表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

181/215

181



 本日はダンジョン探索だ。


 良い笑顔で「ダンジョンへ行こう」と強請ってくる騎士団長やみんなの希望、それにヒナちゃんの予定も合ってみんなで向かった。


 最近は色々あったし、なにかと忙しかった。なのでこうしてみんなで出掛けらるのは嬉しい。私の場合は戦闘はしないし大した運動量ではないけど、ウォーキングというかハイキングとういか、景色を楽しみながらダンジョンを進むのはそれなりに楽しいしね。


 みんなはかなりのハイテンションで喜んでいたし、「あやうく禁断症状が出る所だった」なんて言っていてどれだけ中毒なんだろうって思う。本当にみんな好きだよね、ダンジョン。



 さて、今度の階層はあのやたらと落下させられた二十二階層とは違って平らな地面が続いている。うん、登るのも落ちるのもしばらく遠慮したいし、平らな地面万歳だ。


 私達は時折現れる魔物を倒しながら順調に進んで行った。するとしばらくして目の前に森への入り口が現れ、私達は警戒しながら入って行ったんだけど、奥に進むにつれて森の様子が変わってきた。


「変わった木々ですね」


「ええ、随分と細くて表面が固い」


 マリーエさんの言葉に目の前の幹を叩きながらエミール君が同意する。ロイさんや騎士団長も珍しそうにあたりを見回しているし、どうやらみんなには馴染みがないようだ。


「え、これって竹ですよね?」


 そう、ヒナちゃんの言う通り今目の前に広がっているのは竹林だった。青々とした竹はまっすぐ上空に伸び、風に揺られた葉がサワサワと音を立てている。


「この木はタケと言うのですか?」


「まあ私の知っている竹と同じかどうかは分からないけど、見た目は似てるかな」


 ここは異世界だ。いくら形が似ていても中身が同じとは限らない……はずなんだけどねえ。


「えー、でもそっくりですよね。私タケノコ掘り行った事あるんですよ。あ、タケノコご飯食べたい! タケノコあるかなぁ」


 ヒナちゃんがそんな事を言い出すものだから「タケノコゴハンとは?」「食べ物ですか、美味しいのですか?」とみんなが興味を持ってしまい、何故か急遽タケノコ探しが始まってしまった。別にこの階層を急いでクリアする必要もないんだけど、みんな自由だよね。


 それにしてもタケノコって出てくるのは春だったような気がする。この場所の季節感はよく分からないし、そもそもタケノコが生えるのかも謎なんだけど……なんて色々考えていたんだけどね、まあ比較的暖かいし可能性はあるだろうと気楽に考えることにした。だってみんな楽しそうだし。


 ということで、私もタケノコ探しに参加した。既に頭の中でタケノコ料理を考えている私は十分みんなと同類なんだろう。


 そして探索することしばらく……


「あったー!」


 第一発見者はヒナちゃんだった。どうやらまだタケノコは小さいらしく、地面から少しだけ出ている所を足の裏で見つけたんだそうだ。さすが経験者。


 そしてヒナちゃんが見つけたのを皮切りに、周囲でみんなが次々に発見していった。エミール君に鑑定してもらったらちゃんと食べられるようだったし、私が知っているタケノコとそっくりだった。これならたぶん料理しても大丈夫だろう。


 最初は掘るのに手間取ったり失敗したりしたけど、家から持ってきた鍬を使って最終的には上手に堀り出すことが出来てみんな大喜びだった。異世界でタケノコ掘り……いやいいんだけどね。


 成長した大きいタケノコも何本かあり、全部で十本くらいは見つけられた。皮を取ったら食べられる部分はわずかだけど、料理はいくつか作れそうだ。


「リカ様ごはん~」


「はいはい。あ、だけどタケノコはすぐには食べられないからね」


 そう言ったら「「「えー」」」って絶望した顔をされたけど、いや先に皮をむいたり茹でたりとかしないとなんだよ、ってなんでヒナちゃんまで一緒になってそんな顔してるの……もう。


 私もあまり詳しくないのでネットで調べたんだけど、台所で作業するよりここで処理してしまった方が良さそうだった。


 こういう時に収納鞄は本当に便利だよね。とりあえずと放り込んでおいたテーブルだとか鍋だとかを次々出していく。


 かまどの作成をお願いして、私はタケノコの皮をむき始めた。まず縦にザクっと包丁を入れてそこに指をかけ左右に開く。うーん、皮が大部分で残るのは本当に少ない。こんなものかと思いながら作る予定の料理を少し削った。


 しばらくすると鍋の準備ができたらしい。こういうのは得意だと言っていた騎士団長のおかげで随分と立派なかまどが出来ていて、鍋には既にお湯が沸いていた。水はアルクが出してくれたみたいだし、みんな手際が良いね。


 さっそくむき終わったタケノコを投入して、しばらく放っておく。本当は米ぬかとをいれるらしいけど無いから省略。若い採れたてのタケノコだったらそのままでも調理できるらしいけど、今回は全部茹でてしまおうと思う。


 でね、茹でるのや冷ますのにかなり時間がかかるようなので、その間は横でバーベキューをすることにした。実は以前にアウトドア商品のコンロセットを見かけて「これいいかも」と思ったんだよね。なのでマキナさんにお願いして同じような物を作ってもらって、ついでに食材も準備してあった。なのであとは焼くだけの簡単ランチにしようと思う。


 タケノコの処理をする間にバーベキューの準備はマリーエさんに鞄を渡して任せておいた。だどねぇ、タケノコがひと段落ついて見てみたら、何故か絨毯がひかれ、そこに木製のテーブルに椅子にとダイニングセットが並べられてクロスもまで掛っていたんだよね。もうびっくり。


 いや絨毯は古いのだし別に何を使ってもいいんだけど、こうなるとは思わなかった。他にもアウトドア用の椅子なんかを鞄には入れてあったんだけど、野外とは思えないセッティングにさすが貴族は違うなぁなんてちょっと感心してしまった。あとテントやパラソルがなかったと言われたので今度補充することにした。


「お、この肉うまいな」


「タレが美味しいですね~」


 ちょっと思っていたバーベキューとは違って優雅な竹林ランチになったけど、外で食べるご飯はとっても美味しかった。


 そうしてみんなでワイワイ楽しんだ後、食後のお茶を飲んでいたの時に自然と次回の予定の話になった。


「次はいつ行ける?」


 期待した目で騎士団長が聞いてくる。


「私、来週は駄目だから再来週は参加したいー」


 手を上げてヒナちゃんがそう言うから「あ、そうだ」と私は思い出した。


「ごめん、再来週の日曜日は予定あるんだ。土曜日は大丈夫なんだけど……日曜日の朝は家に送っていけるけど、どうする?」


 ヒナちゃんは学生さんなのでほぼ休日のみの参加だ。だからダンジョンに行く時は土日でうちに泊まり掛けで来ることが多い。再来週の日曜日は出掛けるけど、朝は送っていけるから土曜日だけでもどうかなーと思ったんだけど。


「え、いいんですか?」


「うん、ヒナちゃんが良ければ大丈夫だよ」


「じゃあお願いしたいです!」


 そう可愛くお願いされたのでもちろんオッケーした。あと他のみんなにもお願いされて再来週までの間も何度かダンジョン行きを約束したんだけど、こちらはあんまり可愛くなかった。まあ仕方ない。


「だけど里香さんが休日に予定って珍しいですね」


 私は比較的予定は平日に入れることが多い。それを知っているヒナちゃんだからの発言だったんだけど、先日の顔合わせは休日だったし別にそこまで珍しくは……と思いながらも、予定自体が少ないかと思い直して私は苦笑して答えた。


「ああうん、ちょっと誘われて婚活パーティーにね」


 が、言ってから「はっ」となった。


「えー、里香さん婚活パーティー行くの? 」


 しまった、話すつもりなんてなかったのに。


 ヒナちゃんは興味深々って顔で私を見てくるし、つられてみんなの視線が私に集まってしまった。


 とりあえず「付き合いで行くだけだよ」とヒナちゃんには誤魔化したんだけど、「コンカツとは何ですか?」とロイさんにしつこく聞かれてしまった。あとなんとなく避けてしまったけど、アルクの視線を感じた。


 婚活パーティーなんてアルクには言えなかったし、出掛けること黙ってたから怒ってるのかな……。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ