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 えーと、マリーエさんに求婚してきた面々はもれなく騎士団所属の騎士達でした。


 以前、騎士団長さんにお願いしたのは「マリーエさんの思い人」をこのパーティーに呼んでもらうこと。


 実はマリーエさん、騎士団の中に結婚を考えた男性がいたらしい。これは役所のネロさん情報なんだけど、前にマリーエさんとお酒を飲みに行った時に聞いたそうだ。恋バナ、仲良いよね。


 ネロさんの名誉の為に言っておくけど、別にネロさんがおしゃべりな訳じゃないよ。ちゃんと調査の結果そういう人が居るらしいと分かって、どうしてもと頼み込んで話してもらったんだから。


 二人は両想いではあったけど、お互い奥手なのとマリーエさんの家の家格が高すぎて男性がちょっと躊躇したらしいんだよね。で、もどかしい時間を過ごすうちにあの契約が結ばれてしまい、マリーエさんは男性と距離を置いたそうだ。


 貴族同士だと政略結婚とかがあって想い合っても結ばれないことはある。仕方がないことだと諦めるほかなかったんだけど、そんなに簡単に想いが消えることなんてない。職場は同じだから顔を合わせることもあって、感情を出さないよう振舞ったそうだけど……辛いよねぇ。


 今回、作戦を決行するにあたってマリーエさんへのフォローとライナスへの更なるダメージ、あとは今後また契約の履行が可能な状態にしない為にフランツさんの投入を考えた。


 もちろんフランツさんの思いを確認した上でだよ。その為に騎士団長さんに意思確認やパーティーへ引っ張り出すとか諸々をお願いしたっていうのに。これはさぁ……。


 上手くやってくれたと思ったのに、なんでこうなるかなー?


 マリーエさんが実はモテモテだった事はよく分かったけど、何もせっかくの感動の場面を邪魔しなくてもいいのにと思ったのは私でだけではないと思う。ほんとにもうっ。


 それにしても、ライナスはこの事態を見て何を思うんだろうね。彼女の魅力が分からないなんて本当に可哀想な人だ。まあ着飾ったマリーエさんが素敵すぎて婚約破棄を撤回、なんてことにならないかを少し心配したんだけど、計画通り進んでくれて良かったのかな。



 さて、デイルズ家はマリーエさんとライナスが婚約したことで契約の内容には従っている。けれどライナスが婚約の破棄を宣言したことでボーグ側が自ら契約を放棄したことになった。


 もしこの時にリリーナさんが婚約していなければ、契約上リリーナさんとライナスの婚約は必要だけど、エミール君と婚約中となるとこちらが優先されるのでライナスはこれ以上何も出来ない。


 そう、つまりライナスは詰んだってこと。


 デイルズ家の娘のどちらとも婚約できない、婿入りできない、後継者になれない、乗っ取りができない。計画が丸潰れだ。


 今も会場で真っ白になって座り込んでいるけど、彼は父親にも見離されるかもしれない。これからどうするつもりなんだろうね。


 ボーグ家の人々は既にライナスを残して姿を消していた。主催がいなくてはこのまま自然解散となるだろうけど、こんなスキャンダルは滅多にないことだ。今後の社交界での話題になることは間違いなく、少しでも詳細を知りたいご夫人達や領主一族とお近付きになりたい人々でデイルズ家やエミール君の周りは人があふれていた。


 適当にあしらって早々にこの場を去るのが正解だろうけど、みんなあの場から抜け出せるんだろうかって、ちょっと心配してしまう。


 私も長居は無用と思ったんだけど、滅多にない機会だし少しだけ楽しむことにした。計画は成功したしちょっとくらい良いよね?


 気になっていたのはパーティー料理。どんなものがあるかすごく興味があった。ちなみにカランの時は周りを護衛に固められていてそんなものを楽しむ余裕はなかったです。


 会場に設置されたテーブルには美味しそうな料理が並んでいた。こういう場所ではお酒は飲むけど、あまり料理には手を付けないものなんだろうか。あまり減っていない料理を見るとすごくもったいないなと思ってしまう。


 全体に肉料理が多いかな。肉の種類は違うけど、焼いて味付けは塩っていうのがほとんどみたい。流石に飾りつけは綺麗だし見た目は良いんだけど、少しずつ味見をしたら味が単調過ぎてつまらないと感じてしまった。


 デザート系も同様。パウンドケーキみたいなものやワッフルみたいなへこみのある焼き菓子とかクッキー類。あとはドライフルーツが何種類かあったけど、なんだか華やかさにかけるというか寂しい感じがした。


 味も微妙かな。アルクのお菓子を食べ慣れているとどれも物足りない。それにデザートって言ったらもっとこうキラキラ感が欲しいなぁと思う。アルクも眉をひそめてかなり不満そうだった。


 あ、唯一美味しかったのはエッグタルトみたなパイ。一口サイズで食べやすかったしサクサク生地とカスタードクリームが美味しかった。


 うーん、パーティー料理でこれって貴族の食事は美味しい物が少なそうな感じがするなぁ。それとも普段の料理は違うんだろうか。


 平民と貴族では食生活が違いそうだし、独特の料理とかがあったら知りたいなと思っていたんだけど、あまり期待できなそうだ。すごく残念。



 さて、そろそろ帰ろうかなと思って会場を見回すと、まだデイルズ家やエミール君の周りの人だかりは絶えていなかった。大変そうだなぁ。あといつの間にかライナスが居なくなっていた。使用人にでも回収されたのかな。


 私はお先に失礼しようと出入口の方に行こうとしたんだけど、ちょうどその時、会場の奥の少し高い位置にある扉が突然大きな音を立てて開いた。


 何事だろうと視線を向けると、居ないと思っていたライナスがその扉から出てきた。だけど何だかちょっと様子がおかしい。


 なんだろう、目の焦点が合っていないような……



 えー、これはなんだか、嫌な予感?




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