第三十七話 封印されし力の兆候
深層五十二階。
戦闘の余波で、
空気が震えている。
佐山孝也は、
短剣を握り、
掌の光を
わずかに保つ。
刺客の魔力は、
異世界由来。
だが、
何かが違う。
胸の奥。
力が、
囁く。
(……封印されし力か)
目の前の刺客に、
意識が
反応する。
普通の魔力では、
ここまで敏感に
ならない。
アドルも、
気づく。
「佐山……
何か変だ」
佐山は、
軽く頷く。
「少しだけ、
封印を意識している」
ティファニーが、
驚く。
「封印……?」
「過去の力?」
佐山は、
掌を閉じる。
(暴走は
させない)
バルガスが、
剣を前に
構える。
「ならば、
この程度で
十分だ」
ライクも、
警戒を
緩めずに、
後方を守る。
フィオは、
小さく
跳び上がる。
「よーし、
行くよ!」
佐山は、
深く呼吸する。
掌の光が、
わずかに
強まる。
刺客が、
笑う。
「……それで
封印か」
魔力の波動。
身体を、
押し返す力。
(……限界点は
まだ先か)
アドルは、
冷静に観察。
「反応が、
通常の魔力より
早い」
ティファニーが、
手を合わせる。
「この力……
危険です」
佐山は、
短く
言う。
「制御できる」
小さな力でも、
戦況を
変える。
刺客の動きが、
止まる。
封印されし力の、
微かな兆候が、
空間に
影響していた。
バルガスが、
一歩前に出る。
「今のうちに
叩くぞ」
五人の勇者が、
連携をとる。
攻撃と防御。
魔法と剣技。
封印の兆候を
意識しながら、
戦場を制圧。
刺客は、
笑顔を崩さず、
後退する。
佐山は、
掌を閉じ、
光を消す。
(よし……
まだ、見せすぎてない)
ティファニーは、
微笑む。
「皆、無事です」
ライクは、
後方を見渡す。
フィオは、
跳ねながら
叫ぶ。
「やったね!」
アドルは、
静かに
頷く。
佐山は、
深く息を
吐く。
封印された力の、
一部だけが
顔を出した。
五人には、
それで十分だった。
だが、
異世界側は、
まだ本気では
なかった。




