序.ある少年の語り
注意 考証丸投げの作品です。
幼い頃より人前に出るのは苦手であった。
苦手というよりも大嫌いだった。
だけど、部屋の中に閉じこもるわけにはいかない。采女や舎人に言われるままに人前に出なければならないことが多い。
その度に人の視線を肌で感じた。
自分が不気味な子であると思われていることがいやでもわかる。
(それは否定しない)
自分でもいやになるくらい不気味だと思っているからだ。
ようやく人の視線に慣れたら、次に待ち構えているのはおどろしい気配。
自分は人の悪意に敏感なのだ。
近くの官人が同僚と楽しげに話している。だが、本性では親しくはない。片方の官人は心の奥底より同僚を妬ましく感じていた。いっそ消えてしまえばいいのにとさえ強く願っている。
心の中を覗けるわけではない。だが、自分はそういうのがわかってしまうのだ。
こうした人の悪意も敏感なのだから。
そう言っても誰も信じないだろう。
ああ、きつい。苦しい。いっそ遠くへ逃げてしまいたい。
そう呟けば脳裏に響いてくるのは叱咤の声。
ああ、うるさい。うるさいよ。
ただひたすら耳を塞いでしまいたい。だが、人前でそれをやればさらに叱られる。
耐えるしかなかった。