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 ロイさんがポーションを欲しがったのは、別にお金に変える為とかではなく純粋な興味からだそうだ。まあお給料はいっぱい貰ってそうだよね。


 もともとロイさんは薬の研究をしていたそうで、今でも時間を見つけては色々やっているんだとか。


 殿下とは幼い時からの付き合いで、ロイさんが頭脳派でありながら戦闘も出来てコミュニケーション能力が高いことに目を付けられて色々仕事を押し付けられているんだって。


「私は研究だけしていたいんですが、殿下の無茶振りがひどいんです……顔が目立たないからって諜報活動しろとか……振り回されてばかりです」


 うなだれるロイさん。


 それなりに苦労しているらしいけど、だからといってここで愚痴られても困るんだけど。


 あと確かに目立たない顔なんだけど、ロイさんって別に不細工とかではないんだよね。


 やたらと私の周りは顔の良い人が多いけど、みんな彫が深くて人目を引く容貌をしている。対してロイさんはインパクトのない控え目な顔っていうのかな。一つ一つのパーツは整っているし良く見れば綺麗な顔なんだけど、何故か印象が薄いっていう不思議な感じだ。まあ近くで話していても緊張しないでいいから私は助かるけどね。


 それで薬に造詣の深いロイさんの解説によると、そもそもポーションというのはダンジョン内でドロップしたり宝箱から得られた薬のことを指すんだそうだ。人が作る回復薬などもあるそうだけど、そういうものはポーションとは呼ばないんだって。


 あと回復や毒消しなど色々種類があると思っていたんだけど、この世界のポーションは一種類しかないらしい。これ一本で回復、毒消し等複数の効果がある万能薬なんだそうだ。


 前に冒険者の人達にはよく分からないであげちゃったけど、全部一緒だったんだって初めて知った。あ、もちろんちゃんと効果があるかは聞いてから渡したよ。みんな大丈夫としか言わなかったんだから。


 ポーションの効果は一般に出回る薬とは比べようもないのでもちろん人気は高い。だけど魔物を倒したりする必要があるのでダンジョン内でも手に入れられる数が少なく、市場に出回る数が少ないので大変高価だ。その為、一部権力者やお金持ちだけが独占している状態となっているのだとか。


「以前から一度は本物を手にして研究してみたいと思っていたんです」


 ふーん。


「そう言えばある高貴なご婦人は、ポーションを肌に塗って張りや輝きを取り戻したとか……」


「なにそれ詳しく!!」


 今度からポーションはもっと大事に扱おうと思う。




 探索から家に戻ってきた。


 基本的に夕方以降はそれぞれ自由行動だ。夕飯を一緒に食べることもあるけど今日はこのまま解散ということになった。


 ロイさんはどこに泊まるのかなと思ったけど、ちゃんと滞在先は確保してあるらしい。また明日も家に来るそうなので、嫌がるアルクになんとか頼み込んでロイさんも家に入れるように印をつけてもらった。


 アルクはむぅってしかめっ面してる。本当に嫌いだよね、ロイさんの事。相変わらずの「アレ」呼ばわりだし。


 ロイさんは満足げに「ではまた明日」と去って行ったけど、昼間の話にあったように明日には本当に対策がたてられるんだろうか。あまりにも軽い調子でちょっと心配になってしまった。



 さて、エミール君とロイさんが帰ったので私は夕食の準備だ。


 洋食系がしばらく続いたので和食が食べたい気分だし、じゃがいもが沢山あるので今日は肉じゃがにしようと思う。


 使うのは鋳物のホーロー鍋。これで無水肉じゃがを作る。鍋に油をひき、切っておいた玉ねぎ、人参、じゃがいも、その上にお肉を入れてその上からめんつゆを投入。白滝とか入れても美味しいけど、今日はないので省略。


 蓋をして火をつけ、蒸気が出たら弱火で二十分。あとは軽く混ぜてもう一度蓋をして、火を止めた状態でしばらく置けばオッケー。


 手間が少なくてめちゃくちゃ簡単だ。だけど野菜の甘みが出てじゃがいもに味もしみしみですごく美味しいんだよ。


 私は食べるのは好きだけど、料理がすごく得意という訳ではない。食べたければ頑張って作るけど、なるべく簡単に美味しい物が食べられるようにならないかなって思うから頼れるお鍋とか調理器具は大好きだ。見るのも使うのも楽しいしね。


 あー、またお鍋とか見に行きたいな。鞄にそのまま入れておきたいしもっと数が欲しい。あと食器も欲しいかも。最近人も多いしもう少し増やしたいなって思うんだよね。うー、お買い物したいよぉ。


 マリーエさんは肉じゃがは気に入ってくれたようだ。結構和風な味付けが好きみたいでおかわりまでして食べてくれた。美味しいっていっぱい食べてくれるとすごく嬉しいし、また頑張って作ろうって思うよね。今度は何がいいかなぁ。



 ご飯の後は私は日本の家に戻る。私の部屋から扉で移動するんだけど、マリーエさんは特に追及しないでくれている。多分何か気付いていると思うし、別に日本のことを話してもいいとは思ってるんだけどね。


 ただ、異世界とか私もよく分かってないしうまく説明できる自信がない。マリーエさんなら「リカ様ですから」で済ませてしまいそうな気もするんだけど……。


 でね、戻ってそれぞれの時間になるんだけど、今日はさっき聞いた話をさっそく実践してみることにした。だってポーションでお肌ケアだよ? これはもう試すしかないでしょう。


 二十代も後半になってくると色々気になるところが出てくる。それに私は乾燥肌だし、改善するといいなぁって思うんだけど、さてさて。


 まず、ロイさんに教えてもらった通りに原液を薄めて使ってみることにする。


 ポーションには効き目の高い低いとかの種類もないから、使う時はこうして薄めて調整するんだそうだ。原液はかなり高濃度だから健康な人にはかえって毒になることもあるんだって。それってちょっと怖い。


 一応水道水じゃない方がいいかなと思ってミネラルウォーターを使ってみた。本当は精製水とか不純物の入っていないものがいいんだろうけど無いものは仕方ない。


 うん、こんなものかな。旅行用の空の詰め替えボトルがあったのでそれを使ったんだけど、透明なボトルの中にはほんのり緑色の液体が入っている。もとのポーションが薄い緑色なので、薄めたら本当に色がついているかどうかというくらいの色になった。これで本当に効果あるのかなぁ。


 ちょっと疑いながらもまずは手の甲に少しだけ液を付けてみる。さらさらなテクスチャー。刷り込むとじんわり肌にしみ込んでいく感じがする。


 モミモミしながらふと肌を見たら……なんかここだけ、肌が輝いてる?


「おおっ!?」


 触ってみたらすべすべもちもちで肌のトーンも上がってるし、え、なにこれ凄すぎない?


 効果あり過ぎなんですけど~!




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