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「いやー、それにしましてもジロー様にお孫様がいらっしゃったとは。改めまして、ようこそガイルの町へお越し下さいました。我々はあなたを歓迎致します」


 いやなんかね、最初からすっごい歓迎具合で申し訳ない感じがしたよね。おじいちゃんの七光りがすごい。


 副町長さんは、おじいちゃんのことや私のことは先日のパン協会さんから聞いていると言っていた。新しいパン開発についても町の活性化につながるとすごく喜んでいたよ。


 あまりにも持ち上げてくるから「私に出来る範囲で協力はするけど、そんなに大それたことは出来ないですよ」って、一応言ってはおいたんだけど「またまたご謙遜を」なんて言われてしまうし。どうしたものやら。


 それでね、今度またパン協会さんとの会議をする時に役所の職員も参加させて欲しいというのだ。


「え、別にいいですけど、たいしたことしてないですよ?」

 

 なにやら話が大きくなりそうで不安だなぁなんて思いながら、パン協会さんが了解してるなら私はかまわないと伝えた。副町長さんはすごく喜んでその後もお話を続けたんだけど、しばらくしてさっきの登録窓口のジルさんがやってきた。どうやらカードが出来たらしい。良かった。ちゃんと登録手続きしてくれていたんだ。


 副町長さんが私へカードを渡してくれる。


「こちらで登録は済んでおります。所在はガイルとなっておりますので、もしも、もしも他へ移る場合はそちらで手続きが必要となります。で・す・が! リカ様はこの地に永く留まっていただけるものと、私共は強く、強く信じております!」


 副町長さんの圧がすごい。


「あ、はい。家もありますし、特に今のところ他へ移る予定はないです」


 なんとなく必死さに負けて言ってしまったけど、ここ以外知らないというのが本当のところ。その後はジルさんから基本的なカードの使い方やおじいちゃんの口座との紐づけなんかもやってもらって目的は達成した。


 こういうカードって、異世界ものだと「ギルドカード」とか言うじゃない? だけどね、このカードの正式名称は「住民登録カード」という。直球だね。


 そもそもここにはギルドがないそうだ。似たようなことは全部役所が請け負っているらしいけど、だからって「役所カード」はないかなぁ。


 まあとにかく、みんな正式名称なんて使っていなくて、ただ「カード」と呼んでいるらしい。


 さて、手続きも挨拶も終わったので私達はこれで失礼することにした。


「今後とも町の発展の為、どうぞよろしくお願い致します」


 そう言って副町長さんはニッコニコ顔で見送ってくれました。お勤めご苦労様です。いやー、なんだかものすごく疲れた気がする。甘い物食べたい。




    ◇




 本当はもう少しあちらで買い物とか散策をしようと思っていたんだけど、なんだかとっても疲れてしまったので一旦帰ることにした。


 帰り道の屋台で美味しそうな串焼きが売っていたのでそれを買って、あとは家にあるパンでお昼にする。手軽で便利で美味しい、屋台最高です。


 ガイルの家のカウンターは簡易台所があるので、ちょっと食事するときはすごく便利だ。お茶も淹れられるしね。だけどちゃんと料理しようと思うとやっぱり色々足りないし、買ってきたものを温めたりとかするのにレンジが欲しいなぁとか考えてしまう。


 扉一枚だからあちらに行けばいいだけなんだけど、そのちょっとが面倒なんだよねぇ、とものぐさな私は考えてしまうのでした。もぐもぐ。


 さて、ご飯も食べ終わってこれからどうしようかなと思ったら、スマホに着信があった。そう、後から気付いたんだけど、ガイルのこの家、スマホの電波もWi-Fiも届くんです。


 家の中だけで一歩外に出るとすぐ圏外になるけど、スマホ繋がっちゃうんだよ。扉は相変わらずすぐ消えちゃうのに不思議だよねぇ。


 で、誰かなと思ったら中学の時の同級生からでメッセージが届いていた。どうやら私が会社を辞めて山に引きこもっていることを実家経由で知ったらしく、元気かという生存確認と久しぶりに会わないかというお誘いだった。


 うん、久しぶりに会いたいかも。私はすぐにオッケーの返事をしたら、明日がお休みらしくさっそく会うことになった。行動が早くていいね。


 友達は私の実家近くに住んでいるので、そちらで会うことになった。会うのは夕方だけど、時間が遅くなっても良いようにその日は実家に泊まらせてもらおうと思う。すぐにお母さんに電話したら大丈夫だって返事がきた。ありがたい。


 あとお店をどうしようかと思ったけれど、気兼ねなくおしゃべりしたいのでファミレス集合になったよ。ファミレスも久しぶりかも。


 わーい、何食べよう。


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