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 今日はアルクと一緒に役所へ行くことになった。

 そろそろ一人で買い物も出来るかなっていうのと、思っていた以上にこちらの滞在が増えてきたので身分証明書も必要だろうということから、以前から話していたカードを作りに行くことにしたのだ。


 あとね、私が居ない時に役所の人が訪ねて来たそうなのだ。私が思う以上におじいちゃんの存在はこの町では大きいらしく、孫の私にも会いたいらしい。

 私に会ってもどうしようもないよって思うんだけど、わざわざ来てもらったなんて聞いたらご挨拶はしておいた方が良いかなと思っている。


 あ、そうそう、アルクさんの呼び方がアルク呼びに変わった。結構初めから言われていたんだけど、どうしてもさん付けになってしまっていたんだよね。

 だってどう考えてもすごく年上だし精霊様だよ? 呼び捨てとかちょっといいのかなと思ってしまう。


 それに、私は普段から呼び捨てってあまりできないタイプなのだ。すぐ呼び捨てできる人とかすごい、コミュ力高いって思う。

 まだ慣れなくてつい「さん付け」で呼んでしまったりもするけれど、徐々に慣れていきたいと思う。


 そんな訳で、町の中心にある建物にやってきた。石造りのすごく立派な三階建ての建物で、入り口も大きくて人がたくさん出入りしている。

 さっそく私達も中に入ってみると、そこは大きなホールになっていて正面にカウンターの窓口が並んでいた。要件別に受付が分かれているみたいで私の知っている市役所とかと良く似た感じだった。


 まず入り口近くの案内所を利用することにする。やっぱり文字が分かるのは非常に助かる。

 受付けのお姉さんにカードの登録をしたいと言ったら五番窓口を案内された。そのまま窓口に向かうとちょうど空いていて、すぐに手続きをしてもらえるみたいだった。


 そういえば書類とか何か記入したりとかあるのかな。私、住所とか分からないし何よりこちらの文字とか書けないよ。今更だけどちょっと不安になってきた。


 対応してくれたのは若いお兄さんで、名前をジルさんと自己紹介してくれた。ジルさんはカウンターの上に何やら板状のものを出してきて「これに手を当てて、名前を言って下さい」という。

 おお、なんだかそれっぽい。異世界ものの冒険者ギルドとかによくこういうシチュエーションあるよね。ちょっとドキドキする。


 私は板に手をあてると、少し緊張しながら名前を言った。


「小林 里香」


 一瞬、板がピカーって光った。ちゃんと出来たのかな? そう思ってお兄さんを見たら、「コバヤシ、リカ?」ってつぶやいてそのまま固まってしまった。


「あのー?」


 そう言って私が声をかけると、お兄さんは急にはっとして私に質問してきた。


「あの、失礼ですが、あなたはジローコバヤシ様の関係者の方、でしょうか……?」


 後から知ったんだけど、こちらで家名があるのは貴族だけらしい。でもって名前、姓の順番に言うのが一般的だそうだ。というか、いるんだね、貴族。


「はい、孫のリカと言います」


 一応、ご挨拶は登録が終わってからと思っていたんだけど、先にした方が良かったのかな。そんなことを思いながら私は答えた。


 すると「え、えとあの、すみません、しばらくお待ち下さいっ!」


 ジルさんはそう言うと急に席を立ってどこかへ行ってしまった。取り残された形の私はアルクと顔を見合わせる。どうしよう、ちゃんとカードの登録してもらえるんだろうか。


 しばらくすると少し年配の男の人とジルさんが小走りで戻ってきた。


「お待たせしてすみません、私、副町長のオリバーと申します。少しお話させていただきたいので場所を移したいのですがよろしいでしょうか」


 年配のおじさんがあせあせしながらすごく丁寧に話してきた。こちらの人ってみんな腰が低い。私なんかにあんまりかしこまらなくてもいいんだけど。


 私達は階段で三階まで上がり、応接室のような部屋に通された。


 お茶も出してもらってとりあえずそのまましばらく待っていたんだけど、何やら扉の外が急に騒がしくなった。「え、まさかまた」とか「今日そんな予定は」とか声がする。で、ちょっと静かになったなぁと思ったら、ノックがしてさっきのオリバー副町長さんが部屋に入ってきた。


「大変申し訳ございません。町長からご挨拶させていただくはずだったのですが、あいにく視察に出ていて不在でして……。代わりに私がお話をさせていただいてもよろしいでしょうか?」


 なんかね、額をふきふき、可哀そうなくらい申し訳なさそうな顔をして謝ってくるのよ。いやいや、今日行きますとか事前に連絡した訳でも何でもないんだし、別になんでもかまいませんです、はい。


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