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のぼる丘  作者: てくてく
壺の中
2/14

嘘の鎧

5月....僕は仕事をやめた。




(今回は3ヶ月か...)



働き始めたときは、あんなに生き生きしてたのに。



長くて1年、早い時は3日で仕事を辞める。




(なんで続かないんだろ...)




まだ肌寒い季節。

自宅のベランダで、大きなため息と一緒にタバコの煙りを吐き出す。




僕は青山(あおやま) (のぼる)、通称 ヒル、愛知県在住、29歳、独身、彼女いない歴5年、現在親と同居中。





ここまでは、まだ許せる範囲のプロフィールである。




「のぼるー!のーぼーるー?」




母さんだ。




母さんの声は関西弁の大きな声で良く通る。そんなに大きい家ではないが、家中に響き渡る。




「あんた、また奨学金の返済滞ったんか。父さんにバレへんように母さんが払っといたけど、ホンマあんたは金食い虫やなぁ。仕事も辞めてもて、夜にガサガサ、ゴキブリかいな」




会えば僕の悪口。だから家にはいたくない。



「わかってるよ....」



返済が滞っていることも、声が母さんに聞こえていないこともわかってる。



.......頭ではわかってる。


(もうダメなんだ........)

と。




(....死にたい....)




死にたいのに、死ねない。


いや違う、、、、死ぬのが怖いんだ。




テレビでは、平々凡々なダメ人間がスーパーヒーローになって地球を救ってハッピーエンドなのだが、現実は、、、、エンドが無い。




結局、僕が頑張ってもウルトラマンのように長くは続かず、一時逃れなんだ。




「♩ピピピピ....」


(誰からだろ?)





加えタバコをしながら、買ったばかりのスマホを取り出した。




[件名:返済期限のお知らせ]

[本文:いつもご利用ありがとうございます。まもなく返済期限が迫っております。お支払い金額は、、、、]





「おいうちかよ。」




「♩ピピピピ....」



(また?!)



違う、ヨシキから電話だ。



(なんだろ)



「もしもし?」



ヨシキ「もしもしー?ヒルー?よぉー。最近、お前なにしちょるん?」



声を聞いた瞬間思い出した。



(あ!金だ。忘れてた。電話、とっちまった ...)




「よぉ....あー.....最近....最近は、そうそう!友達が独立して会社起こすって言ってて、俺もメンバーに加わってるんだよねー。もう忙しくて、忙しくて....ハハ...」



ヨシキ「そうなんかー、そりゃ、大変やのー」


「ぁ、ああ...」




ヨシキ「そういやー、お前ー、前に借しちょった5万、まだ、返せんのかー?来週返すって言ってもうあれから1ケ月すぎちょるぞ」



(きた....)



「あー...あー....そ、そうだったねー。銀行行ってお金おろすの忘れていたよ。いつでも返せるよ。あ、でも今から、大阪いかないとダメだから、明日になる..かなぁ....ハハ...」



ヨシキ「ほうか、ほな明日でええで。あまり無理せんようにな。帰ってきたら必ず電話くれよ。」




「お、おう...」



僕は嘘つきだ。自分にも、人にも嘘をついている。


隠しきってない嘘は、自分1人では何ともできない嘘。正式には、なんとかして欲しい気持ち。


しかし、隠し通さなければいけない嘘もある。


(金...)




そう、僕は借金があるくせに、仕事を辞めた。



奨学金200万、ア○ム20万、プロ○ス50万、友人に同じ嘘を言いすぎて何人に借りたのか、もう思い出せない。20万くらいか。


(まぁ、ざっと、300万くらいか。。。)



普通に働けばきっと普通に返せる金額なのに、なぜか続かない。



(俺って、出来損ないのダメ人間だなぁ。。。)


毎回、返済のメールや電話が来ると、必ず思うことがある。




(昔に戻りたいなぁ。。。。)



僕は大学時代、地元を離れて一人暮らししていた。


そのときは、信頼できる友人もいて、お金はなくても充実していた。



(戻りたいなぁ。。。)



毎回恒例の【現実逃避】だ。



「ふー.......」




タバコの煙と一緒に、ため息。




(戻るか....)



ひと時、昔の自分を振り返り、僕は自分を慰めて、重い足取りで部屋に戻る。


(ふぅ.....)


この息は、ただの出不精。



部屋に入るなり、ゴロンと転がる。


手を伸ばして、昨日の新聞の間からとってきた求人広告に目を向ける。



(【介護職員募集!】か......まぁ...高齢化社会だもんな....)




そうやって、未来のことを考えていると、決まって、、、





「グー.....zzzz......zzzzz....」



寝る。



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