01
-リッチーと宝石島の冒険-
同郷の友人である少女、リッチーの召集を受け、中央大陸南端にあるシーレペテレンペティカッソン島へと赴いた二人。そこは"宝石島"という通称の、多量の宝石と、魔力を秘めた魔法の宝石の一大産地。
三度の食事よりも美しい宝石が好きなリッチーはこの島で"輝きの園"と呼ばれる場所への道筋を記した古文書を発見し、二人は古文書に記された島の中心部へ向かう冒険の旅に出ることに。
友人であるリッチーと共に、美しい宝石と島に纏わる神秘を巡る冒険の話。
女の視界の隅に、護衛だった数名の者達の姿が見える。
彼らの背中はあっという間に小さくなり、反比例するかのように女の絶望が大きくなってゆく。
やはり護衛にかける金を惜しむべきではなかったのだ。
慣れた道だから、今までの往来で受けた襲撃はどれも大したものではなかったから、と油断するべきではなかったのだ。
護衛に金をかけ過ぎではないか、などと思い上がった進言を父に行うべきではなかったのだ。
だが、全てはもう遅い。
安価で雇った護衛は皆逃げ、父は深手を負ってその場に膝を突いている。
そして自分は横倒しになった馬車に追い詰められ、
目の前には大きな一つ目の走鳥が仁王立ちしている。
自分より倍は背の高い走鳥が総計五羽。その内の一羽が頭を下げて、握り拳ほどもあるギョロつく一つ目で自身を見つめていた。
嘴には鮮血。
きっと自分の血肉も、この嘴の赤に混ざることになるのだ。
命を諦めた女が、それでも目を閉じずに一つ目を見返していると。
横合いから突然、一つの人影が走鳥へ飛び掛った。
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「でええっ!」
威勢のいい掛け声と共に、くすんだ金髪の少女が走鳥の横っ腹へと両足で飛び蹴りを仕掛けた。
真横へ派手に仰け反る走鳥。しかし倒れ込むことなく即座に野太い足で体勢を立て直し、
攻撃者の方を向いた時には既に目の前に銀色の刃が迫っていた。
追撃を仕掛けたのは先の金髪とは別の、背の低い茶髪の少女。
彼女が振るった手斧によってドッ、と気味のよい音を立てて刎ね飛ばされる走鳥の頭。
続けて彼女は殺し終えた走鳥には目もくれずに、
「キエエエエエッ!」
と甲高い野鳥の如き雄叫びを上げながら全身を奮わせ残る四羽に渾身の威嚇を仕掛けた。
こんな小さな少女の、一体どこから発されているのかと思わせる野性味溢れる叫び声。
生き残りの走鳥たちは、びくりと身体を震わせてたじろぐ。
「キャオオオオッ!」
すぐに逃げはしなかったものの、茶髪が手斧を振り上げ二度目の絶叫と共に一歩踏み出すと機敏に反転し逃げ去っていった。
残ったのは刎ね飛ばされた頭と、倒れたまま足をばたつかせている胴体のみ。
その亡骸を唖然と眺めている女の元へ駆け寄った茶髪が、
「大丈夫?」
と呼びかけながら、大きく開いた垂れ目を緩めてにっこり笑った。
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「ありがとうございます、本当に助かりました」
丁重な礼を行う女に、茶髪は軽く手を振って返す。
明るく短い茶髪を無理矢理後ろで一本にまとめた、とても短いポニーテールの少女だ。
その表情は見た目相応の、少女らしい明るい笑顔。さきほど怪鳥のような奇っ怪な雄叫びを上げていた茶髪と同一人物とは、とても思えない。
茶髪の隣では、くすんだ金髪が木に逆さ吊りにされた走鳥の身体を解体するべくあくせく働いている。
こちらは茶髪とは違い女性の割に背が高く、吊り目で切れ長の細い眼差しをしている。彼女は茶髪以上に髪が短い為、中性的でボーイッシュな、少々冷たい印象を醸し出していた。下手をすると男だ。
二人は旅人然とした、茶一色の地味な格好。生地こそ薄いものの首から下の皮膚の露出は一切無く、ズボンの上から穿いている分厚く短い革スカートだけが女性らしさを演出している。
垂れ目の茶髪はピエール、吊り目の金髪はアーサー。
二人とも男性名だが女性であり、背の低いピエールが姉、背の高いアーサーが妹。
二人は姉妹で、そして冒険者でもある。
「間に合って良かったよ。お父さんも何とか大丈夫だったみたいだし。でも、災難だったね」
「ええ。一つ目の群れが襲ってくることなんて初めてで……」
「街道にもよく現れるそうですね、この鳥。とはいえ単体が主で、群れでの襲撃は珍しいと聞きましたが」
走鳥から内臓を引きずり出しながら、アーサーが話に加わった。
手袋越しとはいえ、平然と走鳥の体に腕を突っ込み内臓を掻き出している。その様子に若干引きつつも、女が答える。
「今までこの道は何度も通っているのですが、単体でふらりと現れたのを見かけたことしかありませんでした。その時も、護衛の方が一、二発ほど呪文を飛ばせば逃げて行ったのですが……」
油断して、護衛の質を落とした結果がこれです。
と付け足して、女は自嘲気味に笑った。その笑みにピエールは苦笑いで頬を掻き、アーサーは表情を毛ほども変えないまま作業を続行、今は引きずり出した内臓の一部を焚き火へ投げている。
「ところで、お二人はどうしてこの島に? やはり、この島の宝石が目的ですか?」
女の質問にピエールは頬を掻いたまま、今度は気恥ずかしそうな顔で笑い返した。
「……友達から呼ばれたんだ。頼みたいことがあるから、ちょっと来て欲しいってさ」
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その後。
女とその父親を無事に目的地、アラシャルテという名の町まで送り届けた姉妹は、本来護衛への後払い用だった金を礼として受け取り女と別れた。
自分たち親子は宝石商で、この島にはいつも通り商品の買い付けに来た。もしも何か宝石や伝手が欲しければ気兼ね無く相談して欲しい。という一言を貰って。
そして親子と別れた姉妹は現在、冒険者組合、アラシャルテ支部へと来ている。
二人とも身体中びっしり汗が滲んでいる。この辺りは気温が高く、直射日光の注ぐ外を歩けば汗は免れない。
両開きの緩い扉を押し開け、のっそりと中へ入る姉妹。
アラシャルテ支部内は活気に満ちており、ロビーは多くの人々で賑わっていた。
その多くが武具を身につけており、武具を持っていない者も呪文を生業にしていると窺える出で立ちをしている者が殆ど。
自身より体積の大きな荷物を背負ったままの姉妹は、そんな支部内の者たちを眺めながら一直線に受付カウンターへと向かった。
カウンターの向こうに座るのは浅黒い肌と真っ黒な髪をした三十路前の女性。何とも匂い立つような色気があり、姉妹を見てにんまりと微笑む様は失礼な言い方をすれば娼婦にしか見えない。
「ようこそ、アラシャルテ支部へ。あなたたちは今日ここへ着いたばかりのようね。まずは背中の荷物からはみ出ている収穫物の処分かしら?」
「ここに並べても?」
「いいわ。……査定班、買い取りよぉ」
気取った流し目をしながらアーサーへと頷き、同時に査定役の職員を呼ぶ受付職員。
その間に、アーサーは地面に降ろした姉と自分の背嚢から道中得た物品を取り出しカウンターに並べていく。
「ええと、大蛇の革が一匹分。赤薬草が三束に、シュレペの実が一袋。こっちは……一つ目キッカーじゃない。羽毛と処理済みの凍結肉。見た目はまだ数日も経ってなさそうだけれど、いつ? そう、今日の昼前なら大丈夫ね。あなたたち氷の呪文も使えるなんて随分……あら、途中助けた人にして貰っただけなの。でも凄いわ、たった二人、道すがらでこれだけの相手を討ち取ったんでしょう?」
査定役らしき中年男が黙って収穫物の値定めを始めた横で、胸の下で腕を組み、慣れた様子でしなを作って笑いかける受付職員。
しかしアーサーは凍り付いたような無表情で目の前の職員からは徹底して目を向けず、男の値定めの様子を注視していた。
受付職員はこれでもかと組んだ腕を持ち上げ胸を強調する仕草をするが、アーサーの視線は一秒たりとも向かわない。
一方、彼女の隣にいるピエールは女の胸へ真っ直ぐ視線を向けていた。
それに気づいた受付職員が、獲物を見つけた顔でピエールへ向けて口を開く。
寸前。
「色惚け、とうとう性別すら構わなくなったか」
黙っていた中年男がぼそっと呟いた。
途端、余裕の表情をしていた受付職員が浅黒い頬を朱に染め怒り始める。
「はあっ、何言って」
「女だろ、そいつら」
追撃の一言で、受付職員の顔がすっ、と怒りから困惑に変わった。
「……えっ?」
一転して悲しみと困惑に彩られた職員の視線が、アーサーとピエールを行ったり来たり。
「……ええと、お二人とも」
「我々は女です」
「で、でもそっちのボクちゃんは物欲しそうな目で私の胸を」
「いや、何で私たち相手に胸寄せたりそういう顔してるんだろうなって思って見てただけで……」
「……」
色気を強調していたかと思えば怒り、怒ったかと思えば困惑し、困惑したかと思えば絶望。
表情を二転三転させた受付職員の女は幽鬼のような顔でふらりと立ち上がり、受付の奥の部屋へとふらふら去って行った。
代わりに査定をしていた中年男が、女のいた席へ。
「……すまんね、あいつはもういい歳なんだが未だに未婚で。最近は焦ってるのか良さそうな相手を見つけるとすぐ色気振りまき始める。……全部で七百でどうだね」
「彼女のことは構いません。ただ買い取りはもう少し上がりませんか。具体的には九百ほど」
「そこまでは上がらんね。今の価格でも二人でこれだけの物を持ち込んできた君らの腕を買って高くしているつもりだ。……とはいえ、この一つ目キッカーの肉が本当に今日殺したばかりの新鮮な肉だというのなら、それを加味して百上げよう。本当に今日の肉だね?」
「誓いましょう」
「分かった、では八百だ。金を用意するから待つといい。……他に用事は?」
「一つ」
「今聞くかね?」
頷いたアーサーが、丸められた一巻の紙を差し出しながら言った。
「この依頼を出した相手に、取り次いで貰いたい」
広げられた紙には宝玉を抱く竜と冠、それに宝石と装飾品を模した二種類の不思議な印が捺印されている。
彼女らと故郷を同じくする、同郷の友からの要請の証であった。
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「さて、ではこの土地のお浚いをしましょう」
組合支部を出た二人は、待ち合わせ場所であるアラシャルテ内の一軒の酒場へ。
小さな机を挟んで向かい合いながら、アーサーが話を始めた。
「シーレペテレンペティカッソン島。中央大陸南の外れにある半島です。半島ではありますが大陸と繋がる陸地は極端に括れていて、涙滴型の島と言った方が近い。土地の最大の特徴は宝石類の産出が極めて豊富なことで、その辺の川を浚ったり崖を掘るだけで光る物が見つかるほどだとか。魔力を秘めた魔法石の一大産地でもあります」
「シーレ……何?」
「シーレペテレンペティカッソン島。シーレペ・テレンペ・ティカッソン、と区切ると分かりやすいかもしれません。略称はシテテ」
「シテテ! それなら分かりやすい」
「声を小さく。……一応説明はしましたが、その略称はなるべく呼んではいけません」
「えっ、なんで」
「島の名前は島民の誇りだからです。シテテという略称も、先ほどの区切りすらも島外の人間が呼びやすくする為勝手に付けたもの。島民は皆本来の名前を空で言えますし、略されると気分を害す。逆に島外の人間が本来の名前を呼べると好印象。……姉さん、頑張って覚えてくださいね」
「うえー……」
シーレペテレンペティカッソン、シーレペテレンペティカッソン……シーペレ、シーペレテペンレ……あれなんか違う……。
眉を中央に寄せ、ピエールはうんうん唸りながら島名を呟く。
「話を戻します。気候は外を歩いていて実感した通り暑く、いかにも南国と言ったところ。生息する魔物は鳥類と魔法生物が大半を占めていて、特に島の中央に近づくにつれ急激に気温が下がり、魔物の危険度も跳ね上がる。中心部にある山の頂上には何かがいる、もしくはある、という噂ですね。しかしその分治安は悪くありません。魔物が凶暴なおかげで、人間同士のいざこざは少ないようです。魔物や魔法石の産出により町も裕福なので、ある程度稼げる腕前があれば過ごしやすい土地と言えるでしょう。……暑さも金さえあればこの通りですし」
「あーそれは確かに」
アーサーの言葉に緩い顔で頷くピエール。
二人して、目の前に置かれていたカップの中身を一口含んだ。
彼女たちの顔には既に一滴の汗も滲んでおらず、実に快適そう。
それもその筈。
酒場の空気はまるで夏を終え、涼風吹き抜ける秋の季節のようにひんやりと冷やされているからだ。
シテテ内にある酒場や食堂には、非常に分かりやすく決定的な格差が存在する。
高い店は、涼しい。
冷気の呪文を扱える人間を雇うか、冷気を放つ魔法石を使って店内は常に冷やされ、熱気で頭まで茹で上がるような外とは雲泥の差だ。
勿論その分、店に入るだけでも金銭を要求されるが。
その高級な酒場を待ち合わせ場所として、姉妹は淹れたての熱い紅茶を飲んでいた。
この土地の紅茶は非常に味が濃く、渋味がある。アーサーはストレートだが、ピエールは果汁と島で採れる香辛料を足したこの土地人気の一杯を飲んでいる。
南国の果実と少しのスパイスが異国風味で、逆にピエールの舌には合わなかったようだ。あまり美味しそうな顔ではない。
「外は暑いのに、自分たちは涼しい場所で熱い紅茶を飲む。これって贅沢だよね」
「そうですね。こればかりは何とも、ほの暗い優越感を感じてしまいます」
組合から酒場に直行した二人の格好は、砂埃や返り血で汚れた旅路の格好のままだ。足下には大きな背嚢も無造作に置かれている。
直接難癖を付けてくる人間はいないが、それでも周囲の客たちは異物を見る目を時折姉妹へと向けていた。
島民は皆肌が浅黒く、姉妹が白い肌、ということも異物感に一役買っているだろう。
「それにしても、いつ来るんだろ」
「職員の言葉通りならもうすぐ……」
ぴくっ。
締め切られた酒場の扉が開き、懐かしみのある慣れ親しんだ雰囲気の持ち主が入ってきたことで二人の顔がぴん、と跳ね上がるように入り口へ向いた。
「噂をすれば」
「姉さんは荷物を見て待っていてください。私が行ってきます」
「……無茶はしないでねー」
入ってきた人影は扉を閉めると、きょろきょろ視線をさまよわせて店内を見回していた。待ち合わせ相手を探しているようだ。
それに対しアーサーは小賢しくも他の席や客の背に隠れ這って迫るようにその人影へと接近し、
距離三メートル、というところで二人の視線が交錯した。
「……!」
「リッチィィィ!」
アーサーの姿を目撃した相手は即座に身体を翻し一言も発さず一目散に外へと逃げ始めた。
それを、心底楽しそうに相手の名前を叫びながら追いかけ外へと出て行くアーサー。
彼女たちが出て行った後を眺めながら、ピエールがどこか他人事めいた気分で紅茶を口に含む。
「……やっぱあんまり好きじゃないなこれ」
うわやめろー。ひーっ。おまえかーっ。
そういった類の叫び声が外から扉越しに数度聞こえてから暫くして、ようやく満足そうな顔のアーサーが酒場内へと戻ってきた。
小脇に抱えているのは、一人の小柄な少女。
「やっほーリッちゃん、久しぶり」
妹が興奮すると、反比例して姉が落ち着きを見せる。
椅子に座ったまま穏やかな微笑で、ピエールは彼女を迎えた。
背はピエールよりやや低い。金髪を後ろ、頭頂部近い高い位置で束ね、小麦色に日焼けした健康的な肌を腋、腹、腿とこれでもかというほど見せつける水着と見紛うような露出度の高い格好。
背丈は幼い少女そのものだが体つきはいやに大人びており、特に胸は身長と不釣り合いなほど大きい。
彼女の名はリッチー。
姉妹と同郷の友人にして、今回組合を通じ同郷の者を召集した張本人だ。
今はよれよれのぬいぐるみ人形のようにくたっと脱力して、アーサーに抱えられるがままになっている。
「おのれアーサー、これを見越して組合に口止めしたな」
力無くうなだれたまま表情は脱力、口調だけ忌々しげにリッチーが呟いた。
「だってあなた、私を見るとすぐ逃げるじゃないですか」
「最初っから来たのがピエールちゃんたちって知ってれば覚悟して来てたよ。あーもう、組合に誰が来たのか聞いても答えてくれなかった時点で少し身構えないとだった」
「アーサーが組合の人に何か余計なこと言ってるなーとは思ってたんだけどね。あえて何も言わなかった」
「そこは言ってよ……そろそろ降ろしてアーサーちゃん」
抱える腕から降ろされると、アーサーとリッチーは改めて席に座った。
座るやいなや身を乗り出して両手で頬杖を突き、にたぁっと笑うリッチー。
見た目は少女ながら、その笑顔はまるで少女らしくない。身を乗り出したことで机の上にも、少女らしくない桃のような胸が二つ乗っていた。
「まー何はともあれ、来てくれてありがと。どっから来た?」
「エルシャードからだよ。召集見てすぐ出たけど半月くらいかかった」
「へー、意外と近くにいたのね」
「それで、今回はどうしたんですか? 戦闘力と知恵者、と書いてありましたが、また厄介事に首突っ込んでないでしょうね。以前やらされた鍵運びのようなふざけた話ならお断りですよ」
「ちょい待って、まずは……へーい、そこの格好いいおにーさん! 甘くて美味しいラスーリの実のお酒おーくれ! それから適当なおつまみも!」
威勢良く声を張り上げ浅黒い肌の給仕の青年に酒を注文してから、リッチーは椅子の背もたれに身体を預けた。
「えーとね、あたしがここに来たのが……半年、いやもうちょっと前だったかしら。ここは綺麗な石がいっぱいあるっていうから、ずっと楽しみだったのよね。馬車に乗ってごとごと揺られて来たけどもうその時は大変で、ずっとお尻痛かったのよー。暑さにも慣れなかったし。でも来た当初はもうちょっと涼しかったのよね、まあ慣れた今の方が過ごしやすいけど。それでね、あたしこの町で綺麗な石見ながら楽しくやってたのよ。ここは食べ物もお酒も美味しいし、お金も稼ぎやすくていい町だわー。もしどこか別の場所に移住してもいいって言われたら、ここを選んでもいいくらい。でも昔二人と一緒に行った砂漠のあの町も割と」
「どうでもいい話が長い! 私が一から聞きますから尋ねられたことだけ答えてください!」
机を両手で叩き、アーサーが声を荒げた。




