ユートピ啞
第一章 祖国万歳!!
皇帝陛下万歳!!帝国万歳!!
私は、幸せである。君も幸せである。皆も幸せである。我が国はユートピアである。
はじめまして。私は、ウェデル・アーデルハイト。帝都ベルトに住む、しがない無階級民出身だよ。
なになに?喋り方が綺麗だから貴族だと思ったって?
「いや、そんなこといっt」
黙って!!
「え?」
黙って!!そう言ったでしょ?
さて、、
やだなぁ、照れちゃうよ。でも、僕みたいな知的な人は、この国には大勢いるんだ。なぜなら、この国には義務教育があるからね。皇帝陛下の恩寵によって、16年も!!
皆が大学に、進み!!皆が国家に奉仕している。そして、皇帝陛下に恩返しをしているんだ。
そこに、貴族も庶民も無階級民も差はないんだ!皇帝陛下も皆を平等に扱ってくださる。素晴らしいことだよね?
君もそう思うでしょ?
「えっと」
”そう思うでしょ”
「そ、そう思います」
そうだろう、そうだろう。
でもね、皇帝陛下は僕たちの恩返しに感銘を受けて、僕たちに選挙権をくださった。
あぁ皇帝陛下どこまでも慈悲深く、偉大なる皇帝陛下。
僕達は、ご恩に報いているだけなのに、それなのに、皇帝陛下の立法権を助けるものを選ぶ権利を我々に下さった。
お返しに、お返しで返されるなんて、素晴らしいことだよね。
愛には愛を、感謝には感謝を人としての常識だ。
これは僕個人のことだけどね。そんなお返しに報いるため僕は、帝国軍の督戦隊で3年勤務しているんだ。
皇帝陛下の兵士を、ときには皇帝陛下の子供達、つまり帝国民を引き締める大事な役なんだ。
そう思うだろ?
「そう、、思います」
ち!違うだろう!!
君はまず何故僕のような役が必要なのかを言及すべきだ!何故しない!
私みたいな役がいるということは、皇帝陛下を裏切る不忠な兵士、皇帝陛下の御恩を理解しない愚民がいるということだ。
何故だ?何故だ?何故だ?
皆、皇帝陛下の偉大さを知る最低限の知能はあるはずだ?奴等は他国のスパイなのか?
君も私と同じ考えに至っていない?君もスパイなのか?愚民なのか?不忠者なのか?
「違います。違います。」
ならば証明してみせろよ!証明してみせろ!
皇帝陛下万歳!帝国万歳!祖国万歳!
「皇帝陛下万歳!帝国万歳!祖国万歳!」
わからないなぁ。わからないなぁ!
君はいま何をしているんだ。ただ、無意味に時間を潰して皇帝陛下への御恩を返そうとしない。
「皇帝陛下万歳!帝国万歳!祖国万歳!」
黙れ。貴様が祖国を語るな!皇帝陛下を語るな!
「うぅ。皇帝陛下万歳!帝国万歳!祖国ばn」
バン!!バン!!
今日もまた帝国は幸せとなった。
第二章 あぁ、息子よ
督戦隊の兵隊さんが一歩一歩階段を下る。
兵隊さんと言っても彼は私服。彼等なりの配慮であろう。
その彼の服には息子の返り血がついている。
しばらくの間目を離すことが出来なかった。
「愚息のことありがとうございました」
私はそう答えると兵隊さんはほくそ笑みながら
"これも仕事ですから"
と返す。
あぁ、息子よもう居ないのだな。
そう思いながら、兵隊さんにお茶はどうかとたずねた。
どうやら、付き合ってくださるようだ。
兵隊さんにも椅子に座るように薦め。
コップにお茶注ぐ。
その時間が永遠の様に感じられた。
妻と息子、三人で過ごした日々が脳裏に浮かぶ。
この帝都が帝都と呼ばれるようになった頃、貧しい農村から家族を連れ出し、労働者となった。辛い日々も沢山あったが、それよりも幸福な日々、思い出が浮かびあがる。
あぁ、楽しかったなぁ
帝国ができてから義務教育によって、息子も立派に育った。建設会社の設計士として多くの建物を建てていると聞いた時は、とても誇らしく思っていた。
だが、皇帝陛下による経済統制によって息子は全てを失ってしまった。
仕方がないことだったらしい。俺にはインフレが、バブルがどうのは分からない。だが、必要なことだったことはなんとなく分かる。
そして、息子はその犠牲となったことも。
だから、暖かく息子を迎えた。
それが間違いだったのかもしれない。
息子は荒れ、部屋に篭り、たまに顔を出せば、俺達に暴力を振るう様になった。
そして、妻が死んだ。
妻は息子に突き飛ばされた時、当たりどころが悪く死んでしまった。
長年連れ添った妻が息子に殺されてしまった。
ようやく気付いた。
俺の息子はもう居ないのだと。
あの経済統制で死んでいたのだと。
妻が死んだ日を思いだした時、一気に現実に引き戻された。
マグカップをトレイに乗せ兵隊さんのところへ向かう。
当たり障りのない会話を続け30分続けただろうか。兵隊さんは"そろそろ"といい、まだ口もつけてなかったお茶に何かを入れた。
そして、そのお茶を私に差し出した。
通報感謝します。しかし、それだけでは足りません。
責任をとっていただきたい。就労・納税の義務を忘れ、忠義を忘れたものの親としての責任を。
そう言う、彼は変わらずほくそ笑んでいた。
彼の笑みを見てふと思ってしまう。
そうか、もしかしたら、息子は、、、
それ以上考えることは辞めておこう。
瞼を閉じて覚悟を決める。
「分かりました」
勢い任せお茶を飲み干した。
徐々に苦しさを感じ始めた時、大事な事を聞くのを忘れて居たことに気づく。
「そういえば、お名前は?」
兵隊さんは変わらぬ表情で答えてくれる。
私達はウェデル・アーデルハイト
ーーー
名乗ったはいいものの彼からの反応はなくなっていた。今日も帝国は発展している。
第三章 帝国の休日
ーナレーションー
帝国、それは理想郷であります。
つまり、帝国は完全無欠!帝国は天国!
そして、皇帝は神!!
フラー マイ マザーラント!
ハイル カイザー!
ウラー ツァーリズム!
おっと失礼!
皇帝陛下の誕生日だから、少し!↑浮かれすぎてしまいました。
そう、今日は皇帝陛下の誕生日です!
休日です!
共に、皇帝陛下の誕生日を祝いましょう!
ーーー
「祝砲、効力射!自由射撃!打てーーー!全部打ち込め!」
バン、バン、バン
爽快ですね。ザカルフ砲兵大佐。
「ランd、いや。失礼した、ウェデル情報大尉」
いえいえ、気にしないでください。ただ、彼は死にました。私はウェデルです。ウェデル・アーデルハイト。
・・・それよりも、流石は7.5センチ砲。皇帝陛下に相応しい見事な砲撃ですな。しかし、奴らには勿体無い。
「・・・あぁ、そうだな。勿体無い」
どうかしましたか?よもや、皇帝陛下のお誕生日を穢した彼等に同情でも?
「揺さぶるな小僧。私は帝国が帝国になる前から皇帝陛下に支えている」
・・・
「やましいことはない。私は、誕生日に都市一つを焼かれたら喜ばない。例え、蜂起した都市だとしてもな。奴等には同情はせんよ。ただ、陛下の御心を思っただけだ」
なるほど。なるほど。たしかに。たしかに。
いやはや。いやはや。
流石は砲兵大佐殿。陛下の御心を思えばこそですな。私には、思いつかなかった、、、。
うぅ、わざわざ、この日に蜂起したクソどもに、愚か者に、痴れ者に、分からせることばかりで、知らしめることばかりで、、
私はなんて、なんて、不忠者なのでしょう。
「・・・では、砲撃を辞めても?」
ピタッ
うーむ。うーむ。いいでしょう。参謀本部には私から上申しましょう。参謀本部の中止命令をお待ちください。
「わかった。、、間に合わなそうで残念だ。」
・・・聞かなかったことにしましょう。
「そうか、助かるよ。・・・お礼と言ってはなんだがこのあと食事でも奢ろう。借りは早めに返さねばな。」
・・・第七砲兵中隊の駐屯地はリッテンブルクでしたね。楽しみです。
「あと、1時間もすれば撃ち終わる。帰還しだい休暇だ。食事後は生誕祭でも楽しみたまえ。ただし、祭りには同行できん事を先に詫びよう。ランドルフ候補生の墓参りがあるのでね」
ーーーー
ーーー
「ふふっ、目ぐらい合わせてくれてもいいじゃないですか。」
ーーー
か細い声は業火に消える!弱さは帝国の恥!
兵士の目は死んでいる!2人の目も死んでいる!彼の瞳では都市が燃えている!
その業火は帝国の偉大さの象徴!
神の雷撃が都市を燃やしている!神の兵がそれに続く!神にあだ名する悪魔よ、死にたまえ!
今日も帝国軍は勇敢である!
第四章 1人のウェデル
「ーーでありますから、ウンターボッシュの反乱は第七砲兵中隊及び、第三二歩兵大隊によって鎮圧がなされました。軍からは以上です」
与党ー帝国党
「わざわざこの日に反乱を起こすとは、何とも不遜な奴らだ!」
「「そうだ!そうだ!」」
「まぁ、しかし。奴等にとっては相応しい最後でしたなぁ」
野党ー共和党
「バカをいうな!明らかにやりすぎている。ウンターボッシュには反乱勢力に属さない民間人もいた!共和党としては政府の判断に対し説明責任を問わせてもらう!」
「「そうだ!」」「人殺しが!」
与党
「黙れ。ウンターボッシュには避難・退避勧告は出した!もし帝国の民が残っていたとしたら、それは反乱軍の責任だ!政府はするべきことはした!」
「「そうだ!」共和党は黙ってろ!」
野党
「「なんだと!」」
与党
「議長!財務大臣からも一点。私としても共和党のいうように今回の首相の判断は誤りだと指摘せざる負えない!」
「なんだと!?」
「裏切るのか!」「ふざけるな!」
野党
「よく言った財務大臣」「おぉ」「流石は良き貴族だ」
与党
「最後までお聞きください。私が共和党に同調するのは"やり過ぎ"という部分のみです。今回のウンターボッシュの都市破壊は経済的観点からして過度であり、復興への資金や経済的影響は計り知れない!陛下から国庫を預かる身として首相の資質を問わせていただきたい」
「何を言うか!貴様も賛同していたではないか!」
「いえ、私や他大臣は否定の立場でありました。なぁ」
「えぇ」「首相の独断だった」「責任転嫁など、恥を知るべきですぞ」
「貴様らもか。何故だ?私は貴殿らを友人だと思っていたのだぞ!」
「何がおこってる?」「どういうことだ」「何も聞かされていないぞ」ザワザワ
ーーー
パンパン
おや、軽く叩いたつもりだったのですが。随分と響きますね。ですが、皆さんが落ち着いたようで何より何より
「ウェデル・アーデルハイトか。一応命令する。皇帝陛下に任命された首相が、計られている。大臣達を逮捕せよ。首相命令だ」
ニコニコ
「何故動かない?」
私は首相の部下ではなく。皇帝陛下直轄の存在。陛下の御意志に沿わぬことはできません。
「ふふふ、やはり陛下か。60年だぞ?60年間王国と陛下に忠誠を誓い続けてきたにも関わらずこの仕打ちか。陛下は帝国を築かれて変わってしまった。猜疑心の塊だ!それでも、それでも、かつてのお姿に戻られると信じて、、、」
陛下への誹謗、見過ごすことができませんな。不敬罪として連行させていただきます。
「ふっ、流石の陛下も議会で処刑を行わない理性はあったということか」
黙れ罪人。
「黙まるのは、貴様だ。入れ!」
ドタドタ
なんの真似ですかこれは。
「ウェデル・アーデルハイト。我々は参謀本部直属第1憲兵団である。貴殿を国家反逆罪で逮捕する」
これは、異なことを。国家は、すなわち皇帝陛下のこと。つまり皇帝陛下の御意志で動く私を止めることこそ国家反逆である。
そこを退け!!
ーーーーーー
ーーーー
ーーー
おやおや、まぁ、まぁ、きな臭くなってきました。
別の者たちはどうなっているのでしょう。
ーーー
「あーあ。僕の服が汚れちゃったじゃないか。
スパイなんかの血でさぁ」
「嫌だなぁ。替えの服持ってきてもらわないとなぁ」
「おーい!おーい!終わったよ。死体の処理と替えの服持ってきてよ」
「了解しました。今向かいます。大尉」
「いいねぇ、速いねぇ、少尉」
「あれ替えの服h」
バンバン。バタン
「悪魔が」
ーーー
「お迎えにあがりましたウェデル大尉殿」
「あぁ、ありがとう。死体の処理頼むよ。特に父親の方は丁重にね」
「ひとつ、お聞きしたいことが」
「構わないよ。なんだい」
「なぜ、いつも笑っておられるのでしょうか」
「そうだね。死ぬ人が最期見る顔が見ず知らずの怒った顔だったり、泣いた顔だったら嫌だろ。だから笑うのさ」
「・・・私には、まだ理解の及ばぬところです」
「そうかい。そうだね。分からない方がいいかも知れないね。、、、すまない。喋ったら喉が渇いたよ。飲み物をくれないかい?飲み逃してしまってね」
「はっ!少々お待ちください。さぁ、こちらをどうぞ。紅茶が入っております」
「ありがとう。うっ。随分と渋いお茶だね」
「・・・」
「どうかしたn」っゲホ!ゲホ!
「申し訳ございません大尉」
「酷いじゃないか、、。こんな毒を使うなんて。もっと優しい毒を使」
ーーー
ガシャン
「なんの真似ですか大佐」
「あぁ。すまない」
「急に私の手を叩くなんて。虫でもとまってま、し、た、か、、、。なぜ、あの肉を見ておられるのですか。そのような顔で、。私が口にしようとしたあの肉を」
「・・・」
「まさか、、、。なぜです!?」
「帝国の為だ」
「ひっ」
ガシャン。ドタドタ
「そこを退け!やめろ放せ!」
「暴れるな!ランドルフ」
「お前達は、クルスト。アレン。何故ここに。うっ離してくれ。殺される。なぁ、僕達は同期じゃないか!助けてくれよ!」
「「・・・」」
「なんで無視すr」
「お前達、すまない。私の覚悟が足りなかった。そして、ラン。いや、ウェデル大尉。すまない。せめてもの情けだ。一瞬で終わらせてやる」
「嫌だ。嫌だ!なんで!やめてください!大佐!大佐!!まだ、死にたくない!死にたくないです!教官!教」うぅーーう
「黙れ、ラン。いやウェデル。これ以上俺たちの教官を困らせるな」
「すまないウェデル。だが貴様はもう一度死んでいるのだ。私の教え子はもう、死んでいるのだ」
バン
ーーーーー
おやおや。うーん。なるほど。なるほど。
悪逆なるウェデルという組織は消えた。
暴君も、帝国を去り。共和国は成った!
偉大なる人民の勝利!首相と軍の勝利である!
首相は偉大である!軍も偉大である!
軍事政権よ永遠なれ!
共和国万歳!自由と権利万歳!首相万歳!
今日も祖国はユートピ啞である!!
ps.「結局、何が変わったんだ?」元皇帝の側近にして最高の友人!ウェデル・フォン・アーデルハイト




