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翌日から、扉の有効範囲を調べたり、ホームページをいじる為の勉強をしたり、何かよい商売はないか考えたりと色々忙しくして過ごした。なかなか充実してるね。
アルクはあれからケーキにすごく興味を持って、どうやって作るのかとか他にどんなケーキがあるのかなどを聞いてきた。
私は別にケーキ作りはしないし詳しくないのでネットで調べたりしたんだけど、最終的に動画に行きついた。アルクはリビングのテレビでひたすらケーキ作りの動画を見続けている。飽きないのかなぁ。動画に夢中な精霊ってシュールだ。
アルクについてはね、色々お世話になりっぱなしでとても感謝している。色々教えてくれるんだよ、色々ね。だけど私が聞かないと教えてくれないことが多いんだよねぇ。精霊ってこういうものなのかな。
とにかく、面倒くさがりは返上して疑問に思ったことは積極的に質問していこうと思う。
ケーキの時は面白い反応していたし、まだまだアルクのことは知らないことが多い。もっと仲良くなって分かり合えるようになるといいなって思う。
あと扉についてもまだ発見していない力があるかもしれないし、今後はもっと注意深く観察していきたいと思ってる。
そうそう、最近導入したものがあって、インターホンを取り付けた。玄関に設置して訪問者が中の人を呼び出すアレです。ドアホンの方が通じる?
日本の家になかったので以前から付けようと思っていたんだよね。ネットで何かを注文した時は配達日をチェックしてるけど、ガイルの家に居る時だと気が付かなかったりするし。置き配対応もしてあるけど、郵便物とかで本人が受け取らないとダメな物とかあるし、こんな山の中、わざわざ持ってきてもらって再配達は申し分けなさすぎると思ったのだ。
今時のドアホンってワイヤレスのものがあって、特別な設置工事なしで私でも取り付けができた。すごく簡単。カメラ付なので家の中で誰が来たか確認出来て安心だし、モニターの子機があるのでそれをガイルの家に置いてみた。扉が消えてもあっちで電波があることが分かったので使えると思ったんだけどちゃんと使えたよ。
これでガイルにいても日本で誰かが来たら分かるし、私だけ日本に居てもアルクと連絡が取れるようになった。スマホとも連動できるので日本で外出時に対応出来るけど、ガイルではそれが出来ないのだけが残念かな。
最初はね、これならガイルの家の玄関にも取り付け出来るなと思ったんだよ。子機が使えるなら大丈夫だと思うんだけど、結局付けるのは中止。なんでかというと訪問客がね、すごく増えたんです。
実はパン協会さんの話を聞いた町の人がたくさん押しかけてきたんだよね。アルクから私に会いたい人が来ていると聞いて外を覗いたら結構な数の人が居てびっくりした。こんなに無理無理、と思って居留守を使ってしまったんだけど……ごめんなさい。
でもこのままだと買い物にも行けない、ということでアルクに相談して家の周りに術をかけてもらうことにした。ほら、アルクが自分にかけていたみたいな空気になれるやつ。そこにあるんだけど意識されない、みたいな。これで人が押しかけてくることはなくなるってことだったけど、そんなこともできるってすごいね。
あと出掛ける時もちょっと怖いので、今後はアルクと一緒に私にも弱めに術をかけてもらうことにして、とりあえずしばらくは様子を見ることにした。
◇
あれからしばらく経つけど、今の所普段は私とアルクは日本の家で過ごすことが多くなり、買い物や用がある時はガイルに出掛けるような生活スタイルに落ち着いている。ガイルにドアホンの子機を置いたけど、アルクはずっと一緒にいるから結局使ってないんだよね。あれぇ?
でもね、この間コルネさんのパン屋さんに買い物に行ったら、開発の進捗状況を教えてもらうのと一緒に、役所の人が私と連絡が取れなくて困っていると教えてもらった。あらら、それは申し訳ないことをしてしまった。
コルネさん達が家に来れないのも困るのでアルクに再び相談。許可制で家にたどり着けるようにしてもらった。こう、手の甲にポンって印をつけておくんだけど、見た目は何も見えない。遊園地とかの再入場スタンプみたいだね。
もちろん役所にも行って、私の担当だという人の手の甲にも印を付けてもらったよ。
ドアホンの設置をどうしようかと思ったけど、アルクは日本の家に居ても誰か来たら分かるらしいので引き続き付けないでおくことにした。
役所の人の話によると、ガイルの新しい名物にするべく、パンのお披露目を町をあげて大々的にやりたいとのことだった。
いや、それってパンを見て食べてからじゃなくていいのかと思ってしまったよね。話題になってからでもいいような気がするけど、売り出すのにこういうプロデュースは必要なんだろうか。
とりあえず、打ち合わせもあるのでパン協会さんと一緒に話がしたいそうだ。私は一応了承して、後日第二回パン会議が開かれることになった。
なんだか話が大きくなってきてるよ~。




