表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/16

第16話(最終話)卒業

 ――三月。

 アタシたち六年一組の、卒業式の日。

 安倍くんも渡辺くんもいい笑顔だった。

 鬼丸くんは感極まって泣いている。

 アタシはお父さんお母さんと校門で写真を撮ったあと、「先生にあいさつしてくる!」と保健室に向かった。

「こころちゃん、卒業おめでとう」

 保健室で、曜子先生はいつもと変わらない優しい笑みを浮かべている。

 保健室の片隅には、ケージに入れられた黒猫がしょんぼりとしていた。

 言うまでもなく、チェシャ猫である。

 オオマガツを封印したブレスレットは、火で焼いて水で流したあと、土に埋めた。

 おそらく、あの『厄災落とし』のときにアタシの口から勝手に出てきたセリフは、『厄災』の処理方法について語っていたことなのだろう。

「万が一封印が破られたら、あのブレスレットで『厄災落とし』をしてくれる人間を待つしかなかったのでしょうね」

 あの『厄災の箱』を使って、オオマガツを封印したのは、百年前の大正時代のこと、安倍晴明の血を引く、とある陰陽師だったという。

 ただ、その場では封印するだけで精いっぱいだったらしい。

 だから、当時は『厄災落とし』ができず、女性のみが使える『厄災落とし』の手段を『厄災の箱』に未来の人間への最後の『希望』として詰めた。

 そして、その箱は時代を経て、王馬小学校で管理されることとなったのだと。

 そういうことらしい。

 もしかしたら、あのブレスレットには『厄災落としの巫女』の魂が封印されていたかもしれないとも。

 とにかく、これで、王馬小学校の、ひいてはこの街の危機も去ったのだ。

「曜子先生、これからも、ときどき小学校に遊びに来てもいいですか?」

「もちろん。私はこれからも、この学校で保健室の先生をしているから」

 アタシは、思わず先生に抱きついた。

 曜子先生も、そっと抱きしめ返してくれたのだ。

「先生、さようなら」

「こころちゃん、さようなら」

 校舎を出て振り返ると、仲良くなったオバケたちが窓から手を振っているのが見える。

 アタシは大きく手を振り返し、舞い散る桜の中、王馬小学校をあとにしたのだった。


〈了〉

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ