表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

78/215

78


 さて、一応偉い人達だしあまり失礼なことも出来ないよねって思っておもてなししたけど、結構気疲れしてしまった。うん、もうあんまり来ないで欲しいな。


 あれから仕事もひと段落して、昨日やっとアルクと一緒にバレンタインチョコを買いに出掛けたんだけど、いやもうすっごく楽しかった。


 デパートの特設会場に行ったんだけど、私もアルクも大興奮。普段見かけない海外のお店もあって二人で会場を端から端までぐるぐる周ってきたよ。


 ああいう場所って男の人って少ないし、ただでさえアルクは目立つんだけど、本人はそんなのお構いなし。お店の人に色々質問したりして、とても楽しそうだった。それにアルクがいるせいか、私もやたらと試食を勧めてもらえてちょっと得した気分だった。


 二人であれはこれはと買う物を選んだり、イートインの限定メニューを食べたりととにかく大満喫。買い過ぎてちょっと予算オーバーしちゃったけど、まあ仕方ない。大満足です。


 で、帰ってからはチョコを食べながらアルクと今後の事を相談した。


 それでね、やっぱり引きこもりはしばらくお休みして出掛けたいという話になった。


 のど元過ぎれば何とやら、ではないし危機感がない訳ではないよ。だけどやっぱりもったいないし、この世界を堪能したいって思う。


 でもそれには、私の身をいかに守るかが問題だ。私って戦闘能力皆無だからねぇ。また誘拐されたり襲われたり、何か不測の事態になった時にどうするか、どう備えるか、なんだよ。


 そうしたらアルクはちょっと考えて、また倉庫の方に行ってなにやらごそごそやって戻って来た。


 そして差し出してきたのは……「腕輪」かな?


「護身用の腕輪だ。これも以前ダンジョンで見つけた。ただ、あまり威力は強くない。それと何度か使うと壊れてしまう」


 細めのバングルみたいな感じで銀色のシンプルな造りだ。表面に文字のようなものが細かく掘ってあって模様の様にも見える。


 アルクによると腕輪を付けている人に向けられた攻撃をはじいてくれる効果があるそうだ。ただし、あまり大きな攻撃は跳ね返せないのと、いつ壊れるか分からないのが欠点とのことだった。恐らく数回は使えるだろうってことだけど、それが三回なのか五回なのかは使ってみないと分からないらしい。


 でね、アルクが提案してきたのは、ダンジョンに行ってこの腕輪の上位アイテムを見つけようというものだった。実は同じダンジョンで見つけたことがあったようなんだけど、あげてしまったんだって。こんなことならとっておけば良かったって言ってたけど、それは仕方ないよね。


 だけどダンジョン! ついに行けちゃうのかな。


 私としては、ダンジョンはすごく興味があった。それに出来れば収納鞄が欲しい。容量大きめで時間停止機能付きのやつ。腕輪と両方、見つけられるといいなぁ。



 そんな訳で、まずはマリウスさんに相談することにした。


 アルクが覚えていたダンジョンは、ガイルから西に行った中央領との境界に近い場所だった。前に行ったのはおじいちゃんと一緒の時で、かなり前の話だそうだ。だから現在がどういう状況かを確認しないといけない。


 忙しい仕事の合間に時間を取ってもらったんだけど、マリウスさんはダンジョンのことを知っていた。


「イスカのダンジョンですね。賢者様の最高到達記録が残っていますよ」


 到達記録? どういうことだろう。


「ダンジョンにも色々なタイプがあるのですが、ここは地下への階層が深く続く造りになっています。そして未だに最下層までたどり着けた者がいないんです。賢者様達が潜った二十階層の記録は現在も破られていません」


「すごく難しいダンジョンなんですか? 強い魔物がいるとか」


 そう、すっかり忘れてけど、この世界には魔物というものが存在する。


 で、魔物は通常ダンジョンにいて、外に出ることもあるけど、そういう場合は騎士団が出て討伐するんだそうだ。


「いえ、ダンジョンの難易度は低く、初心者向けとまで言われています。上層階はほぼ攻略済みで地図も作成されていますよ。ただ先ほども言った通り、階層が非常に深く、ほとんどの者は途中で引き返すことになります」


 なんでだろう。難しくないならどんどん進めばいいのにって思う。


 私がよく分からないって顔で疑問を口にしたら、マリウスさんが説明してくれた。


「食料が持たないんです。ダンジョンに入るのに持てる食料は限られます。ひと階層でもそれなりの広さがありますし、移動する為の階段にたどり着くにも時間がかかるので、行って帰っての往復を考えると潜れる階層は限りがあります。収納の力を持つ者がいれば話は別ですが、そういう者はダンジョン探索に参加することは滅多にありません」


 ああ、そう言えば収納の力はお給料の良い仕事に就けるんだよね。いくら難易度が低くても、危険の伴うダンジョンなんてわざわざ行こうって思わないのか。


「ですが、リカ様が扉を使えば食料問題は解決ですね」


 その通り。マリウスさんが言うように扉を使えば食料を持ち込む必要もないし、夜は安心して家で寝られる。これってダンジョン探索にはもってこいの力なんじゃないだろうか。おじいちゃんが記録を出したのも頷ける。


 多少心配はあるものの、マリウスさんからはダンジョン行きを了承してもらえた。私のアイテムを探しに行くという目的だけど、余計な行動するなとか言われなくて良かったと思う。


 ただ、下層に行くほど情報は少なく強い魔物がいる可能性もあるので、十分注意が必要だとは言われた。


 あとマリウスさんからはクロフトさんにも連絡を入れるようにアドバイスされたんだよね。


 行こうとしているダンジョンはガイルの管轄からは外れるらしい。クロフトさんに連絡しておけば一番話が早いから、と必ず連絡するように念を押されたんだけど……ええ、しないと駄目?



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ