なんと面妖な…
変更点
8月5日17時45分
句読点の追加を行いました
2017年1月5日
句読点、行間、文章の添削、追加
1話と2話を合併
「妙だ…」
結城清村がそう思い出したのは、半刻ほど前からだ。
濃い霧に包まれる前までは、ありふれた風景であった森が、濃い霧を抜けた途端に木が鬱蒼と生い茂り、日の光すらも届かないような樹海に変わっていた。
それは、「一旦止まって霧が晴れるのを待ちましょう」と言う供の者の声に耳を貸さず「休みたければ勝手に休んでおれ!儂は行く」と手探りで強行した結果知らず知らずの内に、向こう山へと辿り着いたのかと思っていたが、霧も完全に晴れて周りを見渡せば、見た事も聞いた事もない植物や動物の鳴き声が聞こえる、見も知らぬ樹海へと迷い込んでいた。
「…困ったのぅ」
清村が一番懸念しているのは、山へ連れてきた供の者達の安否であった…
しかし、今は知る術もなく、自分の居る場所さえもわからない為、とりあえず水源を探そうと、再び歩き初めるのだった…
延々と続く木の海の中を暫く歩いた時だった。
遠くの木陰で、人の動く気配を感じた。
珍しく清村は、ほっと一息吐くと急ぎ足で気配の感じた場所へ向かう
(この際山賊であろうと構わん!)
清村は自分の領地で遭難など笑い話で語り継がれかねないと自嘲しながら歩く
「御免!道を尋ねたいのだが… 」
と口にしたのは相手と一間(約180cm)程に迫った時だった
「ギギ!」
「驚かせてすまぬ、迷ってしまったようで…」
清村は途中で言葉を失った、背後から見た感じでは
肌が赤黒くなるまで風呂にもはいらず、人里離れた山奥で小汚ない山賊がなにやらやっているのであろうと思っていたからである
そして急に話掛けたもんで、驚きのあまり変な声を
出したのだと…
しかしその小汚ない山賊が振り向いた時、思わず言葉を失ってしまった
それは書物等で見た餓鬼を、そのまま引っ張って来た様な姿であった…
「なんと面妖な…」
清村は咄嗟に距離をとり抜刀する
(まさか妖魔と出会うとはな…この異様な動植物は妖魔の世界のモノと言う事か…)
餓鬼と一定の距離を保ちながらそう思案する
餓鬼の得物は鉈を持っており、身長は四尺(約130cm)程
相手を観察していると、しびれを切らしたのか餓鬼が先に動く
「ギッギッ!」
そう鳴くと餓鬼は、正面から鉈を上段に構え打ち降ろし清村を真っ二つせんと、迫ってくる
そこで清村は、避けるでなく敢えて踏み込み餓鬼が
振り降ろす鉈を一寸で見切り、空を斬った瞬間に
刀を上段から降り降ろし、餓鬼の首を落とした…
「餓鬼と言えど首を落とされると死ぬのか…」
そう言い捨てると、刀に付いた血を振り落とし、鞘に納める
ここでもう一度思案する
(儂は地獄へ来たのか!?それともあの世との境なのか?どちらにせよ儂と言う存在は確かにある!であるならばどのようなモノが来ようと我が刀、我が剣術にて斬りふせるのみよ!)