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「分かった」


 アルクに向き直り、私は頭を下げてお願いした。あちらの世界に居るために、力を貸して欲しいって。アルクは今更だとか、そういうことは言わなかった。ただ、私の話を聞いて、分かったと頷いてくれた。


「ありがとう」


 感謝しかないよね。アルクには迷惑を掛けっぱなしだ。


 前に聞いたことがあるんだよ。私の世話や面倒をみたりとか面倒くさいと思わないのかって。私がおじいちゃんの孫というだけで義務感とか仕方なくとかそういうことなら申し訳ないなと思って聞いたんだけど、アルクは不思議そうに首をかしげて言ってくれた。


「私はリカと居たいから一緒に居る。それだけだ」


 私は本当に、すごくすごく嬉しかった。


 実際アルクとどこかへ行ったり、美味しい物を食べたり体験したりと二人で居るのはとても楽しかったし、今ではそれが当たり前過ぎて、今更アルクがいない生活とか想像できない。


 もしね、本当にすごくあっちの世界が危険でどうしようもないっていうのなら、家を出ないで生活してもいいかなってちょっと思ってたりする。あっちで今までみたいに生活を続けたい気持ちはもちろん強いけど、アルクがいるならいいかなって思ってるのも本当。


 日本で普通に出掛けられるなら、あっちの世界で家から出なくても別に問題はないんだよ。かなりもったいないってだけで、マリーエさんとかネロさんとかコルネさんにも会おうと思えば家で会えるしね。


 ただね、まあ引きこもりは最終手段として、少しは抵抗してみようかなーなんて思ってしまった。別に私が自分で身を守れる訳じゃないから、もちろん色々相談しないとなんだけどね。あーあ、何か都合の良いアイテムとかないものかなぁ。




 さて、決意も新たに今日の事や今後の事を改めて検証&相談です。


 今日私が誘拐された時のことをアルクは教えてくれたんだけど、私の気配が突然消えたのだそうだ。あの時、積極的なお姉さま方がアルクの視界を塞ぎ、私の姿が見えなくなった一瞬後にプツリと気配がなくなったんだって。


 私がアルクの気配がなんとなく察知できるように、アルクは私の気配をかなり広範囲で感知できる。集中すればカランの町中なら恐らく分かるだろうと言っていたから凄いよね。


 それが遮断されたのは、恐らくあの「箱」が原因と思われた。アルクもあの場で箱を目にしていて「間違いないだろう」とのことだったし、誘拐犯はなかなか用意周到のようだ。アルクのように気配を感知できる能力を持つ人は多少は存在するらしいし、誘拐をたくらむならうってつけのアイテムと言える。


 あのままずっと箱に入れられていたら、アルクは私の居場所を探すのが難しかった。だけどロイさんの手助けで私は外に出られ、そのおかげでアルクは私を見つけることが出来た。ロイさんはその辺りのことを分かって行動していたのかな。


 あとね、アルクが気になることを聞いていた。私を助け出して戻る時、兵の一人がエミール君に「アジトの制圧も完了しました」って報告していたそうなんだよね。私が居たのはただの小屋でアジトは別にあったみたいなんだけど、あの短時間でどうやって誘拐犯達の本拠地を見つけて制圧まで出来たのかって、かなり疑問に思う。


 これってさぁ、私、囮にされたってことなのかな。


 もしロイさんが本当に味方だったとして、ロイさんは私達の事をガイルでもカランでもずっと見張らせていたみたいだし、犯罪者達の内部情報も知っていたんだよね。だとしたら事前に対策も出来たし、私が誘拐されるようなこともなかったんじゃないかと思うんだよ。それなのに私が誘拐されたってことは、何か役割でもあったのかなって思うんだけど。


 あれ、でもアジトが分かってるなら、私がわざわざ誘拐される必要ってそもそもない? ただ犯罪者達を捕まえればいい訳だし……。


 うーん、私ってなんで誘拐されたんだろうねぇ。


 エミール君に関しては、メルドランでの犯罪、特に私に対して行われたことにあれだけ怒っていた様子から、私をわざと誘拐させるなんてことはしないように思える。ロイさんと接触しているところも確認できていないし、彼は誘拐に関してはシロなのかなって思うけど、だったら誰がアジトの情報を伝えたんだろうか。


 私の誘拐目的も不明だし、分からないことだらけだ。情報が足りなーい!


 まあはっきりしているのは、ロイさんが色々知っていて、暗躍しているってことくらいかな。明日は彼にも会えるんだろうか。すっきり解明するとよいなぁ。


 すごくモヤモヤするー。



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