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 ガイルは良いお天気です。


 今日は久々に市場に来ている。


 アルクとマリーエさんも一緒だ。


 先日ね、突然騎士団長が米の袋を担いでやってきた。それを見てロイさんやエミール君、マリーエさんまで何やら色々持って来てくれたので食材はそれなりにあったりする。


 だけどそれでも足りない物とか買い足したい物はあるんだよね。それに活気のある市場を歩くのは面白いし。


 買い物しながら店先でおしゃべりしたり、相変わらず賑わっているコルネさんのお店でパンを買ったり、あちこち歩いて周っているけど、うん、とっても楽しいです。


 今回はね、土鍋をいくつか買い足しました。ガイルの一般ご家庭では土鍋を使ってご飯を炊くそうなんだけど、私も使ってみたら炊き上がりが早いしふっくら美味しいしで最近はよく使っている。


 これもおじいちゃんの持ち込みらしいよ。形はまんまだし、なんとなくそうじゃないかと思ったけどね。


 みんなご飯はいっぱい食べるから私の小さな炊飯器じゃとても間に合わない。なので大きな土鍋でいくつもご飯を炊いておいて、それを土鍋ごと収納しているんだけど、最近持っている土鍋の数でも足りなくなってきた。


 だから追加で購入したんだけど、私どれだけ土鍋持ってるのって感じだ。ご飯の消費量が半端ないです。


 あと本当はお皿も欲しい。


 実はね、先日ちょっと手が滑ってしまっていくつか割ってしまったんだよねぇ。旅行に行った時に買ったお皿で、色合いが綺麗で気に入っていたのですごくショックだった。


 少し前にネットでお鍋と一緒に少しお皿も買ったんだけど、そんなこともあってもう少し買い足したいなと思っている。ただね、市場で探してみたんだけど陶磁器類は見当たらなかった。あるのは木製品ばかり。


 土鍋を買った店で聞いてみたんだけど、ガイルの食器事情というのかな、一般ご家庭で使用されているのは木製のお皿だけらしい。落としたりしても割れにくいし、何より値段が手頃だからだそうだ。


 そう、陶磁器は高いんだよ。平民の家庭では使われていない。


 ガイルの家には普通に陶器のお皿やカップが置いてあったのでちっとも気付かなかったよね。だけどそういえば、飲食店はどこも木製の器だったなと思う。


 陶磁器を使う貴族などは、それぞれ専属の職人と個別に契約を結んでいる。だから窯元が町に店を構えることはないそうだ。


 それに前にカランで展示品を見たけど、どれも真っ白いお皿に模様や家紋なんかが入っている高級そうな揃いのお皿ばかりだった。


 私が欲しいのはそういうのじゃないんだよねぇ。もっと素朴な感じのお皿が欲しい。どこかで作ってないかなぁ。それこそ、この土鍋を作っている所とかで焼いてくれないかななんて思う。


 まあそんな訳で、今回は木製のお皿やカトラリーを試しに少し購入することにした。


 目的の物がなくて残念だったけど、木製ってぬくもりがあって可愛いよね。なんだかカフェっぽいというか料理がお洒落に見える気がする。こちらの人にしたら見慣れているかもだけど私としては結構満足だった。


 その後も散歩がてら色々品物を見て周って、ちょこちょこ買い物をしていった。


 うん、お買い物はやっぱり楽しいね!



 そんな良い気分で家に帰ってきたんだけどねぇ。またしても例のアレが光っていました。


 えぇー、これ出ないと駄目?



 アルクとマリーエさんに促されて鏡に手を置いた。連絡してきたのは殿下だった。


「……ふむ、一応元気そうではあるな」


 なんかね、ちょっと私の顔をじーっと見て、一言目がこれだよ。なんだろうね?


「はぁ、まあ元気ですよ?」


 ご用件は何でしょうね。


「そんな嫌そうな顔をするな。私を見てそんな顔をするのはお前くらいなものだぞ」


 殿下が苦笑する。


 それはスイマセンね。


 別に殿下の事を嫌っている訳ではないんだけど、この通信に慣れないのと、なんとなく色々見透かされそうなこの人が苦手なだけだ。


「以前話した迷い人の件だ」


 本題に入るらしい。だけどおお、迷い人!


 すっかり忘れていたけど、そういえばどうなったんだろう。最初に話を聞いてから随分時間が経っている気がする。


「うむ、まあ発見場所のシュライデンで色々あったらしくてな。あちらでの滞在がかなり長引いたのだが、昨日中央領に着いた。私も初めて会ったのだが……」


 なんだか殿下が難しい顔をした。


「分からない言葉も多く会話には苦労している。あちらの考えを正しく理解する為にもリカの力を借りたい」


「それは別に構いませんけど……。この鏡でお話とかすればいいんでしょうか?」


「ああ、頼む。私も立ち会うつもりなのでこちらの言葉も伝えてもらえると助かる」


 面会は明日、時間などの詳細はロイさんが教えてくれるとのことだった。


「それで、一体どんな人なんですか?」


 前回も聞きそびれたと思ったんだけど、なんだろうね、殿下がちょと変な顔をした。


「うむ、女性だ。十六歳で名前はヒナ。ニホンジンだと言っているそうだ。ただ、なんというか……まあ慣れない状況で気が立っていると思うのだが……少々暴れている……」


 は?


 暴れてるってどういうこと?




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