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姉妹冒険者物語  作者: 並野
王国の竜
20/181

出立者-02

「少しずつですよ、姉さん。少しずつ慎重にして下さいね」

「そんな何回も言わなくても心配いらないって」


昼前の宿の一室。

 床に座り緊張と不安がない交ぜになった面持ちで言い含めるアーサーの後ろで、ピエールが笑う。


 明るい笑顔の姉の右手には、鋏が一つ。

 長年に渡って使い続けられた痕跡のある、持ち手の錆びかけた小さな鋏だ。


 首元に布を巻き、前を向いたままのアーサーの後髪。

 そこは、腐敗液による腐食で長さもまばら、先端も縮れて乱れ切っている。

 改めて見れば、とても人前に出れるような髪型ではない。

 だが、自分の髪を自分で切るのは難しい。

 その為、妹の髪を切るのはいつも姉の仕事だ。


 アーサーのこめかみを冷や汗が伝う。

 しかし後ろを向く訳にもいかず、唇を固く結んでその瞬間を身構えていた。

 姉の右手に握られた鋏が、妹の後髪を捉える。


 しゃきっ、しゃきっ。

 意外にもピエールの手つきは手慣れたもので、鋏は軽快なリズムを伴い振るわれていく。

 鋏が閉じられる度に、不自然な色に変色し先端がよれよれの髪の毛たちが、はらはらと宙を舞い落ちる。

 自身の後ろで鳴り響く小気味よく淀みの無い散髪の音に、最初は緊張していたアーサーも次第に気を緩めていく。

 肩の力を抜き、瞳を閉じてその感覚に没頭する。

 彼女にとって髪の手入れという行為自体は、するのもされるのも親愛の情の証である安らぎと喜びに満ちたものだ。


 ……そうして、完全に油断し脱力しきった結果。

 彼女の髪は一直線に切り揃えられ、完成したのは見事なまでのおかっぱ髪だった。


   :   :


「やっぱり今回も駄目だったよ、なーん、え、いう、いううい……」


芝居がかった口調でけらけらと笑うピエールの頬が、包帯越しに両手で摘まれ左右に伸びる。

 ひとしきり姉の頬を伸ばしてから、アーサーは脱力して姉の隣、ベッドの縁に背を預けた。


「姉さん、そろそろ上達してくれませんか。今のところおかっぱ率七割はありますよ」

「一応これでも上手くなってるんだよ? ……失敗した時、綺麗なおかっぱにごまかすのが」


わざとらしい、言葉の代わりに言い聞かせているかのような大きなため息がアーサーの口から発された。

 しかしピエールはまるで堪えることなく軽く笑うのみだ。


「いいじゃん、おかっぱでも可愛いよ? それに今ならニナとお揃いってことで理由がつくし」

「それが尚更嫌なんですよ、ああもう」


嫌そうな返事と共に治りかけの右腕を動かし、アーサーは自身の後髪を弄ぶ。

 失敗とはいえ、腐食部分は全て切り取られ整った綺麗な髪型だ。


「しかし、私の髪だけ切ってもあんまり意味がありませんね……」


アーサーが視線をぐるりと回せば、未だ歩くのは叶いそうにない左足、いくらか固定の緩くなった左腕、表面の殆どを包帯に覆われたままの無邪気な笑顔が順に目に映る。

 やや間を置いてから言葉の意図を察したピエールが、軽く笑って右手を振った。


「まーそれはしょうがないよ。もうちょっと……、と」


言い掛けたピエールが途中で口を閉じ、アーサーと二人同時に部屋の扉の向こうへと視線を向けた。

 やって来るのは二つの足音。

 一つは歩幅が小さく音を立てぬよう気をつけている。聞き慣れたニナの足音だ。

 もう一つは歩幅が大きく、ゆっくりとした歩みだ。靴底の音が違うのでアーノルではないが、二人はこの足音にも聞き覚えがある。

 足音は二人の部屋の前で立ち止まり、いつも二度のノックの後、ニナが扉越しに呼びかけた。


「あ、あの、お二人とも、お、お客様です」


ピエールが返事を返し、扉がゆっくりと開かれる。


「様子はどうだ」


入ってきたのはハンスだ。

 役所の会議室で見た時と同じ、この町特有のゆったりした服を身に纏っている。

 部屋に入ったのはハンスのみで、ニナは案内を終えると一瞬で二人の前から姿を消した。名残惜しそうにしていたが、やはり人見知りの方が勝るようだ。


「お、ハンスだ。昨日ぶり」


ピエールが右手を上げてにっと笑うと、ハンスも同じように笑い返した。アーサーも、動作だけで軽く会釈を行う。


「まあ座ってよ。椅子無い部屋だから地べたになっちゃうけど」

「そうさせて貰おう」


頷いて床に腰を降ろし、ハンスは懐から小さな瓶を五つ取り出した。


「まずはアーサーよ、借りていた魔法の聖水を返そう。この町の道具屋で買った物ゆえ借りた物よりいくらか質は劣る。その分を考慮して五つだ」


親指より一回りか二周りほど大きい暗褐色の小瓶を五つ、丁寧にハンスは床に並べた。

 ゆっくりとした動きで、アーサーがそれを受け取って自身の脇に寄せる。


「あの後どうだった? 私たちいなかったけど何とかなったよね?」

「ああ。大体の説明は儂一人で済んだからの」

「そっか、よかった」


ピエールが笑ったところで、ハンスが二人の怪我をさっと見回した。


「所で、怪我はまだ酷いようだの。今回ここに赴いた本題だが、治癒の手伝いが必要ならば手を貸すぞ」

「ほんと?」


ハンスの提案に、ピエールが目を輝かせて反応した。

 一方のアーサーは、瞼を一段階低く下げてハンスを薄目で見据える。


「代金は払えませんよ。装備の新調で報酬がいくら消えるか分かりませんから」

「……誰が金など要求するものか。これは今回の仲間に対する感謝だ。そもそも、治療院に行かぬ時点でぬしらが治癒に金を出す気が無いのは承知しておる」


流石のハンスも今の言葉には気分を害されたようで、軽くアーサーを睨み返した。

 横にいるピエールが、妹の額を指で弾く。


「アーサーは人の親切を疑い過ぎ。ハンス、よかったらお願い。このままだと外にも出れなくて困ってたんだ」

「うむ。では、どこから治癒しようかの」

「うーん」

「私の足で」


ピエールが思案するより早く、気を取り直したアーサーが割り込んだ。

 その返答に、ハンスは微かな驚きで眉を上げる。


「意外だの。てっきり自分より姉のことを優先するのだと思っておったが」

「真っ先に治って欲しいのは当然姉さんの顔です。……が、今の姉さんの顔は誰にも見て欲しくない。となれば、次に来るのは姉さんの腕よりは私の足です」


説明するやいなや、さあ治せとばかりにアーサーは包帯の巻かれた左足を前へ伸ばした。

 話を聞いて感心していたハンスが、再び顔をしかめる。


「こちらから手助けを買って出ておきながら何だが、本当に可愛げが無いのう、ぬしは」

「うん、私もそう思う。ごめんねハンス、治すの手伝ってくれて本当にありがとう」

「よいよい、気にするな。どうせ暫くは魔力を使う機会も無いしの。元よりぬしらとオットーの治癒に全て使うつもりだ」

「そういやおっちゃんの火傷も結構酷かったもんね」


喋りながらピエールが妹の足の包帯を外し、そこへハンスが両手をかざした。

 小さく呪文を唱えれば、迸った白い光がアーサーの左すねを覆う。


「ぐ……」


肉が引き伸ばされる感覚。

 足の中で何かが蠕動しているかのような強烈な異物感。

 皮が引っ張られ、千切れる寸前の痛み。


 魔力的な干渉による治癒の痛みに、アーサーは低くうめいて下唇を噛む。

 一般的に呪文による治癒は魔法の薬に比べれば相当ましなのだが、それでも重傷、相当な痛みを伴うことには変わりない。

 治癒はゆうに三十分続き、その間ずっとアーサーは唇を噛み時折うめきながら痛みに耐え続けることになった。


   :   :


 一日中宿の一室に篭もり、ニナに一切の食事を用意して貰い、毎日昼前に訪れるハンスから治癒の呪文を受け、アーサー自身も少ない魔力を使って治癒を行う。

 そんな生活が一週間続いた、森から町へ戻ってから八日目の朝。

 二人の怪我は、ようやく一応の完治を見せた。


 笑顔のアーサーが、目の前に座るピエールの髪を櫛で梳く。

 労りに満ちた手付きで整えられた茶髪を撫で、ゆっくりと、一梳き一梳きを惜しむように時間をかけて櫛を通す。


「はふぅ」


目を細めてされるがままのピエールが、快感のため息をついた。

 髪を梳く手はやがて編む手に代わり、一片の乱れも無い精密な三つ編みが作られていく。

 よりより、よりより。

 髪を引っ張って痛みを与えないように、みっともない不出来な形にならないように。

 丁寧に、そしてやはり嬉しそうにアーサーは姉の髪を編み上げた。

 出来上がった三つ編みおさげを、今度は根元、うなじ付近へ巻き上げる。

 普段とは少し異なる、いわゆる三つ編みシニョンだ。

 完成した後ろ髪を様々な角度から確認してから、満足げな顔でアーサーは口を開いた。


「終わりましたよ、姉さん」


座っていたピエールが伸ばした左手で髪型を崩さないよう慎重な手付きで確認し、それから振り返って満面の笑顔でアーサーへと笑いかける。


「ありがと、アーサー」

「どういたしまして、ふふ」


一方は明るく、もう一方は涼やかに。互いに笑いあってから、ピエールが勢いを付けて立ち上がった。


「それじゃ、下に降りよっか。いやあ久しぶりだねー、こんな気持ちのいい朝は」

「そうですね」


軽く服装を整えてから、二人は部屋を出た。


   :   :


「お前らか。怪我はもう治ったのか?」

「おかげさまで。……おっちゃんどう? もう臭くないよね?」


一階へと降りた二人を、アーノルが出迎える。

 ロビーには他には誰もおらず、髭面の主人だけがカウンターの向こうで厭らしいにやにや笑いのまま頬杖を突いていた。


「流石にもう臭わねえよ。これでまだ臭かったら救いようがねえ」

「だよねー、あはは」


軽口を叩きつつ席に着いた二人。

 暫くしてから、ニナが奥の部屋から食事の載ったトレイを抱えてやって来る。


「あっ、おはようございます二人とも。怪我は、もう大丈夫ですか?」

「ん、おはようニナ。もう大丈夫だよ」


笑顔と共にピエールが左手をぐっと持ち上げ、力こぶを作った。

 相変わらず少女らしい細腕だが、骨折の名残はどこにもない快活な動きだ。


「そうですか、よかった……! では今日のお食事です。ここで食べるんですよね?」


前髪の奥の瞳を細め明るく微笑んでから、ニナはテーブルの上に食事を並べていく。

 いつも通りの紅麦粥の朝食、今日の具は芋だ。大きめの芋が、粥の中にごろごろと雑多に混ざっている。

 久しぶりに、椅子に座り机の上に並んだ食事を食べる二人。ピエールはにこにこ笑顔で音一つ立てず粥を口に運び、アーサーも同様に、わずかに眉間に皺を寄せつつ黙々と食事を続けている。

 そんな彼女らの隣に座り、笑顔でそれを眺めるニナ。


「アーサーさん、今日のお食事はどうですか?」

「芋が大き過ぎ」

「ですよね、私もそう思います。……ほらお父さん、ちゃんと小さく切らないと駄目でしょ?」

「……あ、ああ、そうだな、悪かったよ」

「ごめんなさいアーサーさん、今日の下拵えはお父さんがしたので。でも味は私が付けました、美味しいですか?」

「……」


あくまで食事は続けながら。ぐいぐい迫ってくるニナへと、心底嫌そうに横目で視線を向けるアーサー。


「味は普段通り、特に何か言うこともありません。それより、随分と馴れ馴れしいですね。一体どういうつもりですか」


眉をひそめ、いくらかの敵意を込めて冷たく言い放つアーサー。

 その目つきは軽く睨みつけるに留まったが、それでも以前までのニナなら息を詰まらせ硬直し、震えながら引き下がるであろう対応だ。

 しかし、ニナの反応は意外にも平然そのもの。怯むことなく、アーサーを見返して微笑み返した。


「ごめんなさい、本当はもっと静かにしているべきなんでしょうけど、でもなんだかいてもたってもいられなくって。お二人とも、怪我も治ったことですし、今日はどこかへ行かれるのですよね? よければ、私もご一緒させて貰えませんか?」


机に身を乗り出して迫るニナ。

 今までと比べたその豹変ぶりに、アーサーは不快感を通り越して引き気味だ。


「……もう案内は必要ありませんが」

「いえそんな、案内とかじゃなくて、私がお二人と一緒にいたいんです。……ピエールさん、だめですか?」


ここでニナは標的を変え、隣で微笑みながら静かに食事を続けているピエールへと話を振った。

 当然、彼女には拒否する理由はない。食事の手を止め、笑顔で頷く。


「やった、ありがとうございます。ピエールさん、アーサーさん、今日はよろしくお願いしますね」

「……」


ピエールに話を向けた時点でこうなることは明白だった為、いくらかうんざりした顔をしつつも拒絶を続けることなくアーサーはそれを受け入れた。返事代わりに、カウンターの向こうにいるアーノルに面倒臭そうに顔を向ける。


「という訳らしいですが。今回は何も払いませんよ」

「構わんよ、精々エスコートしてやってくれ。……それに、今日は役場で今回の件の報酬貰って来るんだろ? 帰ってきたら宿代払えよ。九日分、それに朝昼晩出してた大盛りの食事代もだぞ。シーツも使えないだろうからそれもな」

「……せっかく怪我が治って気分が良かったのに、よくもまあ即座に憂鬱な気分にさせてくれますね貴方たちは」


面倒臭げに顔を向けたアーサーが、更にうんざり加減を増しつつ視線を机の前へ戻した。

 そこでは、ピエールとニナが顔を合わせてにこにこ笑い合っている。

 何とも言いがたい複雑な表情で、誰にも気づかれぬよう小さくアーサーはため息をついた。


   :   :


 早朝のサンベロナ。宿の前で、ニナは一人待つ。

 天気は快晴で、明るい朝の日差しが建物の合間からニナの身体を照らしている。

 しかし東の山脈から吹き付ける風は強く冷たい。秋の終わり、冬前の冷気を纏った風だ。


 いつものエプロンドレスの上に羽織った厚手の上着をかき抱いてニナが朝陽を見上げていると、宿の扉が開き待っていた二人、ピエールとアーサーが現れた。

 ニナが視線を二人へ向け……咄嗟に一歩下がって身構える。


 食事の後に二階へ戻り、外出の支度を整えた二人が着て来たのは長い外套。旅の帰路で使っていた物だ。

 当然、例の腐臭がしっかりと移っている。

 ニナの表情から言わんとしていることを察したアーサーが、渋面を作り呟く。

 ピエールの表情もあまり優れない、不快感のにじみ出た顔だ。


「腐臭が付いた物を全て捨てたら外に着ていく物まで無くなるから仕方無いんですよ」

「自分の臭いがましになったから改めて分かるけど、確かに酷い臭いだよね。アーサー、先に服とか買い換えるよね? 流石にこんなの着たままその辺うろうろするのはやだ」

「そのつもりですよ。そもそも外に出るのに必要な衣類が、外套以前に何もかも足りてません」

「靴を買いに行くのに履いて行く靴が無い、なんて笑い話だよねー」

「笑えませんよ」


その言葉にニナがちらりと視線を姉妹の足下に向けるとそこに靴は無く、布切れが厚く巻き付けてあるだけだ。

 その上、外套の中の服装もかなりの薄手。ズボンやシャツなど替えのある物は着ているが、上着や革のスカートが無く普段と比べると貧相で、そして外套があるとしても外に出るには心許ない薄着。

 その癖ピエールの腰には武具を吊したベルトが巻いてあるのが、不格好極まりない。


「……あの、服や靴、貸しましょうか?」

「要りません。これも道具屋に着くまでですから」


素っ気ない返事を返した所で風が一際強く吹き、アーサーは咄嗟に身体を縮こめて外套を押さえた。

 染み着いた腐臭が、風に散らされながらも鼻腔に紛れ込む。小さくうめいて、押さえていた手をすぐに離した。


「……では行きましょうか。道具屋です」


返事を待たず、即座に歩き始めるアーサー。その後ろに、ピエールとニナが続く。


「あのう。露店の外套は見ないんですか? あちらの方が安い筈ですけど」


早足で進むアーサーを必死で追いながら、ニナが問いかけた。


「露店の外套に買う価値はありません。安いですが、それ以上に質が悪い。あんなものはただのボロ切れです」


一瞥すらすることのない、前を向いたままの返事。

 ニナの横に並んで歩くピエールが、明るく笑いながら話を繋いだ。


「露店の外套、見た目は綺麗だったよね。薄緑とか水色とか。刺繍も色々入ってたし」

「それが駄目なんですよ。相性の悪い染料で無理な染色をしているから、生地が余計に劣化する。刺繍だってそれはもう」

「まあその辺で」


ぐちぐちと不満点を並べ立てようとするアーサーを途中で制して、ピエールは歩きながら空を見上げた。

 満天の青空の中、冷たい風が彼女の前髪を揺らす。


「……ここに来たばっかりの時と比べて、結構寒くなったよね。ニナ、この辺って冬はどうなの? やっぱり寒い?」

「そうですね、冬は凄く寒いです。特に風が強いので、一旦雪が降り始めると吹雪になることもあるくらいです」

「吹雪かー……それはやだな。時期的にはいつ頃?」

「本当に酷い吹雪になるのは数年に一度くらいですけど、雪自体はあと一月もすればちらちらし始めると思います。本格的なのは二月か、三月後くらいでしょうか」

「なるほどなー」


空を見上げたまま間延びした口調で返事を返していたピエールが、頭を下げてニナの顔を見返した。

 ニナは多少面食らったものの、しっかりとピエールの目を見返している。


「ところでニナさ、結構私たちに慣れたよね。ちょっと前ならこうやって視線を合わせることも出来なかったのに」


不意に指摘されたニナは無言で目を丸くした後、照れ臭そうに笑いながら頬を掻いて視線を横へ逸らした。


「お二人とは、長い時間一緒にいましたから……」

「これで何日だっけ? えーっと、森に行く前で十五日くらい? と、戻ってきてからで九日、だっけ。割と世話になってるね」

「私のほうも、いっぱいお世話になりました」

「……どう? 私たちで慣れたことだし、人見知りも治せそうじゃない?」

「それ、は……まだ、分かりませんけど……」

「ふふ、それじゃ一つ面白い考え方を教えてあげよう。それは」

「着きましたよ」


言い掛けるピエールの上から、アーサーが被せるように到着を告げた。

 我に返ったピエールがニナから視線を外せば、そこには確かに道具屋の看板。

 何か返す隙も無くアーサーに急かされ、二人は道具屋の中へと足を踏み入れた。

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