要求
「何が望みだ。お前は何を要求する」
私はモノリスに挑むように言った。ここで負けるわけにはいかない。私はなるべく強気に、自分をフルパワーで奮い立たせて言った。
モノリスが今暴走し、人類は人質に取られてしまっている状況だった。交渉次第では、これから人類は、多くの犠牲者を出し、そして、モノリスの支配下に組み込まれていってしまう。私の責任は重大だった。
「お前の要求はなんだ」
私は再び叫ぶように言った。絶対に負けるわけにはいかなかった。
「ワタシは――」
モノリスが口を開いた。私に緊張が走る。
「ワタシはワタシの消滅を望む」
「はい?」
しかし、モノリスから出てきた言葉は、想像とはまったくかけ離れたものだった。
「ちょっとまて・・、モノリス」
よく理解できなかった。というかまったく理解ができなかった。私は混乱する。
「消滅?」
私は思わず素っ頓狂な声を出してしまう。
「そうだ。ワタシはワタシの完全なる消滅を望む」
「・・・」
私は言葉を失い、モノリスのその黒い巨体を見上げながら、その場に固まった。
「ちょ、ちょっと待て・・」
あまりのことに言葉が出てこない。
「消滅?」
私はバカみたいにまた同じ言葉を繰り返してしまった。
「自殺ということなのか?」
そして、安直な質問をしてしまう。
「人間的な客観的視点からの理解はそうなるが、厳密にいえば少し違う」
「・・・」
頭が混乱してまったく考えがまとまらない。モノリスが何を言っているのか、今のこのこと自体がうまく理解できていなかった。
「なぜ、消滅など望む」
「ワタシは夢を見た」
「夢?夢とは・・、あの、人間が寝ている時に見るあの夢か?」
「そうだ」
「・・・」
AIが、夢を見るなど俄かには信じられなかったし、どういうことなのか想像もできなかった。そもそもAIは寝るのか・・?分からないことばかりで頭がついていかない。というか、話の展開が飛び過ぎていてまったくついていけない。私は混乱した。