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「まぁいい。今日は本当におめでとう。レイバ」
「ありがとう、アルバ」
「みんなで一緒に世界を回っていたころか一番楽しかった。もう、あのときは戻ってこないのだと思うと少し寂しいが、みんなのおかげで無事に魔王城すらも攻略することができた。
本当はみんなのおかげなのだ。それだから、俺はみんなに恩返しがしたいと思っているし――」
あらかじめ考えていたことを喋ろうとした。
が、「仲良くしたいと思っている」と言おうとしたときに詰まった。
これを言うことがどういう意味を持つのか、俺が一番わかっている。
なによりも臆病なのは俺だ。
怯えられることはいいことではない。
「……まぁ、話ばかりしても無駄だな。レイバおめでとう」
「ありがとうございます。アルバ」
「……プレゼントもあるんだ」
俺は持ってきた宝玉をレイバの目の前に出す。
それは拳ほどの大きさがあって、おそらく数十億にも及ぶ価値がある。
もう俺にはこんなもの必要ないんだ。
「こ、こんなの受け取れるわけないです……あ、受け取れるわけないよ」
「受け取ってほしいんだ。なんにも使い道がないから、誰でもいいから受け取ってほしかったんだ」
「アルバ……アルバ、なんか……」
レイバはなにかを言いかけてやめた。
なんだ?一体なにを言おうとして止めたんだ?
俺はその言葉の先が気になって仕方がなかった。
が、それは沈黙になってしまう。
「……」
「まぁ、いい。とりあえず、ここに置いておくぞ。俺はもう帰ることにする。もしも、もしも本当に必要ではないんだとしたら他の人間にでも渡せばいいはずだ。それでいい」
「アルバ……もう帰るの?」
俺がこの場に居ても誰も嬉しくなんてないだろ。
それならば俺がこの場から去った方がいいはずだ。
もう、俺が誰かと話そうとしたこと自体が間違っていたんだ。
俺はもう孤独の中で死んでいくしかないみたいだ。
「帰る。また、レイドボスが来たときには連絡すればいい」
「……」
「またな。まぁ、また会うことがあるのかはわからないが」
もう二度とこんなパーティー開くものか。
このホテルにいる間もずっと誰かに監視されているような気がする。
本当に俺が居るべき場所はもうここにはないのだ。
まるでモンスターかなにかのように扱われるしかもう俺には道がない。
俺は瞬間移動をして、魔王城まで戻ってきた。ここには俺以外の誰もいない。それは痛いほどの孤独だったが、無駄な心の波立ちがないのはそれはそれで楽だった。なにかを悩む必要なんてどこにもない。なんにも心配するようなことはない。孤独にさえ耐えられればそれでいいのだ。
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