↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【改訂版】転生したら姉の遺作BLゲームの世界の悪役魔王だったので無限の天啓で魔王国を救います  作者: 瀬那つくてん(加賀谷イコ)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/6

2.神との約束

 この空間、神と名乗る少女、少女の言葉、すべてにおいて紫音には現実味がなかった。死後の世界なのだとしたら、現実味がなくても当然なのかもしれない。夢なのだとしたら、最期の瞬間に望んだ通り、明晰夢で自由に夢を操っているのかもしれない。そう考えつつ、紫音は少女の次の言葉を待った。

「実は、あたしの世界のこと、あなたは少しだけ知っているの」

「そうなの?」

「ええ」

 少女は微笑んでいるように感じるが、その詳細を話すつもりはないらしい。つまり、話せないのだ。深追いはするまい、と紫音は小さく頷いた。紫音の気遣いに気付いた様子で、少女はまた微笑む。

「あたしの世界には、あなたの絶対的な味方がいるわ。その子が教えてくれるはずよ」

「絶対的な味方?」

「会えばわかるわ」

 それについてもここでは話せないらしい。神の言う「絶対的な味方」に懸けるしかないようだ。すぐに見つかるといいのだが、と紫音は祈らざるを得ない。

「あたしの世界はいま、再生を始めようとしているところよ。あなたの魂を送ることで、再生への歯車を回すわ」

「取っ掛かりが必要ってことなのかな」

「ええ」

「僕は何をすればいいの?」

「特にこれと言って」

 あっさりと言う神に、紫音は拍子抜けしていた。世界の再生のための転生なのだとしたら、転生先でも何か役目があるのだろうと考えていた。そんな紫音の表情に、少女の声はくすりと小さく笑う。

「あなたは第二の人生を楽しんでいればそれでいいわ。あなたの絶対的な味方がそう望んだから」

 とにかく取っ掛かりがあればいいということか、と紫音は考える。きっかけさえあれば、あとはこの神が世界を再生することができるのだ。紫音はその取っ掛かりのために転生する。その後の役目はあまりないのだろう。どんな世界の誰になるのかはわからないが、新しい人生を楽しむだけでいいのなら、まさに夢のようなことだろう。

「申し訳ないんだけど、あたしのチート能力は先のふたりに授けてしまったから、あたしからあなたに授けられる特別な力はないの」

「そう……」

 転生と言えばチート能力。紫音は少しだけ期待していたため残念ではあるが、転生という稀有な経験をできるならそれで充分という気もした。

「チート能力には劣るけど、ひとつくらいなら能力を授けられるわ。何か望みはある?」

「うーん……魔法を使えるようになりたいな」

「いいわ。無双できるくらいの魔力を授けてあげる」

 無双も異世界転生には付き物だ。チート能力とは違うようだが、新しい人生で魔法を楽しむことができることには心が躍った。魔法といえば、すべてのオタクの憧れ。それだけですでに恩恵を受けたようなものだ。

「あなたの魂の流入で、再生の歯車を回せるはずよ。あとはあたしの役目ね」

「きみの世界は荒れているのかな」

「取っ掛かりができれば、世界の中身も正常に動き出すわ。暮らす分には問題ないはずよ」

「そう」

 この神の世界がどんな世界であるかはまだわからないが、神は「第二の人生を楽しんでいればいい」と言っていた。紫音の絶対的な味方がそう望んだからだ、と。きっと、捨ててきた人生に比べれば、どんな世界であろうと天国のようなものとなるだろう。

「あなたの絶対的な味方は、あなたから探さなくても向こうが見つけてくれるはずよ。あなたは、長篠紫音の名を消して、まったく別の者として、自分の望むように生きられる人生を楽しんで」

「……それこそ、僕の望んでいたことだな」

「よかったわ」

 温かいものが手に触れる。両手を包み込む優しい温もりが、新しい門出を祝福しているようだった。

「長篠紫音。あなたにこの世界の命運を託したわ。どうか、あたしの世界を救って」

 体がふわりと浮かび上がる。吸い込まれるような感覚に身を委ねているうちに、白い影が遠くなっていく。心地良い微睡(まどろみ)が、紫音の体を浚っていく。

「また会えたら嬉しいわ」

 温もりが手を離れ、夢に呑まれるように、長篠紫音の意識は溶けていった。




   ◇  ◇  ◇




 とぷん、と水に落ちる感覚で意識を取り戻す。予想外の事態に、肺の中からすべての空気が抜けていった。このままでは息ができなくなる。

 大きな手が襟首を掴んだ。流れに逆らう力強さが、一気に水面へと引き上げた。

『――、しっかりしろ!』

 影が上から覗き込む。短い呼吸を繰り返しながら開いた瞼は、水底へ引き摺り込まれるように閉ざされていった。




『愛してるよ、――。きみが何者でも、何者でなくても』




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。