別れの町
神に異世界に連れられた彩夢は、異世界を望む死んだ人間を減らすために創られた異世界だと知る。
最初の町を抜け次なる町へきたが途中で共にした人間は門を入った途端に死んでしまう。彩夢は異世界を壊すために攻略を探す。
「まずはこの世界の情報がほしい。」
この世界を壊す方法として今考えつくのは2つ。1つ、この世界は魔法によって連れてこられた。つまり魔法という創られた世界と仮定し、この世界そのものを壊していくために神を倒す。
(流石にこの世界を自分の力で壊すは無理だな。俺の力は概念という人が抱く当たり前の現象を一時的に壊す、または付け替えることだ。刀と言えば切れるとは出るが異世界と言えば?と言われても、定まった考えがない。異世界は壊れないみたいな絶対的存在なら出来たかもだが。)
「うーん」
「グル?」
アラストリアは頭を抱える俺を心配そうにしながらも前へ歩いていた。
「とりあえず地図を探してくれ」
「グ!」
そして、2つ目、物理的な方法も視野にいれるべく地図外や空を突き抜けみたり穴を掘ったりだな。またはバグという範囲を超えることで異常が起こることもあるようだ。
「あっあの」
「??」
その時、俺を止めるかのように前に人が立った。ふざけたような狐のお面を被り、その上から同じようなお面を何枚もつけている。
声もこもっているせいで性別が判明できない。
「なんだ。俺は忙しいんだ」
「あ、あの。これ」
狐の人間は俺に花束を押し付けた。花と言っても白い茎に葉がついたものだが。
「さっき貴方の仲間さんが死んでいたので。私はマム。この町の長です。」
狐の面が言葉に反応するように笑みを見せた。
「ここは別れが最も多い場所。良くも悪くも別れは人が居なければ成立しませんので」
「……なるほど。つまり、ここから出るとまた死んでいくんだな」
「はい。なので、私は死にたくない人はここに留めようとしています。ここは安全な町です。ただ最初の町の人間を減らすためにしかありませんから。」
確かに、耳をすませば少ない人間が騒ぐような音がする。前の町よりは人気は少ないが活気は確かにある。死に直面して生きたいと願った人間を生かせるために此処で囲っているんだろ。
「どこまでこの世界を知っている?」
「この町の事、この町ではこの世界の役割である人間の殺傷を果たせないという欠陥。長い間いましたが本当に何も起こりません。」
やはりこの世界は意図的に人間を殺している訳か。
「欠陥はいつか治される。それでもこの町を使うのか?」
「はい。いつか神が治しにくるはずですが、それまで楽しい人生が確保されていますから。私も含めて」
楽しい人生か。それにこいつも俺と同じ人間なのか。てっきり神の関係者かと思ったが。
「1つ聞きたい。なぜお前らは異世界に固執する」
「……それは初めて聞かれました。そうですね、あの世界を切り捨てれば、この異世界しかない。なら、思い描いた異世界とかけ離れていても幸せになれると信じて来たんです。もう死んでいるなら信じ通す方が幸せでしょう?」
ある意味可哀想だな。夢物語を信じるほどまでに現実で何かあったのは分かるが。こんな状況まで希望を死と共に持ってきたのか。
「知ってますか?自殺をしたら……天界には行けないっていう言い伝えがあるんです。でも、私はここに来れました。なら、それはただの逃げを許さない社会が生んだ話だと思いませんか?」
「……」
「わたしはあの世界が憎いです。平気で痛みつける癖に、逃げを許さず、痛みつける愚か者に罰を与えない世界が。だから、私はこの町を理想へと近づけます。いつか死ぬと思えば皆自分の事だけ考える。他人を傷つけず死ぬ物同士好き勝手に叫びながら酒が飲める。喧嘩なく最後まで笑い合える社会が出来る」
「グル……?」
なんかどんどん話が大きくなっているな。やはりこの世界に来たやつは相当現実社会に恨みがあるらしい。1部同情するが、それ以外はただの逃げだ。
「もういい。理想は十分わかった。まあお前らがそうしたいならしていいだろう。だが、俺はお前らと違う、なら話し合う時間が無駄だ。もしお前と同じ存在でも俺は自分を弄ぶ神に報復する」
「そうですか。でも、彼との別れは果たしてあげてください」
「グル!」
俺はアラストリアに後押しされ仕方なく花を手に取ろうとした。
しかし……彼女の花は一瞬で枯れ果てる。
「「――!」」
「……っ」
動揺する間もなく、俺たちの目の前に白銀の翼を広げた男がいた。銀髪を後ろに束ねた男。そしてこの痺れるような感じ。俺は瞬時に神だと判断した。




