買いに来たんですけど、苦芋を切っても刃こぼれしない包丁ってありますか?」
「うーん、流石にそこまでの包丁は今無いねー。ブラッドタイガーの牙とかでも持ってきてくれれば作れるけど」
「ブラッドタイガー?」
俺はチラリとミュウさんを見る。俺の視線に気付いたミュウさんは答えてくれる。
「ブラッドタイガーっていうのはね、草原に住んでいる、毛の色が真っ赤な虎なんだ。中々強いから、今のレイヤ君だと、絶対に勝てないかな」
はっきりと勝てないって言われた。今回は包丁は諦めよう。絶対に倒せるようになってやる。全ては料理の為だ。
「・・・?リヒトさん、ゲイルさんが苦芋を簡単に切れる包丁を持ってたんですが、あれの素材はどうしたんでしょうか?誰かに取ってきて貰ったんですか?」
「あれ?レイヤ君もしかして知らないのかい?ゲイルは結構腕の立つ冒険者なんだよ。今はあまり活動してないけどね。素材はゲイルが自分で取ってきたんだ」
あの人そんな強いんだ。少しぐらい話してくれれば良いのに。
「なるほど。・・・包丁の素材を持ってくるのは今の俺では無理そうなので、今この店にある包丁を見せてもらえませんか?」
「ああ、良いよ。ちょっと待ってて。・・・はい」
そういって、目の前に箱が置かれる。中には包丁が入っている。値段はどれも一緒だそうだ。俺はその中で一番良さそうな包丁を選ぶ。
「あらら、それを選ばれちゃったか。実はそれ、この中で一番性能が良いやつなんだ。暇だから普通のよりも手間を掛けて作ったやつで、他のよりも断然性能が良いと思うよ」
おお、どうやらこの中で一番良いものを選んだようだ。性能は使ってみてからのお楽しみか。
「それじゃあ、これ下さい」
「はいはい。一万ゼンだよ」
俺は一万ゼンを支払った。
「武器も見させてもらっても良いですか?」
「どうぞどうぞ。好きなだけ見ていってよ」
許可も貰ったしじっくりと見る事にしよう。
俺はミュウさんと一緒に投擲具を見に行く。ナイフやチャクラム、手裏剣もある。
そういえば、と俺はミュウさんに聞く。
「あの、投擲具や、矢って、魔法で作り出して使ったりできるんでしょうか?」
「うーん。魔法で作り出すってのは無理だね。せいぜい、武器に魔法を纏わせるぐらい。でも、魔道具があれば、自分の魔力で武器を作り出せるよ」
「その魔道具って高いんですか?」
「いや、そもそも売ってないね。その魔道具は基本的にオーダーメイドなんだ。自分で材料を集めて作ってもらうんだよ。集めるっていっても、一つだけしか材料ないけど」
「そうですか・・・材料を手に入れたらどうするんです?」
「作れる人を見つけないといけないね。見つかれば、大体十万ゼン程度で作ってもらえるよ。まあ、素材を揃えれればだけどね。今のレイヤ君だとちょっと無理だね。ブラッドタイガーを倒すよりは楽だから安心して」
今のレイヤ君には無理だとまた言われた。ブラッドタイガー倒すよりは楽って言われてもな・・・どのぐらい強いのか分からないし。
それはともかく、俺は手裏剣とナイフをそれぞれ十個ずつ買う。これで、包丁と合わせて八万ゼンの出費になった。支払いの際、二万ゼンのお釣りがきたのだが、俺は地球にいたころの癖でポケットに突っ込んでしまう。
最後に、魔力で武器作る魔道具作れるか聞いてみよう。
「リヒトさんって、魔力で武器を作る魔道具を作れますか?」
「ああ、あれね。僕も作れるよ。もしかして、欲しいのかい?」
「ええ、いつかは自分で材料を手にいれて作りたいですね」
あくまで、自分で、だ。
「そうかい。その時は安くしとくよ」
「ありがとうございます!」
これからはリヒトさんの店で、武器や防具などを買おう。そう思った。
「それでは、そろそろ失礼しますね」
「うん。次はもっと一杯買っていってよ」
「はは。もっと稼げる様になったらですね」
そもそも、お金はまだ1ゼンも稼いでいないのだがそんなことは言わない。
とりあえず、俺達は鍛冶屋を出た。ただいまの時刻は四時。
「そろそろお城に戻りますか、ミュウさん」
「うん、そうしようか」
俺達は城へと戻る。




