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 夜会への出席が決まってしまいました。むうぅ。


 ヒナちゃんのお披露目として二ヶ月後にお城で開かれると知らされたんだけど、だいぶ時間あるよね。そう思ったらとんでもないと殿下に言われた。


「普通はこんなに短期間で夜会を開くなどあり得ないことだ。準備やら何やらで数か月、城での開催となればそれこそ一年も前から用意するのが通常なのだ。今回は異例中の異例だぞ」


 表向きは迷い人の出現と貴族からの要望で急遽、ということになっているが、本当はヒナちゃんが帰ることを考えてこんなあり得ないくらい早い日程での開催にしたそうだ。


 実際に夜会の準備はとても大変らしい。だけど準備期間が短いからといって王家主催のクオリティを下げるなんてことは出来ない。威信に関わると各所でかなり無理をしまくっているとのことだった。うん、お疲れ様です。


 あと貴族からの要望というのは実際あるそうで、面会希望の殺到と共に「迷い人を王家が独占するのはいかがなものか」という不満が出ているんだって。独占も何も保護してるだけなのにって思うけど、早くお披露目しろとの声が大きいらしい。


 迷い人はこの国では貴重な存在なので、現れると途端に争奪戦が巻き起こる。政治的な話とか例の血を取り入れたいとかそういうやつね。


 最も有利なのが迷い人が現れた領地で、発見した時は王家への報告義務はあるんだけど、保護して世話をしてと最初に接する事ができるので圧倒的な優位性がある訳だ。


 迷い人の意思は尊重されるから、その迷い人が自分達の領を選んでくれるようにとそれはそれは好意的に、時には婚約者候補を何人も送り付けたりして懐柔しようとするらしい。なかなかあからさまだけど、言葉も分からない、不安しかないような中で優しくされたらコロっといっちゃいそうだとは思う。


 それで上手くいってそのまま領に居たいと言ってくれれば万歳だし、駄目なら王家へ引き渡して他の領からのアプローチが始まる、という感じだそうだ。もちろんその際に王家側が取り込んだりもあるそうだけど、あまり独占し過ぎると不満が出るそうなのでその辺りは慎重さが必要とのことだった。


 でもそれって既に血は入ってるってことだよね? 何か特殊な力とか持っているんだろうか。思わず殿下の顔を見てしまったけど……うん、相変わらず眩しいですね。


 ええと、つまり今回はシュライデンは失敗したんだよね。せっかくアドバンテージがあったのに神殿のせいで台無しになった。迷い人とは話も出来ない程に関係が悪化してあきらめた、と。で、今度は他の領がチャンスが巡って来たと思って息まいているという状況らしいです。


 なんだかなぁって思う。それにこれって迷い人が帰れないこと前提だよね?


「リカの存在は知られてはいるが力については伏せられている。貴族達はヒナが帰るとは考えていないからな、少しでも縁を結ぼうと必死なのだ」


 絶対に帰れる保証はまだないけど、私はお城に行ったらすぐに扉を試すつもりだ。成功したら、夜会後すぐに迷い人は自分の世界に帰りました、で大丈夫なのかなって思う。いっそ何もせずに帰ってしまった方が良いんじゃ……。


「不満を抑えるためにも一度は顔を出してもらう必要がある。そこは分かってもらいたい。何にしてもこれは王の決定だ。ヒナには悪いが付き合ってもらうことになる」


 そうですか、つまり顔見せが済めば王家としてはオッケーってことなのかな。まあ色々良くしてもらってるし、ヒナちゃん良い子だからね。了承しているんならちゃんと出席しようとするとは思うけど、なんか必死になってる人達が可哀想に思える。


 私がそんな事を言ったら殿下は笑っていた。


「分からんぞ、もしかしたらヒナに運命の出会があるかもしれん」


「運命の出会いねぇ……」


 前にも誰かがそんなこと言ってたけど、あるのかね、そんなの。




     ◇




 殿下と話をしてからしばらくして、ロイさんが王都に到着したと連絡があった。


「さすがに少々疲れました」


 珍しくそんな事を言っていたけど、ロイさんは満足そうだった。


 そしてなんとなんと私は今、王都のお城に来ています。


 いやもうすっごいの。荘厳、大きい、広い、天井高い! 圧倒されて思わず口が開きっぱなしになるくらいには凄かった。


 馬車を降りた場所がどこかも分からないし、外観も大きすぎてほぼ壁しか見えなかったけど、尖塔や中に入って窓から見た様子からは、あの某テーマパークのお城のモチーフになった古城を頭の中で勝手にイメージしている。今度ぜひ全体像を見てみたいものだ。


 それで現在、私とアルク、マリーエさんとエミール君、ロイさんも一緒に案内されて城内を歩いているんだけど、目的地までが遠いこと。お城が広いのも考え物だよねぇ。


 ロイさんが言うにはあまり目立たないように通路を選んでるらしい。それでかなり遠回りになっているみたいだけど、それにしたって広すぎだよ。掃除とか大変そうなんて思ってしまう。


 でね、なんかかなり奥まった区域に入り更に階段を上っていくと、今までとはまた違う更に高級感漂う空間に出た。なんというか廊下が豪華過ぎるし警備体制が他と段違いなんだけど……。これってさぁ、やっぱりそういうことだよねぇ。


 案内されるままに廊下を進んでいくと、見慣れた顔がそこにあった。


「ようこそ王都へ。通信しているからあまり久しいとは感じないが、こうして直接会うのは久しぶりだな」


 そう言って笑うのはいつもの笑顔が眩しい殿下でした。殿下は突き当りのそれはそれは立派な扉の前に立っていた。どうやら自ら案内してくれるつもりらしい。


「さあ、行こう。父上がお待ちだ」


 うぇーん、やっぱりですよねぇ。行きたくないよぅ。


 ここから先は私とアルクだけが進むんだって。え、私も残りたいと思ったけど許してもらえなかった。みんなにいってらっしゃいされ、泣きそうになりながら開かれた重厚な扉をくぐる。そして更に部屋の奥の奥へ進んで行くと高級そうな応接セットに優雅に腰かける男性が一人。


 なんか凄い存在感。この人が、国王……。


 組まれた長い足、顔に片手を当てて目を眇め、薄っすら微笑みながら私達を迎えてくれたのは、美しい顔の男の人。金の髪に青い瞳、殿下と同じくキラキラ眩しい王族オーラに半端ない威圧感。はっきり言って超怖いです。


 アルクの背中に隠れるようにして部屋に入ったのに、いつの間にか陛下の前に突き出されていた。アルク酷い。


 そう言えばアルクはここに来るのは初めてだって言っていた。おじいちゃんと一緒に来たりしなかったのかなって思ったら、「面倒だから行かなかった」って。今回は私が心配だから付いて来てくれたそうで、居てくれて良かったって本当に思ったよね。こんなの一人じゃ絶対に無理。


「……君がリカか……。色々と話は聞いている、会えて嬉しいよ。それにそちらは……」


 陛下が後ろのアルクに視線を動かす。


「まさかこの目で精霊に会えるとは思っていなかった……ようこそ我が国へ、君達を歓迎するよ」


 にっこり笑顔がとても怖いし圧が凄い。


「……こ、こんにちは……」


 なんとか言葉を発せただけ褒めて欲しい。あれ、それとも勝手に話したりしたらいけないんだっけ?


「…………」


 横たわる沈黙。


 えーん、なんなの一体。あ、もしかして跪くとかしないから不敬とか思われてる? いやでも、後ろでアルクが支えてくれてるけど、今動いたらなんか倒れそうだし段々気持ち悪くなってきたんだけど。えー、どうしたらいいのこれ……。


「父上、その辺にしておいて下さい。リカが困っている」


「うん? せっかくこれから楽しくお話しようと思ったのに……これじゃ駄目かい、ギル君?」


「駄目ですね。それにリカには効かないし嫌われますよ」


「そうか、それは困るな……ふむ」


 私の方に向き直った陛下の周りから突然フッと何かが消えて空気が軽くなった。え、何これ?


「すまないね、少々悪戯が過ぎたようだ。いや~、少しは威厳のある姿をと思ったんだけどねぇ」


 ギル君に怒られてしまったよ、はっはっはって笑う陛下。


 ギル君=ギルベルト殿下なのは分かったけど、なんだ悪戯って。さっきまでの威圧感や気持ち悪い感じがなくなったけどそれのこと?


 というか会ってまだほんの僅かな時間しか経ってないのに、既に凄い疲労感。


 おうちに帰りたいよぅ……。




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