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 結局、午後の話し合いで私は王都に行く事が決まってしまった。はぁ。


 まあヒナちゃんの為だから別にいいけどね。


 彼女とはこれから毎日、最低一回は話をすることになった。彼女の精神安定の為と情報の引き出しをして欲しいと殿下に頼まれている。シュライデンでの事件をうやむやには出来ないらしい。


 という訳で、私達は王都行きの準備をしているんだけど……。


 馬車などの手配はマリウスさんにお願いした。マリーエさんはもちろん付いて来てくれるそうなんだけど、エミール君やロイさんも同行しますと言ってきた。ロイさんは元々お家があっちなんだろうけど、エミール君はいいのかね。


 だけどね、そんな中でロイさんが「全員で行く必要はないですよ」って言ったことでマリーエさんとエミール君にめちゃくちゃキレられてた。


「ま、待ってください、違いますって。私が言いたいのはリカ様の御力があれば全員で移動する必要がないという事ですっ」


 ロイさんが慌てて否定して納まったけど、二人ともちょっと剣に手を掛けてたの見たよ。流血沙汰はやめてね。


 ええとつまりね、今回は私が以前にちょっと思った「馬車内で扉を使えば到着までガイルにいてもいいんじゃないか」っていうのを実際にやろうというのだ。


 これだったらみんなの負担が少ないって事なんだけど、まあ実際可能だし前とは状況も違うからね。それに今回はのんびり旅ができる訳でもないし、長時間馬車に乗るのは確かに勘弁してもらいたい。なので楽させてもらいましょう。



 という訳でまずは懸念事項、鍵の保存機能が本当にあるかどうかを確認することにした。もうダンジョン以外で扉を使うことは決定なので検証することにしたんだけど、数日前の私達の葛藤は何だったんだろうねぇ……。


 うん、まあとりあえず、やってみよう!


 まずガイルの家からダンジョンへの扉を出す。一度開いて一応最後のお別れだ。もう先に進めないかもしれないと思うと残念でならないらしい。みんなかなり未練のありそうな顔で扉の向こうを見つめていた。


 で、扉を閉じて鍵を閉める。どうか上手くいきますように……。


 次に実験だからどこでもいいんだけど、とりあえず外に出て扉を出した。繋がった先はいつもの家の中だ。さあ、これでいつもだったら上書きがされたはず。


 もう一度、今度は家の中から扉を出す。開くとそこは先ほどの外だった。うん、ここまではいいよね。


 この次なんだけど、このまま扉に鍵を使っても鍵が閉まるだけだ。なので一度扉をしまい、「さっきのダンジョンの扉」と念じて扉を出してみる。この辺りはどうすればいいのか分からないので、とにかくやってみるしかない。


 まずはこの扉が開くかどうかだ。みんなの間に緊張が漂う。


 ドキドキしながらノブに手を掛け回してみた。


 ガチッ、開かない。


 おお、これは……みんなの顔が少し明るくなる。


 今度は鍵を差し込み……ガチャン、開錠。


 そして扉を開いたその先は……


 ダンッジョンッ!


「やったー!」


 みんなでぴょんぴょん跳ねて喜んだ。


 その後も検証を続け、ダンジョンの扉に鍵を掛け、もう一度普通に扉を出したら外に繋がった。あと保存できるのが一か所だけなのか複数可能なのかも確認した。せっかくダンジョンの扉は保存できたけど、他にも鍵を使ったら行けなくなる可能性はあった。だけどこの際、リスクは承知で今後の為にも色々やってみたのだ。


 緊張しながら試した結果、私達の希望通りに複数地点の保存が可能なことが分かった。ちなみに出すことが出来る扉は一度に一枚。複数の扉を同時に出すことは出来なかった。それから扉はあくまで外と家を繋ぐので、保存した扉を外で出すことも出来ない。あと鍵は毎回掛ける必要があることも分かった。ちょっと面倒くさいしうっかり忘れそうで怖い……。


 それとねぇ、ダンジョン内で扉に鍵を掛け、先に進んで新たに扉を出して帰っても扉は保存出来たんだよね。家から前の扉を出して開錠したら進む前の場所に出た。どうやら鍵は両側どちらからでも施錠、開錠が可能らしい。なんでもっと早くこの可能性に気付かなかったんだろう。これならすぐに試すことも出来たのにって、嬉しんだけどみんなちょっと複雑な顔してた。


 えーと、そんな感じで懸念事項は片付き、みんなの気分も上々だ。鍵の閉め忘れだけは注意が必要だけど、またダンジョンも行けるし可能性がものすごく広がったと思う。


 ていうか鍵すごい、めちゃ便利! いやっほうっ!!



 あとそういえば前に疑問に思ったボート問題。


 ボートの上で扉を使ったあとにそのボートがひっくり返ったり破壊されたらどうなるのかっていうやつね。あれもついでにやってみた。


 とはいえボートではなく壊れそうな馬車があるというのでそれを使ったんだけど、横倒しの状態だと地面に対して平行に、馬車の側面を床にして扉は出せた。何度か試したけど、どうやら最初に出した扉の角度が維持されるみたいだ。


 あと破壊された場合ね。こちらは馬車が壊された場所に扉は出た。行き先不明とかで使えなくなるのかなと思ったけど、そうではないみたいだ。


 残骸とかを片づけても馬車が最後にあった場所が出現場所になり、空中ではなく地面に着いた状態で扉が出たので意外と安全設計だということも確認出来た。ただ、湖とかの場合は水中に扉が出ることはなさそうだけど、地面はないからやっぱり使うのは要注意だと思う。


 ロイさんは検証が出来てとても満足しているようだった。こういうの本当に好きだよね。


「素晴らしい」


 そう言いながらも「馬車を分解して別の場所で組み立てたらどうなるんですかね」とか、まだ色々やりたそうだったけど、キリがないので一旦検証は終わりにしてもらった。


 どうしてこんな仕様なのか扉の謎は多いけど、今後の為にも機能を知れて良かったと思う。これからもいっぱい有効活用させてもらおう。



 そんな感じで無事に扉の機能確認も終わり、さっそく王都へ向けて馬車が出発する事になった。


 今回は早さ重視の小型馬車を使用するんだけど、実際に移動するのは御者さんとロイさんだ。なんだか申し訳ない気がするけど、調べることなどもあるから構わないとロイさんは言う。


 最初に私が馬車内で扉を使って、あとは道中の要所要所でロイさんが連絡をくれてそこで扉の地点登録をすることになっている。これで今後はすごく便利になるはずだ。


 ロイさんは「観光などは今度ゆっくりできますよ」だって。


 いいねー、それは凄く嬉しい。今は時間がないけれど、今回の件が解決したらみんなでのんびり見て周りたいなと思う。


 うん、楽しみが増えるのは良いこと!




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