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(2)せってい

『DOS_Evan』

 ジャンルはSFになるのだろうか。はたまた、コメディなのだろうか。大人から子供、華麗に醗酵した女子共に愛される週刊誌に掲載されていた少年漫画だ。公式の愛称は『DOS』、ネットの愛称は題名の大文字をアナグラムした『ドエス』。酷い話だけど確かにエバさんはSっけがある。

 主人公の鳥居昴はダメダメな高校一年。勉強も運動もやればできるけど、メンタルがともかく弱く、ぼっち気質だ。新学期早々学校に馴染めず、早くも不登校になりそうなところ、未来からアンドロイドがやってきた。

 DOS_Evan――エバさんは、昴がダメダメなままだと逆恨みして天才的な科学力で人類を滅ぼしちゃうから根性を叩き直してリア充にしてやんよ! と、未来からお越しになったらしい。ドラ×もんとター×ネーターを足して割ってライトノベルをかけたような話だ。

 エバさんのプログラムは昴が作った。あまりにもよく出来すぎていたものだから、自我が芽生えて、感情的に行動する『ジャンク品』になってしまったのだ。だから勝手に未来を書き換えようとしている。それゆえ、未来からやってくる闇落ちした昴の手下のアンドロイドはジャンクになれるほど出来がよくないという規制がかかっている。

 という漫画だった。

 自分のことは溺れて死んだ程度で、薄らぼんやりと覚えていないくせに、漫画にまつわる内容はかなりしっかり覚えている。きっとよほど好きで読んでいたのだろう。昴がショタ可愛いからツボだったのかもしれない。

 なんで前世で読んでいた漫画のキャラクターとして生きているのか? わからないけど、宇宙は膨張しているから、ないことはないだろう。現次元+一次元=神の視点というらしい。つまり私が現実だと思っていた世界も+一次元の存在があった可能性があり、私が選んだ行動も誰かに選ばされていたということも、理屈だけなら言える。きっとスパゲッティモンスターによって宇宙は作られているのだ。それでいいじゃん。

 ところで、私がスパゲッティモンスターに問いたいことがある。

 『私』は『鳥居雀』だが、それは私の知っている『鳥居雀』ではない。

 鳥居雀について語ろう。

 彼女は拳を振るうお姫様だった。昴のことが好きで好きで大好きだけど、姉弟だから自制するために、反動でボカスカ殴って冷たく当たるようなブラコンだった。顔つきも彼女のほうが鋭く険があり、髪型も高い位置のポニーテールだった。よくも毎朝あんな面倒くさい髪型をきちっと作ることができると感心する。

 私個人は暴力ツンデレを好まない。故に弟が好きで好きで大好きだから全力で可愛がって甘やかしてしまう。性格が節々に出ているせいか、目元はおどけたようにパッチリ開かれているし、ニマニマしている。髪も下ろしっぱなしだ。

 『鳥居雀』は私だが、私と彼女はかなり違う。弟との関係も当然変わった。やりたい放題やっているため、立場もずいぶん違う。

 それに、これから先はなるべく昴に迷惑をかけたくない。

 彼女をお姫様という理由は『よく人質になる』からだ。ピ×チ姫のごとく毎度毎度さらわれている。彼女はなんら悪いわけじゃないし、時として人の良さにつけ込まれることもある。でも、人質になればその時点でお荷物感は否めないし、正直そろそろ懲りろよと思うところもあった。ほぼ返してもらえないのに両さんのツケを許す亀有商店街の人とか、ロケ×ト団の変装を見抜けないサトシとか、本当に懲りろ、疑えと思う。

 なので私は昴に迷惑をかけないように最善を尽くそうとしている。それは私が『鳥居雀』であることを放棄しているわけだが、スパゲッティモンスターはそれでいいと思っているのだろうか? まあ、思っていなければ、前世の記憶持ちなんて、こんな厄介な設定を作らないだろう。サンキュー、スパゲッティモンスター。

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