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姉妹冒険者物語  作者: 並野
パフォーマンスナイトガール
121/181

26

 夕暮れ前の町中に、篝火が焚かれ始める。

 酒場には酒を楽しむ者が増え、浮ついた空気は益々勢いを増していく。

 ロールシェルトの町中は、既に祭りの雰囲気一色となっていた。


「わー、本当にお祭りだね」


いつもと違う町の雰囲気にきょろきょろ視線をさまよわせながら、ピエールが呟いた。

 隣ではアーサーがやはり表情を変えずに並んで歩き、後ろでは夫妻が腕を組んで、というよりルアナがパウルの腕にしがみついて歩いている。

 四人の足音に混じって、どこかから人々の話し声、それに笛の音色が細く長く響いていた。


「二人とも、本当にごめん。戦った直後なのにまたもう一働きして貰っちゃって……」

「ううん、いいよいいよ。これくらい軽いし、精々ルアナちゃんを甘えさせたげて」


後ろを歩くパウルの小さな呟きに、ピエールは前を向いたまま気の抜けた緩い声音で返事をした。

 彼女と、隣にいるアーサーの背には鞄が一つずつ。

 いずれも収穫祭で宣伝を行う為の武具類が納められている。

 姉妹の格好も、アーサーの鎧が新しくなっている以外はまだ武器防具を身につけたドレス鎧のままだ。

 腰にも武器と盾を提げている。アーサーは鋼鉄(はがね)の剣と凧型盾、ピエールは盾は同じものだが武器は片刃の短い手斧。大玉葱マンとの戦いで破損したものと同型だ。

 パウルはその背中を、申し訳なく思いながら見つめていた。

 腕にルアナの手と胸と頬の柔らかい感触を押し当てられながら。

 そんな道すがら。


「あんたたち!」


四人を呼び止める声が響いた。

 歩を止めて声の方へ視線を向けると、そこにいたのはマリウス、ヴァレンティナ夫妻だ。

 そのまま歩み寄ってくるマリウス夫妻。

 嫁が主導で、マリウス本人はむっつりと押し黙ったまま口を開かない。

 パウルは警戒心を露わにし、ルアナを背に隠すようにして師匠夫妻へと挨拶を行った。


「二人とも、随分な活躍だったじゃないか。あたしたちは直接見てた訳じゃないけど、まさかあのデカブツの腕を落とすとはねえ」

「いやあ、あはは。ありがと」

「しかも使った得物は坊やの作品と来たもんだ。これは、あんたたちにあやかろうとする人が出てくるかもね」


女性とは思えない筋張った腕を組んで、ヴァレンティナが笑う。

 笑い声はやはり豪快で、女性らしさが大きく欠けている。

 しかし女性らしさとは別種の魅力が備わっている笑顔だ。


「……けっ、そうは言っても腕を落としたのは間違いなくこのチビの馬鹿力のおかげだろうが。愚図のお前が作った武器じゃどっ」

「こんな時くらい祝ってやれないのかいあんたは、全く素直じゃないね!」


言い掛けたマリウスのつるりとした頭をはたくヴァレンティナ。

 バチン、と小気味よい音が響く。

 マリウスはその顔を更に不機嫌そうに歪めながら口を閉ざした。

 ヴァレンティナは旦那を見つめながら仕方なさげに息を吐き、気を取り直す。


「何はともあれ、これで明日からは程度はどうあれ客は増えるだろうね。……気張んなよパウル坊、それにルアナも。早く店を軌道に乗せて、あたしたちに楽をさせてくれ」

「ええ、ありがとうございます、マリウス様、ヴァレンティナ様」


ヴァレンティナの発言に、パウルの背に隠されていたルアナがひょこりと顔を覗かせてマリウス夫妻へ笑顔で手を振った。

 マリウスは反射的に口を開こうとしたが、それと同時に嫁が右手をこれ見よがしに振り上げた為半開きのまま罵倒を吐き出せずに終わる。


「それじゃ。そこの姉妹もロールシェルトの収穫祭、精々楽しんでお行きよ」


言いたいことを言い終え満足したのか、ヴァレンティナはからっとした明るい笑みを見せるとマリウスの腕を引き颯爽と四人の元から去っていった。去り際に酒の話をしながら。

 どうやらこの後は二人して飲み明かすつもりらしい。


「……はあ」

「もう、パウルさんたら。心配が過ぎますわ」


師匠夫妻が去り緊張が解けたパウル。

 先ほどまでの定位置にルアナが戻り一度頬を膨らませてから笑いかけると、彼も穏やかな笑みをルアナへ返した。

 再び四人で歩き始める。

 と。


「……あっ! ピエールさん! アーサーさん!」


横合いから、猛烈な勢いで駆けてきた人影があった。

 以前姉妹と臨時の仲間となった魔法使いの娘、メリンダだ。

 酒瓶を四本も腕に抱え、頬に汗をじっとり滲ませている。


「あっ、メリンダちゃん、久しぶ」

「二人とも大活躍だったね! でも今はそれどころじゃなくて! お願い、私は別の方向に逃げたって言って! お願いね!」


ピエールの挨拶に被せ猛烈な勢いでまくし立て、酒瓶を抱えたメリンダは返事を待たず一直線に走り去っていった。

 唖然とその様を見送っていると、少しの間を開け彼女が来た方向から再び一組の男女が走って来た。

 メリンダの父親である中年戦士アンドレイと、彼と同年代らしき品の良さそうな婦人だ。

 彼らも息荒く、何か急いでいるようだった。


「あっ……」

「おお、お前さんたちか。随分な活躍だったな、おかげで大物が来ずこちらも随分と楽が出来た」

「それよりもあなたたち、メリンダがここを通ったでしょう? どっちへ逃げたのかしら?」

「え、えっと、その」

「北の細道へ入りました」

「そう、ありがとう。……私も観客席からあなたたちのことは見ていたわ。惚れ惚れするような活躍ぶりだったわね。夫より魅力的に思えたくらいよ」

「お、おい、それはどういう……」

「さ、早く行きましょうアンドレイ。あの()には今日こそ色々と分からせてあげる必要があるわ」


返答に窮するピエールを後目に、一切の躊躇無く正しい方角を教えるアーサー。

 ピエールが驚き露わにアンドレイと妻らしき初老女性の顔を窺おうとするが、夫妻はすぐにその場を走り去ってしまった。

 取り残された三人が再び唖然とした顔でアンドレイ夫妻を見送る。


「……ピエール様、アーサー様、彼らは」

「あ、ええと、前に血吸い花を倒した時一緒に組んだ人たち。あの、最初に走り抜けたメリンダちゃんがどうもお酒大好きみたいで……」

「確かに、酒瓶何本も抱えてたねあの子……まだ若そうだったのに」

「ていうかアーサーさ、本当に一瞬の迷いも無く正しい方角教えたよね」

「下手に嘘などついて追及されたら面倒なので」

「このメリンダちゃんがどうこうとか親御さんがどうこうじゃなくて、単純に面倒ごとに絡まれるのが嫌だから本当のことを言う、ってのが凄くアーサーらしいと思う」

「それ誉めてます?」

「誉めてると思う?」

「では誉め言葉だと思うことにします」

「じゃあはっきり言うけど全然誉めてないからね」


言い切って、三人を促し歩みを再開するピエール。

 アーサーはどこか不満げであったが、後ろを歩くパウル夫妻は一度顔を見合わせてから、微笑ましいものを見る目で姉妹の背を眺めていた。



   :   :



 四人が収穫祭の中心地である中央広場に到着すると、既に広場には北から運んできた玉葱マンたちが運び入れられていた。

 人々は山と積まれた玉葱マンたちがその場で調理される様を目を輝かせながら見守り、或いは酒杯を突き合わせ紅潮した顔で酒を飲み交わしている。


「お二人とも!」


広場に立ち入った姉妹を見つけたのは、現地でも活躍していた組合職員、ソリナだ。

 一直線に姉妹の元へ駆け寄ってくる。


「お待ちしてました! お二人には是非今回の立役者として挨拶を一つして頂きたいのです! 何よりあの腕! (おお)たまねぎマンの腕を皆に紹介するのにあなたたちの存在が必要なんです! ささ、是非舞台の方へ!」

「あっ、ちょっと待ってソリナちゃん。……おっちゃん、ルアナちゃん」

「挨拶の場を設けて頂けるようですし、後のことはお二人にお任せしますわ。アーサー様のそれも含めて軽く宣伝を終えたら、あとはお二人も気楽に楽しんでくださいまし」

「いいの?」

「ええ、せっかくの収穫祭ですもの。……それに、わたくしも今夜はパウルさんと……ね?」

「あ、ああ、うん、はい……」


パウルの腕に上半身を絡めたルアナが行った、ばちんと音が立ちそうなほど力強いウインク。

 ピエールは若干達観めいた笑顔を返した。

 そのままアーサーと二人してソリナに先導され、中央広場の一角に設けられた即席の舞台の上に立った。


「えー、皆様! 皆様ご注目ください!」


即席舞台の上に立ったソリナが、声を張り上げて宣言する。

 今回は戦闘時のような魔道具は使っていないが、それでも喧噪を貫き人々の耳へはっきりと届く大きな声だ。どうやら元々声の大きい女性らしい。

 人々のざわめきがやおらに薄れ、舞台に立つソリナと、美しく着飾る二人の姉妹へ視線と注意が向けられる。

 例によってピエールは大勢からの注目に慣れていないらしく羞恥で頬を薄紅に染めていたが、アーサーと職員ソリナは全く気にした様子無く堂々とその場に立っている。


「ここにいる皆様も、現地で観戦していた方々によって小耳には挟んでいる筈ですが! 今回の解放戦線との戦いでは、なんと! あの恐るべき大たまねぎマンの腕を片方切り落とすという、かつてない快挙を成し遂げた者が現れました! しかも驚き、その偉業を成し遂げたのは、ここにいる二人の美しい少女騎士なのです! ご紹介しましょう! こちらの茶色い髪の、緑色の女騎士が腕を切り落とした張本人、ピエールさん! その隣にいる金色の髪の青い女騎士がピエールさんの妹、アーサーさんです! ちなみに男性名ですが、歴とした女性です! 皆様命が惜しくば、お二人の名前のことは決してお笑いなく!」


紹介を終えると同時にソリナが数歩下がり、姉妹が前面に出る格好となる。

 ピエールはやはり大幅に戸惑いの色を滲ませながら、アーサーは平然とした面持ちで軽く手を振って挨拶を行った。

 観客からの印象は現地で見ていた者たちの好意的な反応と、現地で姉妹の活躍を直接見ていない者の疑いの眼差しと、単純に姉妹の見目に反応した者のおおよそ三種類に分かれた。

 疑いの眼差しが現れたのを見越して、ソリナが続けてフォローに入る。


「それでは皆様へ、ようやくのお目見え! これがその、切り落とされた大たまねぎマンの腕です!」


言葉と同時に舞台の隅から別の職員が駆け寄り、ソリナへと大玉葱マンの腕を渡した。

 両腕で抱え込んだソリナが、大玉葱マンの巨腕を高々と掲げて見せる。

 重量故に、巨腕を掲げるソリナはぷるぷる震えている。

 今にも落としそうで危なっかしい。


「見てください、このたまねぎマンの腕とは思えない巨大な腕! しかもこの腕、普通のたまねぎマンとは違い驚くほど硬く、重いです! まるで石細工のよう!」


 この腕には、観客の殆どが大いに沸き上がった。

 あの大玉葱マンが解放戦線の厄介者にして大勢の戦闘員を治療院、あるいはあの世送りにしてきた恐るべき存在であることはこの町の人間なら皆周知のことである。

 そんな相手の腕を落としたというのは、祭りの空気を盛り上げるには十二分の効力だ。


 観客からの歓声や腕の巨大さに関する呟きが満ちる中、アーサーはいそいそと携えていた鞄から鎧の胴部分を取り出した。

 大玉葱マンに殴られた時の、陥没がくっきり残る鎧だ。

 鎧は既に新しい物に着替えていたが、跡が残る鎧も腕と同時に見せる為に持ち込んで来ていた。

 掲げていた大腕を胸元へ降ろしたソリナが、アーサーが取り出した鎧を見て解説を始める。


「今、隣でアーサーさんが取り出した鎧の胴部分! この胸当ての中心にある陥没が見えるでしょうか! この陥没こそ、この大たまねぎマンの腕が放った一撃を受けた証です! この陥没を見れば、拳の威力が分かろうというもの! ……この腕と鎧はこの後並べて展示致しますので、皆様是非お近くで直接お確かめください!」


鎧の説明を終えたソリナが、姉妹へと視線を向けた。

 二人の紹介を行おうという算段だ。

 しかしそれを、アーサーが小声でソリナへ問いかけることによって遮った。


「……我々には、どれくらい時間を割く予定ですか?」

「えっ? ……そうですね、本来は手短に済ませる予定でした。この後には演奏や大道芸などの催しもあるので……」

「そうですか」

「ただ、厳密な予定を組んでいる訳ではありません。……もしもお二人が何かしてくださるというのなら、時間が前後しても構いませんよ?」


何しろ、お祭りですから。

 小声でそう付け足し、ソリナは企む者の笑みをアーサーへ投げかけた。

 アーサーが頷き、ピエールへ視線を向ける。

 やはりまだ気恥ずかしげに足をもじもじしながら、頷き返すピエール。

 アーサーが一歩前へ出て、観客へと呼びかけた。


「先ほどご紹介に(あずか)りました、アーサーと申します。今回我々はあの大たまねぎマンに一つの有効打を与えるという戦果を挙げました。……が、皆様の中には、やはり我々が成し遂げたことに半信半疑の方が多くいらっしゃるご様子。無理もありません、私が逆の立場ならまず信じないでしょう。……ですので、我々から皆様へ一つ、ささやかながら催事を提供させて頂きます」


腹に力の入った、張りのある声で宣言しながらアーサーは鞄を床に降ろした。

 隣ではピエールも鞄を降ろし、提げていた手斧と盾を構えている。

 察しのいいソリナが床に降ろされた鞄を掴み、颯爽と隅へ避難した。

 普段無表情なアーサーのみならず、ピエールの顔からも表情が抜け落ちる。


 アーサーが腰の剣に手をかけた。


「しっ!」


握った、と思った直後にはアーサーは剣を抜き姉めがけて振り下ろしていた。

 びゅお、と風を切る音が舞台から観客の頬を駆け抜け、気迫に敏感な者は思わず息を詰まらせて半歩後ずさるほど。


 しかし剣は何物にも触れていない。

 姉の頭上めがけて振り下ろされた剣は、姉が素早く掲げた盾に触れる直前でぴたりと停止していた。


 突然の一閃に驚き、ぴたりと音が止む中央広場。

 その場の誰かが再び口を開こうとする、その寸前。


 アーサーの剣が唸りを上げる。


 今度は二閃だ。

 袈裟斬りのそれをピエールは屈んで避け、返す刀の横薙ぎを斧の柄で受ける。

 手斧の柄は軽量ながら金属で作られており、直接受けても刃が食い込むということは無いようだ。

 再び甲高い風切り音、次いで金属同士がぶつかる金属音が広場を駆け抜け、観客たちは息を飲んだ。


 剣を止められたアーサーが一歩下がった。

 すると次はピエールが、斧を持つ右手に力を込める。


 次の瞬間、弾けた火花で最前列にいる観客の目が眩んだ。


 ピエールの振るう刃はアーサーのものより更に速い。

 故にピエールが斬りかかった、という過程を見切れた者は少なく、更にピエールは躊躇無くアーサーの盾へ刃を打ち付けた為多くの観客には、突然盾と刃が擦れて火花が散った、としか認識出来なかった。


 続けてピエールは斧を振るう。

 彼女は妹とは違い斧を直前で止めず盾へと叩きつける為、鋼鉄同士が擦れる火花と金属音がひっきりなしに舞台を飛び交う。

 強く打ち込んだ際などは、火花の量も一際多くアーサーもたたらを踏むほどだ。

 当然盾にはくっきりと刃が打ち込まれた跡が残っている。


 縦一文字の振り下ろしを盾で止め。

 斜めの袈裟斬りを表面を削り落とされながら盾で逸らし。

 時には剣斧を絡めて刃を逸らす。


 二人が行っているのは、真剣を用いた打ち合いだ。

 と言っても見栄えを重視し体当たりや蹴りなど武器以外の攻撃はせず、ピエールは妹に合わせ相応に加減している。

 しかし戦いとは縁の無い一般人からすればこんな間近で本気の斬り合いを見れる機会など早々無く、また戦いの心得のある者にしても姉妹の振るう刃の速度や、刃がまるで鞭のようにうねり、しなる錯覚を抱くほどの武器捌きにある者は驚き、またある者は感銘を受けている。


 その上二人の格好は、見目麗しいドレス鎧だ。

 斧を振るえばドレスの裾が靡き、剣を受ければ風圧でツインテールの房がはためく。

 二人の姉妹による剣の舞は、酒杯を傾ける手さえ止めさせてしまうほどに見る者を夢中にさせていた。


 やがて一頻り打ち合いを終えた姉妹は、互いに舞台の両端へ跳びすさり距離を取る。

 これで終わりか、と誰かが息を吐こうとする中。


 アーサーが、先ほど降ろした鞄から一つの兜を取り出した。

 半球型の鋼鉄の兜だ。


 その取り出した鋼鉄の兜を。

 アーサーは、姉めがけて投擲した。


 一直線に飛来する兜を、ピエールは身体の真正面に捉える。

 振り上げられる両手。

 既に左手に盾は無く、斧を両手で握っている。

 天から届く(いかづち)を受け止めるかのように、高く掲げられた斧の刃。


 小娘とは思えない、甲高く力強いかけ声と共に。

 ピエールは渾身の力で斧を振り下ろし、投げつけられた兜を真っ二つに切断した。


 鍛えられた鋼鉄で作られた兜の厚みは数センチにも上る。

 更に空中を飛んでいるそれを、ピエールは物の見事に一刀両断して見せたのだ。


 一直線に飛んでいた兜は左右に分かれ、ピエールの真隣を通過して舞台を飛び出し地面に転がる。

 ピエールは手斧を鞘に戻して舞台を飛び降り、二つに割れた兜を拾った。


 その合間、ピエールは見知った顔を近くで見つけた。

 宿屋の息子、エフィム少年だ。

 結局現地でのソリナの紹介までドレス鎧の女二人が姉妹だと気づいていなかったエフィム少年は今、目を丸くしてぽかんとピエールを見つめている。握っていた筈の匙は既に地面だ。

 ピエールはちょっとだけ得意げに、笑みを浮かべてエフィムにウインクして見せた。

 そのままさっさと舞台の上に戻る。


 舞台の上に戻ったピエールは武器を納めたアーサーの隣に立ち、両断した兜を釣り上げた魚を見せるかのように両手で掲げた。

 掲げ終えてから、二人揃って一礼。


 中央広場に、割れんばかりの拍手が轟いた。

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