第三十五話 佐山、力を少し解放
深層五十一階。
闇の裂け目。
魔力の渦。
周囲の魔物が、
奇妙にざわめく。
佐山孝也は、
短剣を握り、
静かに呼吸する。
(ここで隠すのは、
もう無理だ)
拳を握る。
魔力が、
身体を駆け巡る。
微かな光が、
掌に
集まる。
バルガスが、
目を見開く。
「……力を
解放するのか?」
佐山は、
短く
頷く。
「一部だけだ」
ティファニーは、
手を合わせる。
「無理しないで」
ライクは、
警戒を
緩めず、
後方を
守る。
フィオは、
小さく
跳び上がる。
「見せて!」
アドルは、
冷静に
佐山を
観察する。
佐山は、
集中する。
全身の魔力を、
ほんの少し
開放する。
掌から、
青白い光が
放たれる。
魔物たちが、
ざわめく。
視線を、
向ける。
小さな恐怖。
その瞬間、
魔物が、
動きを
止めた。
「……!」
バルガスは、
拳を握る。
ティファニーは、
瞳を見開く。
ライクは、
目の前の敵を
見据える。
佐山は、
ゆっくり
歩を
進める。
掌の光が、
魔力の渦を
押し返す。
裂け目の闇が、
少しずつ
薄れる。
「すごい……」
フィオの声。
「本物の力……
やっぱり!」
アドルは、
冷静に
言う。
「だが、完全解放は
まだ危険」
佐山は、
うなずく。
「今は、
制御できる範囲で」
小さな力でも、
戦況は
一変する。
魔物たちが、
押され始める。
バルガスが、
突撃。
ティファニーが、
回復魔法。
ライクとフィオ、
連携攻撃。
アドルは、
広域魔法。
佐山は、
隙を見て
短剣で切り込む。
次々と、
魔物は倒れる。
闇の裂け目は、
まだ完全ではない。
だが、
確実に
押されている。
佐山は、
拳を緩める。
(これ以上は、
封印しないと……)
バルガスが、
肩を叩く。
「よくやった」
ティファニーは、
微笑む。
「力の調整、
完璧です」
ライクは、
無言で
うなずく。
フィオは、
跳びはねる。
「すごいよ!
佐山さん!」
アドルは、
冷静に
言う。
「異世界の
力を、
うまく扱える」
佐山は、
小さく
息を吐く。
(まだまだ、
隠さなきゃな)
だが、
五人の目には、
少しだけ
本当の力が
見えた。




