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「残りも食べるから誰にもあげないで欲しい」


 アルクはそう言ってきた。


「別に良いけど、二日も経ったら美味しくなくなっちゃうかもよ?」


 そう言ったら、無言で立ち上がって奥の扉の方に行ってしまった。あそこは確か倉庫だったよね。しばらくしたら手に何かを持って戻ってきたけど、それは何かな?


「これは時間停止機能の付いた収納鞄だ。以前に行ったダンジョンでジローと見つけた」


 そう言ってアルクは小ぶりな鞄を差し出してきた。素材は革かな。結構しっかりした造りだ。ショルダータイプなのか長めの紐が付いている。というか、ダンジョンだって。どんな所かすごく気になる。


 しかも時間停止ってすごいよね。これに入れておけば入れた時の状態を保てるらしい。鞄の口が小さいからどうやって入れるのかなと思ったけど、ケーキを近付けたら吸い込まれていったた。不思議ー。


 食料品の買い物の時に便利だと思ったんだけど、この鞄は容量がとても少ないらしい。アルクの説明によると大体十五センチ四方くらいの大きさだそうだ。それはちょっと小さいし、さっきのケーキが潰れていないか心配だったけど確認したら大丈夫だった。中は一体どうなってるんだろうね。


 でも、時間停止機能いいよね。こういう鞄って売ってるんだろうか、ぜひ欲しいんだけど。そう思って聞いてみたけど、一般には流通していないらしい。


 まず作れる人がいないという。現存する鞄はみんなダンジョンから発見されたもので数は少なく、もし市場に出たら相当な高値が付くとのことだった。


 鞄には種類があって、中が拡張されるもの、時間停止機能が付いたもの、二つセットでお互いの中身を自由に取り出せるものなど色々あるそうだ。拡張も大きさが様々で複数機能付きもあるらしい。

 この鞄は容量は少ないけど貴重な時間停止機能付きなのでやはり相当な価値があるそうだ。でも倉庫に放り込んであったよね? そう思って聞いてみたら、おじいちゃんやアルクにとってはダンジョンで見つけたアイテムの一つであって、あまり価値とかには関心がないようだった。もったいないなぁ。


 でも良いなー、もう少し容量大きめ時間停止機能付き鞄欲しい。ダンジョン行ってみる?




 さて、ケーキの問題は解決したので扉のことをアルクに相談しようと思う。あちらの人にこちらのことを話しても良いのか、それとも何か制約などがあるのか。


 そもそもこちらの人も私が扉を使って別の世界から来ていることを認識しているのかも気になる。疑問に思いながらも放っておいたんだよね。こんなにどっぷりこちらにはまるとは思っていなかったし。


 あとね、もう一つ。


 家に帰ってきたら、テーブルの上にあったんです。探していた花ちゃんへのお土産、置物の猫が入った包みが。あと、実家に持っていこうと思っていた果物も。


 確かに昨日、私はバッグに猫を入れたし果物は手提げの袋に入れて車のトランクに入れた。なのに実家に着いたら袋はあるのに中の果物がなくてびっくりしたし、猫の置物がなくてがっかりした。


 それが、今日家に帰ったら二つともテーブルの上に並んで置いてあったのだ。果物がなくなったのに気付いた時点で何かあるなと思ったけれど、これで確定。


 分からないことは聞いてみよう!

 教えてアルク先生!



 まずはこちらのことを話して良いのかどうかから。


「制約などないはずだし、別に話すのはかまわないと思うが、あちらの人間は信じるのか?」


 逆に聞かれてしまった。そうなんだよねぇ、話しても「夢でも見たんじゃないの」とか、妄想とか痛い人扱いされそうだ。でもこちらの物を見せたり、実際に連れてくれば信じるのでは?


「神力がなければ扉が見えないしくぐれない。それにこちらの物を持っていくことも出来ないはずだ」


 神力かぁ。もしかしたら持ってる人もいるかもしれないけど、アルクの話からするとあまりいなそうなのかな。あと、物を持っていけないとはどういうことだろう。私、食材とか散々買ってきて使ってるよ?


「こちらの物を持ち出しても、あちらの家から出れば引き戻される。逆にあちらの物を持ち込もうとしても家を出ればやはり引き戻される」


 何それ。初めて聞いたんだけど。あ、猫と果物! あれが家のテーブルにあったのってそういうこと? でも、私はあの二つを持って家を出た。猫は鞄に入れていたから分からないけど、果物は車のトランクに入れたよ? さすがに中身がなくなれば重さで気付くと思うけど……。


「手に持っている物や身に着けている物は戻らない。離れたら戻る」


 ああ、そうか。着ている服とか靴はこっちで外に出ても何ともなかった。果物は手に持っていたから持ち出せて、トランクに置いたから戻ったってこと?


 ここで考えていても仕方がないので、とりあえず実際にやってみることにした。確認大事。


 扉を出してあちらに戻り、テーブルの上の猫の袋を手に持つ。果物はすでに冷蔵庫に入れてあった。


 まずは外に出てみる。


 袋はまだ私の手元にある。で、少しだけ歩いてしゃがみこみ、芝生の上にそっと袋を置いてみる。


 別に置いた瞬間に消えるとかはなかったのであれって思ったんだけど、そのまま少し待ってみた。そしたらね、少しして、すうって消えたのよ。うわぁ。急いで家の中に戻ったら袋はテーブルの上にあった。


 その後も何度か物や場所を変えて実験してみたけど、同様に家の中に戻っていった。まあ、戻る場所がテーブルの上だったり別の場所だったりしたけど、その辺りの違いがどうして出るのかはよく分からなかった。


 あー、でもこれって、こちらの品物を持っていって販売とか出来ないってこと? うそー、商売できるかなと思ってたのになぁ。私の外貨獲得計画が~。あ、花ちゃんにもお土産渡せないじゃん。あーあ。


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