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 さて、マルティナ様とラビニア様に頼まれたとはいえ、どうしようかなぁと思っていたんだけど、ポーションの実験とかしている間にギルベルト殿下から面会依頼があった。で、今こうして私の部屋に殿下が来ているんだけど……。


「母上の事、私からも頼む」


 会うなりこれだよ。


「父上からもリカによろしくと伝言を頼まれた。どうか私達を救って欲しい」


 思いっきり頭を下げられた。


 だからやーめーてー。


 救うとかそういうの簡単に言わないで欲しい。話をするだけって言ってるじゃない。


 なのできちんと殿下にも何の保証も出来ないよと伝えたんだけど……ちゃんと分かってる?


「分かっている。リカを信じている」


 駄目だこれ……。



「とにかく陛下からの許可は出たと思っていいんですよね?」


 そこを確認したら殿下は頷いてくれた。


「多少何があってもこちらでなんとかする。面会の依頼は私の名前で出したが受けてもらえるかどうかは分からない。だが、駄目なら強硬突破でも構わないとのことだ」


 強行突破ってなかなか凄いね。まあ不敬罪とか言われたら困るけど、陛下がいいって言ってるんなら怖い物なしだ。


 聞いた話だと、王妃様は殿下だけには時々会っているとの事だった。会っても殿下が一方的に話をして終わりらしいけど、それでも他の誰とも会おうとしない中で唯一面会できている訳だし、末っ子は特別可愛いって事なんだろうか。


 とりあえず今は面会の返事待ちだけど、さて、どうやってお話したらいいものか。


 まあやるからにはちゃんと対応しますよ。だけどさぁ、何でこんなことになってるんだろうって今更に思うよね。王都見学だってまだしてないし。あー、ダンジョンよりやっぱり王都が先だったなぁ。


 終わったら絶対、観光に行ってやるー。




     ◇




 結局、面会依頼は断られてしまった。


 なので強硬突破することにした。


 とはいえ私にそんな乱暴な事なんて出来ない。なのでエレノアさんにお願いしてなんとか王妃様に蜂蜜レモンを飲ませ、すこんと眠ったところでかっさらおうという作戦だ。乱暴ではない、と思う。


 結構特殊な飲み物なのでどう言って飲ませるかが問題だけど、そこは敏腕侍女にお任せして部屋で待つこと数時間。


「お待たせ致しました」


 そう言ってエレノアさんが戻って来た。どうやらうまくいったらしい。


 元々エレノアさんは王妃様付きだし、こんな作戦拒まれるかなと思ったんだけど、説明したらすんなり協力してくれた。陛下に王妃様を連れ出すこととかを報告してちゃんと了承を得たのも大きいかな。


「どうか王妃様をよろしくお願い致します」


 丁寧にお願いまでされてしまった。


 で、案内されたお部屋から寝姿も美しい王妃様を連れてガイルの家へ移動する。運んでいるのは殿下だ。さすがに高貴な女性の体に触れるのはどうかなということでお願いした。


 ガイルの家の長椅子に横たえてもらい、殿下にはお帰りいただく。ここからはお城の人達の目のない所でじっくりいこうと思う。全然乱暴じゃない、よね?




「う……ん……え、ここ、は……?」


 長椅子から声がした。どうやら目が覚めたようだ。エミール君に確認してもらい、睡眠時間は調整してあった。ちょうど一時間くらいで目を覚ます予定だったのでぴったりだね。


「おはようございます」


「……あなたは……」


「ええ、会うのは二度目ですね、こんにちはミランダ様。ご気分はいかがですか?」


「私は……これは一体どういう事でしょうか。ご説明下さい、リカ様」


 おお、初めて名前を呼ばれたね。ふむ、怒ってる、という感じではないかな。伺っている様子はあるけどすごく冷静だ。


「はい、もちろんです。こちらへどうぞ、お茶を淹れますので」


 私が促すと少し考えた後で素直に移動して席についてくれた。


「花の香りの紅茶がお好きだと伺いました。お口に合うと良いのですが」


 そう言って目の前で淹れたのは、優しい花の香りとまりやかな口当たりが特徴の人気ブランドの茶葉だ。差し出したカップを見て、王妃様はゆっくりと手を伸ばした。


 優雅な手つきでカップを傾ける。


「とても、美味しいわ」


「それは良かったです」


「……それで、ここは一体どこなのからしら?」


 ベールの下からでも分かるような強いまなざしを感じる。


「ここはメルドラン領のガイルという町です。そこにある私の家ですね」


「ガイル……」


「はい、私の力を使って移動しました」


「……そう。あなたの力の事は聞いているわ。だけど……私をここへ連れてきてどうなさるおつもり?」


「んー、別にどうこしようとは思わないんですが、とにかくあなたを心配している人がいっぱい居てですね、話をしてこいと皆が言うんです。なのでちょっとあなたとおしゃべり出来ればいいかなーって思ってます」


「……話すことなんてないわ」


「そうですか。でもすみません、最低三日はこちらに居てもらうことになってますので、そこはご了承下さいね。まあ気分転換とでも思ってください。あ、安心して下さいね、ご飯も寝る所もちゃんと用意してありますから」


 私の言葉に少し動揺したような雰囲気はあったけど、王妃様は何も言わずに私を見ていた。


 家の中の説明をし、とりあえず今日はこのままここで過ごしてもらい、夜は別の屋敷に案内すると話す。


 まあ王妃様が従う必要はないんだけど、彼女にはここから城へ帰る手段はない。いやあるかもしれないけど、私が三日と言ったし、頭の良い彼女なら大人しくしているだろうなと思っている。


 さあ、三日で何か分かるかなー?




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