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 バイスに誘拐を勧めたロイさんはひどいと思う。


「まあまあ、ちゃんとフォローはしたじゃないですか」


 そう言うけど、痛かったし、怖かったし、大変な思いをしたんだからね。みんなに迷惑も掛けたし。


「ええ、それは大変申し訳ないと思っています。その件については上司とも話し合って後程お話し合いということで……」


 あれ、ロイさんの上司ってクロフトさんじゃないのかな?


「こほん、まあそんな私の忠告もあってバイスは殺しは止まった訳です。でもですね、誘拐って結構手間もかかるし大変なんですよ。後のこともあるし、ぷすりと殺してしまった方が何倍も簡単です。しかも警備も厳しいですからね、実行にはバラバラになっていたベテラン達が集められることになりました。

 バイスは彼らに詳しい話はせず、ただ誘拐して利用するとだけ伝えていました。そして彼らはあなたを監視し、会場内で護衛の目が逸れる一瞬を狙ったんです。いやーさすがプロですね、なかなか素晴らしいお手並みでした。私もね、ちゃんと役割があったんですよ。あの時アルクさんに詰め寄ったご令嬢達を焚きつけたの、私なんです」


 えっへんって自慢されてもねぇ。この人、本当に味方でいいんだろうか。横を見たらアルクが半眼になっていた。


「事前に護衛の中に感知能力持ちがいると伝えておいたので、あなたを運ぶ為に箱を使用してくれました。ああ、感知能力に関してはもしかしたらとは思いましたが適当です。箱をね、ずっと探していたんですよ。隠されていてなかなか見つけられずに困っていたんです。ルーチェの殺害指示に箱の確保。犯罪者の一斉検挙に賢者の孫の誘拐という事実。いやいや、証拠も罪状もばっちりです」


 いやいや、ばっちりじゃないから。やっぱり私は必要があって誘拐されたってことでしょ。証拠を集める為に人を危険にさらすとか、どうなのそれ。しかも罪状ってロイさんが誘導した結果でしょう? ロイさんの罪はどうなのよ。


 そう思ったんだけどね……。


「はい、お怒りは重々承知しています。私のしたことは到底許されることではありません。私を罰したいというのであればもちろん受けるつもりです。私を死罪にというのであればそれでも結構です。賠償金には足りないかもしれませんが、私の財産もすべて差し上げます。ただ、今回あなたを巻き込んだことは私の独断です。どうか、処罰は私だけにして頂けると助かります。先ほども申し上げた通り、何かあなたのお望みがあれば極力その通りにさせていただきます」


 ロイさんは私のことをまっすぐ見て深々と頭を下げると最後に言った。


「大変危険な目に合わせてしまったこと、誠に申し訳ございませんでした。いかなる処分でもお受けします」



 ……なんていうか、本当に勝手だよねぇ。


 思わず私の溜息が漏れ、何とも言えない沈黙が部屋を満たす。



「……そんなことに、なっていたんですね」


 ぽつりとつぶやいたのはエミール君だった。


 彼はどうやら、事件については詳しく知らされていなかったようだ。


「エミール様、今回の件は極秘裏に進められていました。クロフト様へも本日になって詳細をお伝えしたのです。お二人にも、メルドラン領内で勝手な行動を取ったことをお詫びしなくてはなりません」


 ロイさんは二人にも頭を下げながら「領主様のお怒りが恐ろしいです」と言っていた。


 そっか、クロフトさんも知らなかったんだ。本当にロイさんの独断、いや巻き込まない為にわざと言わなかったのかな。自分の上司にも黙って行動してたなら本来はそれじゃまずいはずだけど、止められるのは分かっていただろうしなぁ……止めるよね?


 他に方法がなかったのかなと思うけど、頭の良さそうなロイさんが考えて実行したんだから、たぶんあの時一番成功率が高かった作戦なのかなとは思うよ。でもね、いくら大義名分があったとしても、勝手に人のこと巻き込んだのは許せない。


 事前に協力要請があったらいいのかっていうとそれもちょっとどうだろう。私は「悪い人を捕まえる為なら是非協力させて下さい!」なんて言えるほど正義感にあふれている訳でも強い訳でもないし、安全第一、自分の身は可愛い。


 そもそもロイさんって一回道で会っただけの不審者だし、協力してって言われても「何この人」って感じで終わりかもしれないしね。


 うーん、結局全部うまくいったから良かったようなものの、失敗したらどうするつもりだったんだろう。私が殺されちゃってロイさん死刑とか? 誰も得しないよねー。


 私を守れる自信があったのかもだけど、私を危険にさらしたことには変わりないし、ロイさんにとっては私より悪人たちを捕まえることの方が重要だったってだけなんだろうけど……。


 私がそんなことをぐるぐる考えている内に、紅茶のおかわりが運ばれてきた。


 なんか糖分が足りない。


 私は残っていたマドレーヌをクロフトさんとエミール君に勧めた。マリウスさんとマリーエさんは最初からずっと遠慮してるし、アルクもいいって言うから最後のひとつは私が頂くことにする。もっと沢山持ってきたかったけど、急に思い付いたからこれしかなかったんだよね。ロイさんが食べたそうにしていたけど、もちろんあげる訳がない。


 あ、そうだ。ここへ来た目的を忘れるところだった。


「あの、マリーエさんですが、今回の件は処罰無しってことでいいですよね?」


 呼び出したのはエミール君なので彼に向かって確認を取る。


「え、いえ騎士として落ち度があったことは確かですし、他の護衛騎士を用意しておりますのですぐに交代を行いたいと考えています。任命責任もありますので、二人についての処分は検討中です」


 ええー、何で。



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