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弟が優秀すぎるから王国が滅ぶ  作者: 今井米 
末っ子は甘えんぼ
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第8話 来ます。

「ご苦労様、ローズ。」


「は‥‥かは!!???」


心臓を腕で貫かれてことに気付いたのか、口をパクパクさせてるケタミン君。。そしてその後ろでローズがキメ顔している。貫手が決まって嬉しかったんだね良かったね。貫手て難易度高いものね。


「な、なんで。。。」


「ごめんねケタミン君。ちょっと君は知りすぎたんだ。」


魅了の言霊云々は王国の国家機密である。


そりゃそうだわ。ノーリスクノーコストで人の気持ちを誘導できるなんてチートだ。そんな強大な力を国は全力で隠すに決まってるわ。


だからこそ影長達はファイーブを出生した瞬間に殺そうとしたんだよね。庶子の上に魅了持ちなんて爆弾すぎる。


「…で、そんな事情の末端とはいえ君はそれを知ってしまったわけだ。そしたら処分するよね普通。」


「......そ.....そん.....な理由....で。」


「そんな理由で、なんて酷いな~。大切かどうかは人によって違うんだよ?君がしょうもないと思っていても、僕にとっては命よりも大切なことなのさ。」


「他人の命よりも、ていう注釈が付きますけどね。」


まぁね。自分の命を比べたらちょっと迷うよね。


「兎に角、そういう理由で消えてくださいケタミン君。今までお疲れさまでした。」


「あの世でゆっくりお休みくださいっす。」


俺の礼に倣うように、ペコリとローズも頭を下げる。


「君に頼もうと思っていた仕事は、別の人間に回すことにするよ。別に君だけに頼む必要は無いしね。」


「こ.....の悪....魔め…!!!」


ちょっと何いっているかわかんない。俺ほど善良な人間はいないというのにさ。


ローズが死体を処理している傍ら、書類の仕事内容を確かめる。ケタミン君に頼もうと思っていたのは、国外からの流入者の調査。今回みたく、帝国とかが廃品処理みたいな感覚で送ってきた害悪野郎が他にもいないとは限らない。


そういった人間を把握しておきたいのだ。


‥‥まぁ、影が殆ど把握しているのだが。しかし、情報源が一つだけというのはやはり心許ない。二重チェックも兼ねてこうして外部に委託するのが俺のいつもの方法。


で、今回は大親友の一人であるケタミン君に任せようと思ったんだけど、不慮の事故で死んでしまった。南無。


俺が死者への黙祷を捧げていると、埋め終わったローズが俺に声を掛けてくる。


「王子、終わったっすよ。」


「そっか。じゃあゾピクロン君を探すか。」


「ゾピクロン君て誰すか?」


誰って、そりゃあ当然‥‥。ああ、そうか。


「ローズはまだ知らないのだっけか。ジアゼパムファミリーのNo2。ケタミン君のいわゆる片腕だよ。今後は彼に頼み事をすることになるからね。」


筋書きはこうだ。スイートビ君を確保しようとしたケタミン君。無事確保したものの、ケタミン君はスイートビ君が死に際に放った攻撃で致命傷を負う。


組員の皆には元気な姿を見せたものの、今晩お亡くなりに。こうしてケタミン君が不慮の事故で逝去なされた以上、今後はゾピクロン君がジアゼパムファミリーを仕切ることに。



なのでジアゼパムのNo2であるゾピクロン君に今後はお願いを聞いてもらうわけだ。


というわけでゾピクロン君を見つけて、ケタミン君とスイートビ君の死闘を泣きながら伝える。


ゾピクロン君は表情筋が死んでいるので俺の話には一切無表情。氷よりもクールだね。一通り事情を伝えた俺の言葉を聞いてゾピクロン君が放ったのはたった一言。



「それでボスはどうなった?」


「残念ながら…。今晩もったのが奇蹟だったとしか言いようがないほど奮闘したのだけれど‥‥。」


ウチのローズのせいで死んじゃったなんて言えないよね。


「そうか。。。」


「ごめんね。」


「いや、いいさ。相手はあのバルビツールファミリーのボス『不滅』のスイートビだったんだ。」


スイートビ君そんな壮大な名前ついてたんだ。『不滅』て。

面白すぎる渾名に対する笑いを堪えながら、俺はゾピクロン君に頭を下げる。


「まあそんなわけで、今後は君が必要なんだ。」


「俺が、ボスか。。。」


「頼めるかな。」


「ああ。勿論だ。ケタミンが作った組織をここで潰すわけにはいかない。」


「有難う!」


チラリと見れば、闘志に満ちた目をして空を見ている。

いやぁ。スーパードライだと思いきや、案外熱い奴だ。


「それでね。今までジアゼパムファミリーに外注していた仕事なんだけど、今後は君に伝えることにするね。」


「勿論だ。ところで一つ良いか?」


「ん?何だい?」


「俺への見返りはどれだけくれる?」


「は?」


ゾピクロン君の言葉を聞いて彼の顔を見て驚きだ。これ以上なく強欲な顔付きじゃないか。


「だから見返りだよ、み、か、え、り。ケタミンの奴は何故か無償でお前の言う事を聞いていたけれど、俺にはそんな義理はない。正当な報酬を求めるね。」


ふむ。俺のいう事を聞く代わりに、何かご褒美をご所望と。

さっきまでスーパードライでクールとか言ってゴメン。ちゃんと人間臭いね君。


「…殺さないであげるっていうのは?」


「それは見返りにならないな。それなら取引は不成立だ、俺を殺せ。」


「…自殺願望者なのかい?」


「いいや。だがお前が俺を殺すのは無理だろうな。」


勝ち誇った顔で俺等を見るゾピクロン君。


「図星だろ?俺を殺さないのは殺したら困る都合がそっちにあるんだものな?そうじゃなきゃ俺をさっさと殺している筈だ。」


「だから俺等が譲歩しろと?」


「人聞きの悪いことを言わないでくれ。ビジネスの話をしようと言っているんだ。」


ビジネス…ね。ウチのローズはそういうの理解できない子だから今にも襲い掛かりそうなんだけどそれ分かって言っているかね?


「この!!!何を言ってるっすか・・!!」


ほら。


「落ち着きなよローズ。労働には対価を。彼の言っていることは至極当然のことだ。」


「でも・・・・!!!」


「黙りなさいローズ。」


「・・・・うす。」


不承不承という様子を隠しもせずに黙りこくるローズ。うーん、やっぱりこういう所はシェードちゃんに劣る様なぁ。。


まぁ、かといってここでローズが襲い掛かって困るかというと、そうでもない。


別にゾピクロン君じゃなくてもいいんだよね。だからまた首を切り替えて別の人間にしてもいいんだけど…。まぁ、ゾピクロン君の方が都合が良いんだよね。



「ごめんねゾピクロン君。うちの子はああ言っているけど、俺は君のそういう所も(・・・・・・)好きだよ。安心して、当然君にもメリットがあるから。」


「ほほほぉ。」


メリットという言葉に即座に顔をほころばせるゾピクロン君。現金だなぁ。


「具体的には?」


「マルタ村に住んでいる君のお母さんが明日死ぬことは無いよ。」


「…は?」


ふむ。反応を見る限り喜んでくれたようだ。良かった良かった。


「あと君が密かに関係を持っている愛人シャーロットは暴漢に襲われる心配はしなくていいし、その美人さんに産ませた今年2歳になるホームズ君がうっかり死ぬことは無い。」


サプライズ!てね。こういうプレゼントに喜んでくれるゾピクロン君で良かった。現に先ほどからは乖離した驚きの表情だ。


「‥‥なんで。」


「なんで?君のお母さんの住所と名前を知っていること??それとも必死に隠した愛人のことを知っているから??それとも息子さんの年齢を知っているから??駄目だよゾピクロン君、秘密は大事にしまわないと。」


「俺は、、絶対にバレない様に隠したはずだ。現にケタミンだってこのことを知らなかった!!何で、何故あんたが知っている!!」


これはまた異なことを。


「それが権力であり、財力さ。それ以上の答えが必要かい?」


「こんなの対価じゃない!これは脅しだ!」


「とんでもない!!これは俺からのご褒美だよ。」


「ご褒美?」


「そうさ!俺は君を守りたいんだよ!」


「守りたいだと。。。。。!?」


ああ、何故話が通じていないのだろうか!!俺はこんなにも誠意を込めて話しているというのに!!


「俺は君が不憫で憐れでもう気が気でなくてね。君だって人を食い物にするく

せにこんな弱みがあっちゃ毎日が心配で心配で仕方が無いだろう??だからこそ、俺が全身全霊で君の弱みを守ってあげようと思ってさ。なに、安心しなよ。俺は約束を守る男として評判なんだ。」


俺の誠意ある説得に感じ入ったのか。呆然と俺を見つめるゾピクロン君。そして、数秒後、ポツリと口を開く。


「確かに、お前の評判はそうだ。スリー王子。」


「…おや、俺の名前を知っているのかい?」


「この世界でお前の名前を知らない奴はもぐりだろ。」


「そうか。知り合いが増えて俺は嬉しいな。」


「…お前の噂はこれでもかと言うほど聞いている。」


噂?なんだろうか。


「天使のような慈愛の心のことかな?」


「悪魔のように狡猾で邪悪で。確かに約束を守るが確実に相手を不幸に陥れる。甘い餌をちらつかせて、詐欺師よりも強かな罠を張り巡らせている、て。」


「失礼な人がいたものだね~。」


「‥‥。」


「‥‥‥。」


ドサ!!


先ほどまでの不遜な言動が嘘のようにしゃがみこみ、ゾピクロン君は両手で顔を覆い隠す。それはまるで絶望しているよう。


でもそれはきっと気のせいだよね。俺と話しをして絶望するなんてあり得ない。


「…俺は、どうしたらいい?」


「いやだなぁ、顔をあげてよ。それじゃあ俺が君を脅しているみたいじゃないか。さっきも言ったじゃないか。君はジアゼパムファミリーのトップ。そして時々俺のお願いを聞く。シンプルだろ?」


「ああ‥‥。シンプルだな。」


「交渉成立だね!!」


「ああ…。成立だ。」



こうして、ゾピクロン君と新しい友情を育み。ランランちゃんとリンリンちゃんを目的地に送った後、俺は城へ戻ることにした。


俺は大層満足。新しい大親友であるゾピクロン君は良い子そうだし、ケタミン君の処分は前倒しに終えることが出来た。


そんなこれ以上なく浮かれている俺に、ローズはいつもの調子で声を掛ける。


「スリー様。」


「なんだいローズ?」


「今度はゾピクロン君が事故死するんすか?」


「さぁ?そんなの俺に分かる訳ないだろ?」


全くなんて不謹慎な。俺の大親友が事故に遭うなんて!


「‥‥その時は、ゾピクロン君の家族はどうなるんすか?」


「うーん、俺は未来のことは分からないけどこの物騒なご時世だからね~。一緒に消えちゃうんじゃないかな?いいじゃない。天国で一緒に暮らせるのだから。あの子もきっと本望だろうさ。」


ゾピクロン君が天国に行けるかは微妙だけど。


「にしも絵に描いたように良い家族を持っている。ああいう便利な家族をもっている人はいいね。好きになっちゃうよ。」


「…だから、あのゾピクロン君を選んだんすね。」


「勿論。いい家族を持っている人間は、いい人間だからね。」


「成程。確かに王子にとって(都合の良い)いい人間は、(使い勝手が)良い人間っすね。」


でしょ?


良い友人を持って、俺は本当に幸せだよ。

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