第二十八話 林野和也の確信
探索ギルド本部。
最上階。
ギルド長室。
夜。
窓の外は、
街の灯り。
林野和也は、
机に
座っていた。
目の前に、
山積みの
資料。
佐山孝也。
その名前が、
何度も
出てくる。
林野は、
一枚、
資料を
手に取る。
Sランク探索者
鷹宮剣也との
模擬戦記録。
攻撃回避率。
九十八%。
異常値。
林野は、
小さく
息を吐く。
「偶然では
済まないな」
別の
ファイル。
異世界由来の
魔力痕跡。
反応地点。
佐山が
立ち寄っている
場所と、
重なる。
「……やはりか」
椅子の
背にもたれる。
三年前。
ダンジョンが
現れた頃。
世界中で、
失踪事件が
相次いだ。
数日で
戻った者。
戻らなかった者。
記録は、
曖昧な
まま。
林野は、
当時の
報告書を
開く。
「異世界転移の
可能性」
赤字で
書かれている。
誰も、
真剣に
取り合わなかった。
だが、
今は違う。
証拠が、
揃いすぎている。
林野は、
ペンを
持つ。
紙に、
一行
書く。
『帰還者仮説』
佐山孝也。
該当。
「もし……
君がそうなら」
林野は、
独り言の
ように言う。
「君は、
世界を
救った側の
人間だ」
だからこそ。
表に
出すべきでは
ない。
国が、
放って
おかない。
利用される。
監視される。
最悪、
拘束。
林野は、
決めた。
(守る)
少なくとも、
本人が
望まない限り。
林野は、
端末を
開く。
内部権限。
佐山孝也の
一部データを
秘匿設定。
理由。
『調査中』
高瀬に、
メッセージ。
「佐山関連の
調査は、
俺の承認制にする」
送信。
林野は、
窓の外を
見る。
「君は、
ただの探索者で
いればいい」
その頃。
佐山孝也は、
自宅で、
剣の
手入れを
していた。
布で、
刃を
拭く。
光る。
懐かしい
感触。
(林野さん……
気づいてるな)
直感。
だが、
妙な圧は
感じない。
むしろ、
穏やか。
敵意は
ない。
「味方、
か……」
佐山は、
剣を
鞘に
納める。
隠し続ける
理由は、
変わらない。
平穏に
生きたい。
それだけだ。
だが、
世界は、
それを
許して
くれそうに
なかった。




