表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/34

3,少女のときめき

 美術室のドアを閉めた後、飽海黒江は歩き出す。

 歩きながら考える。


 彼だ。


 口の端がつり上がる。

 右手を口に当てて表情を隠す。


 いけない。

 これじゃ一人で笑う頭のおかしい子だ。


 だが顔から笑みは消えなかった。

 消せなかった。

 それくらい心がときめいていた。


 最近なにを見ても描きたいと思わなかった。

 なにを描いても前に一度描いた気がした。

 

 でも、彼は違う。

 彼を見た瞬間、ビビビときた。


 快晴の空のように澄んだ青い瞳。

 降り積もる粉雪のように白くきめ細やかな肌。

 光の加減で輝きを変える銀色の髪。

 触れれば倒れてしまいそうなか細い体躯。

 それらすべてが調和して生まれる無垢と清純。


 描きたい。彼のあらゆる表情を描きたい。

 心が躍る。胸が高鳴る。


 こんな気持ちは久しぶりだ。

 『真珠の耳飾りの少女』を見たときみたいな。

 『日傘を差す女性』を見たときみたいな。


 いや違う、それ以上だ。

 彼は私が今まで見たなによりも美しい。


 階段を下りながら考える。


 今描かなければ。

 人は時間の流れにはあらがえない。

 あの美しさは今だけのもの。


 職員室のドアの前に立ち、飽海黒江は考える。


 彼を私のものにしなくては。

 どんな手を使ってでも。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ