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日常崩壊
2050年、東京都渋谷区、スクランブル交差点にて大きな穴が開いた。その穴は楕円を描いており、中はどんよりとした赤と青に包まれ、奥行きはわからなかった。その穴は早朝に開き、第一発見者はあるサラリーマンだという。そのサラリーマンは少し太り気味で、冬の寒さから赤いマフラーを着ていた。かけていた眼鏡は曇っており、いつも通りに交差点を渡っていた最中に、穴から一本の赤い槍が男の脇腹を刺した。男は、体の力がスルスルと抜けていくさなか、かろうじて右手で眼鏡を外した。その時、男は紫にうごめく穴の中で、赤い目と鋭い牙を持つ悪魔が高らかに笑っているのを見た。そうして、男は力尽き、地に伏した。彼の赤いマフラーは、まるで反撃の狼煙をあげるかのごとく、なびいていた。




