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 うーん、何だかすっきりしない。


 昨日は日本に戻ってからあまり何もやる気が起きず、アルクがお菓子を作っているのを横でぼーっと眺めていた。


 でも途中でお菓子作りの道具で欲しい物があるってアルクが言うからそれをネットで探したり、大きい鍋とかお皿とか、ついでと思って色々注文した。結構いい金額になって焦ったけど、まあたまには散財もいいかな。


 相変わらず家賃、光熱費はかからないし、食料品もほぼガイルのものを使ってるからほとんど出費がない状態が続いている。使うといったら日用品とかお菓子くらい?


 逆にお給料はちゃんと毎月振り込んでもらっているし、残高が増える一方っていう嬉しい状況だ。本当にありがたいよね。


 あとアルクの動画収益も何気に凄いし……また新しい動画アップしとこう。


 夜はアルクと新しいお菓子の情報を探したり、動画を見たりゲームしたりして過ごした。ごろごろ最高~。で、その日はそもまま寝たんだけど……。


 翌朝、なんかアルクの事とかガイルの事とか、色々ぐるぐる考えたまま寝たのが良くなかったのかな。


 夢を見たような気がするけど内容はよく覚えていない。


 ただ起きたら、すごく悲しい気持ちだけが私の中に残っていた。


 沈んだ気持ちが顔に出ていたらしく、部屋を出たらアルクに心配された。「どうした?」って聞かれて抱きしめられたから私もぎゅうって抱きしめ返してアルクの胸に頭をぐりぐりした。


 アルクはちょっと驚いていたけど、うん、なんか落ち着いたかも。


「……おはよう、アルク」


「おはよう、リカ」


 大丈夫、アルクはここにいるって何故かそう思った。




 いつも通りに朝ごはんを食べて、ガイルの家でお茶の準備をしていたらみんなが順番にやってきた。


 いつも通りの朝だ。


 だけど今日は予定の確認の前にマリーエさんから謝罪があった。妹さんの事とか色々ね。で、改めて感謝と今後もよろしくお願いしますって丁寧に頭を下げられた。


 私が勝手に協力するとは言ったんだけど、きっとマリーエさんは半信半疑だったんじゃないかなって思う。それが昨日の話し合いとかで計画が一気に具体化して、初めてライナスとの結婚以外の未来を想像できたんじゃないかって。うん、良い傾向だよね。


 それからエミール君なんだけど、お父さんと早速話をしたらしい。


「父上の許可が出たので婚約者の件はお引き受けします」


 許可が出たんだねぇ。


「それは良かった」


 ロイさんは笑っていたけどマリーエさんはちょっとあわあわしていた。


 気になったので妹さんには説明したのか聞いたら頷いて、その時のことを話してくれた。


「エミール様については領主様のご子息であることもすべて伝えました。初めは何の冗談だと怒られましたが……本当だと知ると驚き過ぎてその、気を失いました……」


 ああ、うん、なんか思っていたより衝撃が大きかったみたいだね。ちょっと心配になってきたかも。


 あと私の事は詳しく話さなかったそうで、現在護衛しているとだけ伝えてあるらしい。ロイさんについては王都の官僚だと説明してあるそうだけど、領主子息に官僚に謎の護衛対象なんて組み合わせ、怪しすぎるでしょうに。


「順調ですね。根回しも進んでいますし、この調子で行きましょう」


 ロイさんはみんなにそれぞれ指示を出し、今日はこのまま出掛けるらしい。私達はすぐに動ける指示ではなかったのでいつも通りにダンジョンに行くことにした。


 ダンジョン探索はそろそろ目標の二十階層が近い。アイテムの取りこぼしがないように慎重に進んでいるけど、うん、ロイさんがいないと静かだね。


 午後もしっかり探索して、ポーションも獲得、ついでに宝箱もひとつ発見できた。


 なんとですね、今度は杖が出ました!


 長さは三十センチくらいなんだけど、先の方にこぶし程の大きさの琥珀色の石がはめ込まれ、その周りに装飾がされていてる。なんかいかにも魔法使いの杖って感じだ。


 そういえばこちらの世界って魔法使いみたいな戦い方をする人はいないんだよね。アルクが使ってるような風とか水とか火などの攻撃は珍しいというより見たこともないもので、だからアルクの戦い方を見た人はみんなすごく驚く。


 神力で風を起こすとか火を灯すとかを出来る人はいるんだけど、力が少し強いくらいではアルクのような攻撃に変えることはできない。威力が全然違うそうだ。


 まあ、たまに応用してうまく使う人もいるようだけど、戦いにおいての神力の使い方は身体能力の強化が一般的だ。


 ちなみにアルクなんだけど、最近はゲームを参考に技を使っているらしい。なんか見たことあるなぁって思ってたけどそういうことか。器用だし実行できるのが羨ましいよねぇ。


 それで杖なんだけど、エミール君に鑑定してもらったら攻撃と防御の両方の機能を併せ持っているらしい。え、もしかして凄くいいんじゃない、これ?


「ええとですね、杖は稲妻の広範囲攻撃と使用者の周囲に防御膜を張ることが可能だそうです。使用者の神力によって形状変化し、威力も変わるとあります」


 へー、この間の剣と同じでこれも大きさが変わるらしい。さっそく使ってみることになり、危険性も考えてやっぱり最初はマリーエさんが使うことになった。


 騎士のマリーエさんが杖を持つとちょっと違和感があるね。本人もしっくりこないらしく、しきりに持ち方を変えていた。とりあえず神力を込めてみることにしたのか、左手に持った杖が一瞬輝いて、一メートルくらいの大きさに伸びた。


 おお、なんかそれっぽい。


 敵はいないから前方に攻撃を向けたんだけど、地面をいくつもの稲妻が走ったのが見えた。


「対象がいないので威力は不明ですが広範囲に有効なのは間違いなさそうですね。ただ、個別に的を絞ろうとするとかなり難しいかもしれません」


 なるほど。ノーコンの私にぴったりな気がする。


「すみません、私に攻撃してみて頂けませんか?」


 防御を確かめるつもりのようで、マリーエさんがエミール君にお願いしてきた。


「分かりました。寸止めしますので動かないで下さい」


 こういうのロイさんなら喜んでやりそうだなぁって思わず考えてしまった。


 エミール君が構える。


「いきますっ」


 上段から一気に振り下ろされる剣先。


 カキィーン。マリーエさんの周囲に薄い膜が揺らめき、剣をはじいた。


 すごい、ちゃんと防御出来てる。


 その後も珍しくアルクが自分も攻撃してみたいと言い出して試してみたりと検証を続け、結果、なんとなんと私が持たせてもらうことになりました~!


 使う人が他にいなかっただけなんだけど、それでもいい。やったー!




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