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 あれからマリウスさんと話をした。


 強制的に休ませてある程度回復し、まともな判断が出来そうだなというころで改めて聞いてみたのだ。クラウスをどうしたいのかって。


「……クラウスは私の弟です。罪は償わなければいけないのは分かっています。しかし……私は弟に、生きていて欲しいです」


 多分ね、真面目なマリウスさんのことだからすごく悩んでるんだろうなって思う。だけどどうしても弟に対する情は捨てきれなかったみたいで、あれだけ迷惑掛けられても見捨てないとか、お兄ちゃんってどれだけ懐が深いのって思うよ。


 なので、まあどうなるか分からないけど、クラウスのことは死なない程度の罰になるように交渉することにした。今回の件で私は被害者だし、多少は口を出す権利はあるかなって思ってる。


 それからメルドランやガイルへの処罰なんてものは絶対阻止するつもりだ。何か言う人が居るんなら黙らせようと思う。


 いや別に暴力じゃなくて賄賂とかね。お金はあるし、なんなら「毛映え薬」とか「やせ薬」とか「美容液」とか色々あるし、このあたりでなんとかならないかなって思ったりして。だってみんな欲しがるし、需要はありそうじゃない。まあもしそれで駄目なら……ね、仕方ない。


 でもさ、考えてみたら私、この国の最高権力者には貸しがあるし、更にその上、ベル様にだってお願い出来る立場なんだよね。なのでクラウス一人くらいどうとでもなりそうだとは思う。


 ただね、今回の件で捕まえた人達の処分についての話があった時にベル様が言ったんだよ。


「捕えた者達の処分は任せる。だが、出来るだけ命を奪うようなことはしないで欲しい」


 存在するはずのない者によって思想を歪められて起こした罪だから、無暗に処刑するのはやめて欲しいって。自分が原因で起こったことだからと、とても辛そうなベル様からのお願いだった。


 なのでそのベル様の言葉を受け、あまり乱暴な処分にはならないだろうって雰囲気なんだよね。


 この世界って結構簡単に重罪にするっていうか、下手すると今回捕まった人達全員……なんてこともあり得そうだったから、これでちょっと安心したというか。


 これならメルドランへの処罰とか、あとクラウスも大丈夫じゃないかなーって思うんだけどね。




     ◇




 さて、あれからまたしばらく経って処分やら何やらが色々と決まった。


 この辺は日本と違って裁判とかないのでとってもスピーディ。それでも丁寧に調査や確認を行ったから、それなりに時間は掛ったようだけどね。


 捕まえた人達は一人一人取り調べが行われ、洗脳具合や実際に犯した罪の度合いで刑が決められていった。平民は、そのすべてが洗脳状態にはなく、言われた通りに動いていただけということが分かったので軽い処罰で済み解放されることになった。


 下級貴族も似たようなもので、これは後から知ったんだけど、捕えられた人達の中に侍女のイーラさんが居た。以前私を助けてくれたあのイーラさんだ。実はリンデール出身だったそうで、城内の情報をリンデールへ伝えていたらしく、他にもベル様の居場所を探すように言われていたようだ。


 イーラさんは洗脳もされていなかったし、実際にリンデールへ伝えていた城の情報も大した内容ではなかった。犯罪と言えるようなこともしていなかったので解放されたそうけど、もちろん城で働くことは出来なくなり、私が知った時は既に彼女は城を出た後だった。


 そして他の貴族だけど、軽度の洗脳状態の場合は処罰の他に再教育的な指導が行われ、しばらくは監視や定期的な面接などをして様子を見るとのことだった。で、それ以外の結構しっかり洗脳されていたり教育されていたりする人達は、処罰や再教育以外に「誓約」をさせたそうだ。そう、前にアルクが使ってた例のやつね。


 いつもだったら処刑で終わってたんだけど、ベル様の言葉があるから悩みに悩み、でも放っておいたらまた何かしそうだよねぇってことで、行きついたのが誓約だったんだって。


 だけどこれ、別にこの国に元からあった訳ではなく、アルクが使っていたのを参考にベル様にお願いして力を借りたらしい。どうも前に私が話したのをロイさんや殿下が覚えていたようなんだよね。


 ベル様はちょっと悩んだそうだけど、今回だけっていう約束で協力してくれたそうだ。


 それで「国や王に背くような行為をすると死んじゃうよ」っていう内容の誓約書を作って署名させたそうなんだけど、全員がかなりビビッていたらしい。そりゃそうだよね、神様みたいな存在のベル様の作った誓約書だよ。どの程度で違反とみなされるかも分からないし非常に恐いと思う。まあそれで変な行動を起こさないでくれれば陛下達にとっては安心だろうけどね。


 そして他のがっつり洗脳されていて真っ黒黒の人達。なんかね、ノーマイーラを手助けする名目であれこれ犯罪行為をしていたらしく、未解決だった事件がいくつも解決したらい。筆頭はリンデール領主だったようだけど、これはどう考えても駄目だよね、という数名は処刑が決定したそうだ。


 これも誓約させちゃえばって思うけど、そこは生かしておく必要がないってことだそうで、まあ私がどうこういう話ではないかな。



 ということで、問題のクラウスは僻地での重労働や再教育の後にメルドランへの引き渡しが決まった。私も一応助命は頼んでおいたんだけど……結局ガイルに戻ってくることになったんだよねぇ。いや別に生きてるだけでいいし、そのまま僻地で良くないって思う。


 またガイルに居たら絡まれそうで嫌だなぁって思って、賄賂でクラウスを僻地に置いてもらえないかと考えたんだけど、マリウスさんが張り切っていて私は何も言えなかった。「今度こそ私がしっかり監視して、おかしなことはさせません!」って、いやいや不安しかないからね。


 ただそんな私にロイさんが教えてくれたんだよ。クラウスも誓約に署名したそうなんだけど、「誓約にはリカ様についての記載もあるから危険はないですよ」って。え、それ大丈夫? 私の目の前で死んだりとかされるの、すごく嫌なんだけど……。


 私はクラウスとは絶対に顔を合わせないようにしようって強く思ったよね。


 不安ー。



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