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日本とガイルの家を行ったり来たりしていたんだけど、今は日本の家でコーヒーを淹れてまったり休憩中。
扉について色々確認したり検証した訳なんだけど、改めて考えても不思議だよねぇ。どうしてこんな力があるのか、どうしてこの家なのか。疑問についてはさっぱりだけど、とりあえず今分かっている扉の機能(?)についてをまとめてみようと思う。
まず、第一は日本とガイル、世界を繋ぐ扉だということ。
この扉は神力の中の一つ「扉使い」と言われる希少な力によって出すことが出来る。おじいちゃんはこの力を持っていたそうで、孫の私に隔世遺伝した、らしい。
扉は日本の家とガイルの家で出すことが出来る。家の中なら場所は移動可能で、最後に扉を出した場所が記憶される。
世界を跨いでの移動は家の中でしかできないが、あちらの世界では家の中と外とを繋ぐことが出来る。範囲は不明だけど市場では使えた。扉の大きさも変更可能。ただ、日本では家の中以外は扉を出すことは出来なかった。
扉を越えての物の持ち出しについては、家の中であれば可能。また、身に着けていれば外に持ち出すことも出来るが、体から離れると家の中に戻ってしまう。これはどちらの世界でも同じだった。
私はガイルで物を販売する仕事を考えていたけれど、危うく詐欺とかで訴えられてしまうところだったよね。危ない危ない。
また、神力がなければ扉を見ることもくぐることも出来ない。
私が日本で扉のことを話して信じてもらうには、実際に連れて行くのが早いと思うけど、こちらで神力を持つ人は少ないので扉を認識することも出来ない。私が目の前で扉をくぐって見せたら壁の中に消えたように見えるんだろうか。ちょっと怖いね。
あと考えたのは、私が神力がない人と手をつないで一緒に扉をくぐるのは可能なんじゃないかってこと。
ちょっと実験で開いてる扉に向かって物を投げてみた。床が傷つかないようにクッションを使ったんだけど、これがね、扉の所で壁にあたったみたいに跳ね返ったのよ。身に着けている物や手に持った物は扉をくぐれるけど、私から離れた物はくぐれない。つまり、物を持ち出すことが出来るのなら、人だって大丈夫なのではと思ったんだよね。
アルクは神力のない人の行き来については分からないと言っていたからやってみるしかないんだけど、それをするには誰かに説明しなきゃいけない。うーん。まあ、異世界のことを説明しなきゃいけないような状況になったらやってみようかな、ということで保留。
あとは扉特典の言語能力。扉をくぐるとガイルの言葉が分かる、話せる、書ける。書くことは役所から帰ってやってみたら出来た。私は日本語で書いているんだけど、ガイルの言葉でと意識しながら書くとあら不思議。あちらの言葉で文字が書けました。なんでだ。
日本に来たアルクも同様に言葉を理解出来たと言っていたので、扉をくぐれば言語特典はあるらしい。精霊だと比較対象としてどうなんだろうと思うけど、精霊には精霊の言葉があって、他の言葉は学習したそうなので人間と同じに考えてもいいのかなと思っている。
そして時間のこと。これは扉の機能が関係しているのかはよく分からないんだけど、時間の進み方はほぼ同じ、と考えてよいらしい。
いつ行ってもこちらが昼の時は昼、夜は夜だし、戻ってもそれは同じ。最初はなんとも思っていなかったんだけど、時間の流れとかどうなってるのかなと最近不思議に思ったんだよね。もっと早く疑問に思えと思うかもしれないけど、それだけ自然過ぎるほどに違和感がなかったんだって。
太陽も月もあって、じゃあここは地球と同じ惑星で同じ角度の地軸で、日本の家とガイルの家は同じ緯度経度なのかなとか考えた。ちょっと違うかもだけど、地球がパラレルに存在してるって感じ?
何か知っているかなと思ってアルクに聞いてみたけど、アルクは面白いことを言っていた。
この世界は神山という山に囲まれていて、太陽と月は神山から生まれ神山に還る。でも、過去に何人もの人が神山を目指したけれど、神山にたどり着いた人も神山を見た人もいない。大陸の周りは海に囲まれているけれど、海はどこまでも続き果てがないそうだ。興味深いよね。
世界の形はさておき、私はガイルに時計を持ち込んで計ってみたりしたけれどズレは確認出来なかった。おじいちゃんも昔そのあたりは検証したらしいんだけど同様だったらしい。ガイルで過ごして帰ってきても、経過した時間が短くなることも長くなることもなかった。
扉が補正をかけているのかなっていう推測もあったけど、浦島太郎にならないのであれば私は別に何でもいいと思っている。いまさら不思議が増えてもねぇ、本当にいまさらです。
まだ何か機能やルールはありそうなんだけど、扉についての説明書とかないのかな。ほらよくあるじゃない、ステータスとか鑑定とか。
一応、心の中で言ってみたり、ちょっと恥ずかしいけど声に出したりしてみたんだけど……何も起こりませんでした。アルクに「どうしたの」っていう目で見られてしまって恥ずかしかったです。
まあ、そんな感じで扉のことを確認しながら今後のこととか色々考えたんだけどね。結局、面倒なのでこのまま誰に言わずにいようかなという結論になった。
だってガイルのことを話したとして、それからどうするのって感じだし。一緒に楽しめるならともかく、町に行けなくなったり迷惑かけるのは絶対嫌だ。
アルクにおじいちゃんはどうだったのかを聞いてみたんだけど、日本ではガイルのことはほとんど話していなかったようだ。うん、先人に倣え。現状維持決定。あとは臨機応変でいきたいと思う。
あと逆にガイルではどうだったかというと、おじいちゃんが別の世界の住人ということはあちらの国の一部上層部は知っているとのことだった。上層部ってどこだろう? 王様とか?
ただ、混乱を防ぐために情報は伏せられていて、おじいちゃんが持ち込む知識や物はすべて例の「賢者様の所業」で通しているらしい。おじいちゃんが尊敬されているのと恩恵が大きいからそれで何とかなってるそうなんだけど……ごまかし方が大雑把過ぎない?




