第二十四話 長田あかねの疑念
長田あかねは、
受付カウンターに
座りながら、
端末を見つめていた。
探索申請。
装備更新。
報酬精算。
いつもと
変わらない
業務。
だが、
視線は
別の場所へ
向いている。
訓練場の
方向。
(佐山さん……)
最近、
妙に
気になる。
強くなった。
それだけなら、
まだいい。
動きが、
綺麗すぎる。
無駄が、
一切ない。
初心者が
身につける
型ではない。
(誰かに
教わった……?)
だが、
佐山孝也が
師匠を持っている
という話は
聞いたことがない。
受付業務を
こなしながら、
記憶を
辿る。
初めて
会った日。
少し、
疲れた顔。
装備は、
安物。
態度は、
控えめ。
普通の
探索者。
それなのに。
初ダンジョンで、
彼は
冷静だった。
新人が
取り乱す場面でも、
声を
荒げない。
(あの時点で、
おかしかった……)
あかねは、
唇を
噛む。
自分は、
見逃して
いたのでは
ないか。
「長田さん」
声を
かけられる。
振り返ると、
若い
男性探索者。
「申請、
お願いします」
「あ、
はい」
手続きを
済ませる。
だが、
頭の中は
別のこと。
(佐山さん、
何を
隠しているんだろう)
嫌な予感は
しない。
むしろ、
逆。
危険なのは、
彼自身より、
彼の過去。
そんな気が
していた。
休憩時間。
あかねは、
資料室へ
向かう。
目的は、
一つ。
佐山孝也の
登録データ。
端末を
操作。
名前を
入力。
表示。
年齢。
職業。
ランク。
Cランク。
初期適性。
平均以下。
「……嘘」
小さく
呟く。
戦闘記録を
開く。
最近の
ログ。
討伐数。
被ダメージ。
魔力消費。
数字が、
整いすぎている。
突出している
わけではない。
だが。
噛み合いすぎ。
(わざと……
抑えてる?)
そんな発想、
普通は
しない。
だが、
佐山なら
ありえる。
あかねは、
椅子に
座り込む。
「どうしよう……」
本人に
聞く?
聞いて、
答えてくれる?
きっと、
はぐらかす。
(それでも……)
あかねは、
端末を
閉じる。
その日の
夕方。
ギルド玄関。
佐山が、
帰ろうと
している。
あかねは、
カウンターから
出た。
「佐山さん」
振り返る。
「今日、
少し
時間ありますか?」
佐山は、
一瞬
迷う。
「……少しなら」
近くの
自販機前。
人通りの
少ない
場所。
あかねは、
深呼吸する。
「私、
佐山さんのこと、
信用してます」
「いきなりだな」
「だから、
聞きます」
あかねは、
真っ直ぐ
見つめる。
「佐山さんって、
普通の
探索者じゃ
ないですよね?」
沈黙。
風の音。
遠くの
車の音。
佐山は、
目を
伏せる。
「……どうして
そう思う」
あかねは、
胸が
少し
高鳴る。
否定しない。
それだけで、
十分だった。
「動きです。
判断の早さ。
迷いのなさ」
「何より、
人を
守る時の
顔」
「経験者の
顔です」
佐山は、
小さく
息を吐く。
「俺は、
探索者だ」
「それは
わかってます」
「それ以外は?」
佐山は、
しばらく
黙る。
やがて、
言う。
「今は、
言えない」
あかねは、
少しだけ
寂しそうに
笑う。
「わかりました」
「でも……」
一歩、
近づく。
「隠してるなら、
無理に
暴かないです」
「ただ、
一つだけ」
「危ない時は、
頼ってください」
佐山は、
目を
見開く。
そして、
小さく
頷いた。
「……ああ」
あかねは、
満足そうに
微笑んだ。
彼女の中で、
一つの答えが
生まれていた。
佐山孝也は、
ただ者ではない。
それでも。
味方である。
それで
十分だ。




