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 カポーン……


 そんな音がしそうな広ーいお風呂。


 柔らかい白色と昔のローマとかにありそうな柱や装飾が異国情緒たっぷりの石造りだ。


 実はここは城内にある浴場なんだけど、私は今この空間を一人で満喫中だったりする。うーん贅沢~。


 湯船に浸かり手足を伸ばす。


「はぁー、なんか今日は色々あったなぁ……」


 ガイルから王都のお城へ行き、この国の王様に初対面で威嚇され、ヒナちゃんと日本に戻ってご両親と対面。行方不明の二ヶ月間、異世界に行ってたなんて話をあっさり信じたと思ったら、まさかの一族異世界転移体質とか……。もう予想外過ぎてびっくりだったよね。


 ご両親には娘を助けてくれてありがとうとめちゃくちゃ感謝されたし、私の扉の事を知ると「ぜひ異世界に行ってみたい、娘がお世話になった人達に直接お礼を言いたい」と言われて連れて行ったりとなかなか忙しい一日だった。


 お風呂の縁に両腕を置き、頭をのせて息を吐く。


 なんかさ、この世界の迷い人もだけど、私が思うよりもずっと沢山の人が色んな異世界を行き来してたりするのかなって、そんな事を思ってしまうくらいには森家の話は衝撃的だった。意外と異世界って身近な存在なんだろうか……。今まで考えたこともなかったけど、実は友達に異世界人がいたりとかも普通にあり得そうだ。


 ふふ、なんだか面白いなぁ。


 そんな事を考え、なんとなく今までの事を取り留めなく思い出していたらいつの間にかかなり時間が経っていた。いけない、そろそろのぼせそうかも……。


 そう思ってお風呂を上がる事にしたんだけど、何故かお風呂の外にはずらっと女性が待ち構えていた。え、何事?


 実はお風呂に入る時にね、髪を洗う人とか体を洗う人、飲み物を用意する人なんてよく分からないお世話係が何人も付くっていうから丁重にお断りした。だってお風呂はゆっくり落ち着いて入りたいし。分かってもらえたと思ったのに、なんでこんな状況なんだろうか……。


 私が戸惑っている間に手際よく大きなタオルで体を拭かれてバスローブみたいなものを着せられた。そして流れるように長椅子へ誘導され、背中のふかふかクッションに体が良い感じに沈み込んだ。


 渡された飲み物は爽やかな香りがして湯上りの体に染み渡る。いつの間にか背後には髪を拭く人、左右の足元にはそれぞれにオイルマッサージする人がいたりとされるがままなんだけど、おお、何これ気持ちいいー。


「リカ様は今度の夜会に出席されると伺っております。それまでにお体を整えましょう」


 侍女さん、でいいのかな? この人達にも役職というか色々呼び名があるんだろうけど私は詳しくないのでそう呼ばせてもらっている。その中でもまとめ役みたいな人がそう言って色々指示を出していた。


 私はそんなの別に必要ないって言おうとしたんだけど……いやぁ、ゴッドハンドっていうのかな、彼女達の絶妙なマッサージに、「あ、これはいかん……」そう思った直後には意識が飛んでいました。




 ――翌朝



 超豪華な天蓋付きベッドで目を覚ました私は、しばらく状況が理解出来ずにぼーっとしてしまった。そうしたらアルクが出て来て昨日の事を教えてくれたんだけど、「あ、ここお城だった」ってここでようやく思い出した。いつもそれなりに寝起きは良い方なんだけど、眠りが深すぎたのかなぁ。どうも頭が働かない。


 えーと、昨日寝落ちした私を運んでくれたのはマリーエさんだったらしい。あの時も警護でずっと側に居てくれたんだよね。大変申し訳なかったです、すみません。いやしかし、お風呂上がりのあのマッサージは凄かった。また同じことされたら速攻で寝る自信はある。あれは寝る。


 私はベルを鳴らして人を呼び、部屋で遅い朝食を取った。部屋の説明を受けた時に食事のこととかも色々聞いていたんだけど、なんかこういうのって上流階級って感じがするよね。すごく贅沢してる気分だし、慣れはしないだろうけどせっかくなので一応楽しんでおこうと思う。


 朝食を取りながら今日の予定を考える。さっそく王都を散策でもしようかな。だって一番の懸念事項だったヒナちゃんの日本への帰還とかご両親の事、戻った後の事とかが全~部解決したからね。もうすっごく安心したし、これで気兼ねなく観光出来る。やっほうー!



 なんて……ええ、そう思ってました。ついさっきまで。


 朝食が終わったタイミングで、銀のお盆に乗せられたとても綺麗な装飾の封筒を差し出された。何だろうって思ったけど、持って来てくれた侍女さんは何も言ってくれないし、アルクを見ても首をかしげるだけだった。


 しかたなく一緒に添えられていたペーパーナイフで開封して中を見たんだけど……なんと王妃様からのお茶会への招待状だった。しかも日付は今日とか……えー、これどうしろと?


 私が困惑していたら、いつの間にか傍らに控えていた人に「よろしければお手伝いを致しましょうか?」と言われて「……お願いします」と答えてた。それ以外に私に選択肢ないよね?


 声を掛けてくれたのは昨日のお風呂で色々他の人達に指示を出していた人だ。とても落ち着いていて頼りがいがありそうな彼女はお名前をエレノアさんという。間違いなく美人ではあるんだけど、表情があまり動かないのでちょっと近寄り難い雰囲気がある。


 王妃様が私に付けてくれた人で滞在中の身の回りのお世話してくれるんだそうだ。私なんかにもったいないです必要ないですって言ってもたぶん聞いてもらえないんだろうなぁ。


「さあ、では時間もありませんし準備を始めましょう」


 そう言ってエレノアさんが手を叩くと、扉から何人もの侍女さん達が入って来た。


「え、お茶会の時間は午後からですよね?」


「はい。しかし急ぎませんと御仕度が間に合いません」


 いや昨日は陛下に会ったけど普段着だったし、お茶を飲むだけならそんなに大層な準備は要らないのでは……そう言ってみたけど「何言ってんだお前」って感じの顔で封殺されました。エレノアさん怖い。


 私もね、以前のパーティーの時なんかで少しは学習したんだよ。抵抗すると余計時間も掛るし疲れるって……。なので早々に諦めました。あ、いつの間にかアルクいないし。


 あー、私の王都観光がぁ……。




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