第5話 天井アゲイン
「知らない天井だ。。」
「それはもういいって言ったじゃろう。」
僕が居るのは高級そうな宿のその奥の一室。そこはVIPオブVIPしか入れない宿主の部屋の中。さっき高級そうって言ったけれど、実際に高級なんだ。
具体的に言うならここで一晩過ごすだけで金貨10枚は降らない。値段にして60万G。下級士官の月収の3倍に等しい。
「気持ちいいかい坊?」
「ノーコメント」
そんな超、超、超弩級の高級宿で僕は何をしてもらっているのか。
膝枕して貰っているんだ。
・・・ちょっと首が痛いけど、男の浪漫の為に我慢する。
そもそもの話、成人女性と13歳の男の子じゃ膝枕は無理なんだ。でも男の浪漫ていうブースターが、痛みを緩和してくれる。。。筈。
「で、本当の所はどうなんじゃ?」
「とても気持ちが」
「本当のところは??」
双眸と双眸がくっつくように近づき合い、僕は気まずさのあまりプイと横を向く。
「……首が、かなり痛いよ。」
「そうかそうか。」
だから何故笑うし。
ペルの顔を見ていると、取り繕うのも馬鹿らしくなってきたな。
「・・・正直さ、そこまで膝枕に浪漫感じてないんだよね。」
「それなのにそれがご所望だったのか?新しい形の被虐趣味じゃのう。」
「酷い風評被害だね。断固抗議するよ。」
「ちょっと待っておれ。…ほれ。」
痛みに顔を顰める僕の顔を見ながら、膝の位置をずらしながら柔らかい太腿を僕の頭の下に敷くペル。お陰で痛みがかなり緩和した。
無視かい、とか思ってごめんね。
「・・・ありがとう。生き返ったよ。」
「そんなに痛かったかの?」
「・・・かなり痛かった。お陰さまで今は大丈夫になったけど。」
僕の言葉に呆れた様な顔をして目を覗き込んでくるペル。蒼炎のように煌めく彼女の瞳に、僕は目が離せない。そんな僕をお構いなしに彼女はその若葉のような瑞々しい唇から言葉を織りなす。
「だから辞めて置けと言っておるのに。男はこういう膝枕なんぞに浪漫を抱くが、考えれば首を痛めるという事に気付くじゃろ?」
あまりのいいように、ちょっとムッとした僕は口をとがらせて反論する。
「それでもしたくなるのが浪漫なのさ。女の人だって宝石をジャラジャラ付けたいって誘惑に駆られるでしょ?付けすぎると却って下品に映るのに。」
ヒールだって不思議だ。あんなの歩きにくいだけじゃないか。
「そういうものかの。」
「そういうものさ。」
男のロボット。女の服選び。筋肉に身長、体重に髪色。なんかよくわからん執着心っていうのはあるよね。理由なんて全く無いけど、なんとなくそれに執着するんだ。本能なのかな?
膝枕に執着する本能っていやらしすぎるな…。
でもペルは僕の言葉に納得したのかくすりと口角を上げて微笑む。
「ふふふ、本能か。。。確かにそうなのかのう。」
「でしょ?」
「じゃが。。。。」
じゃが。。。?
ペルは何ともいえぬ表情で僕を見る。
「‥…膝枕に執着する本能っていやらしすぎるのぅ。」
「でしょうね。。。。」
ペルもそう思うんだね。。。
「それにしても、始めはあんなに警戒していた坊が膝枕を要求するほど妾に懐くとはのう。」
懐かしいそうに遠くを眺めて物想いに耽るペル。その何でもない動作ですら様になるのが彼女の凄い所。
そしてそんな様子で僕の黒歴史を抉ってくるのは虐めかな?
「やめてよ。誰だって始めは警戒するさ。美人が半裸ですり寄ってきてるんだもの。色仕掛けを警戒するさ。」
「半裸ていうなし。そんなこといったら水着や踊り子の衣装は裸になってしまうじゃろう。」
「違うの?」
肯定しようとしたけど、話の流れ的に疑問形に修正した僕。こういう咄嗟の判断がこの先の明暗を分けるんだ。
答え合わせをするようにペルを見れば…口をあんぐり開けている。
「違うぞ!?それにこれは伝統ある巫女服じゃからな!?殴るぞ!?」
「ごめんなさい。。。」
そしてこの判断は正しかったわけだ。あぶねえ。




