第6話 笑えども勝てず
ローズの疑問に目をパチクリさせるフォー。
そしてすぐに笑った。
「ふふふ、そうね。基本的には継承戦はいつの時代にも表れる妥当で正常な現象なの。でも問題はちゃんとあるのよ。」
そう。一見いいところしか王位継承戦だけど、欠点はある。それを聞き今度はサーシャ様が興味深そうにフォー方を見る。真面目だね。。
「問題…というと?」
「そうですね。例えば、権力争いの意味を理解せずに争う奴が度々現れることとかですかね。人質、暴力、賄賂、何を使ってもいい。使わなくてもいい。原点が我欲でもいい。けど目的を理解せずに闇雲に使うだけは駄目なのです。生産性がなくなっちゃいますから。」
「つまり?」
話を促すサーシャ様。ローズはもう理解できなくなったのか目をグルグルさせている。流石にこの程度の話には追い付いて欲しいのだが。
そんなローズを後目にフォーは話を進める。
「継承戦の目的はあくまで強い組織と指導者を作ること。組織の運営がままならなくなるような危機や、指導者が次々と死んでいるような時に政争を行うのは、リターンよりリスクが勝る。こういう時は、表面上でもいいから協力し合って、問題が解決した瞬間に殺し合いをすればいい。」
これを理解せずに政争する人間がね、いるんだよね。
そういうのはするなって言っているのにね。
こういう人間がトップに陣取っていると、往々にして組織は滅ぶ。下の人間がボロボロになっているのにその現状を見ずに争っているからね。現実と理想が乖離していって気付けば組織は虫の息なんていう事例はざらにある。
王国ではそうなった場合どうするのか。
まことしやかに囁かれているのは、リセットボタン説だ。王国の影として仕える組織が無能な王族を皆殺しにして、新たな王家を神輿として立てるのだとか。
…うん。ようは影がリセットボタン役ね。で俺等がリセットされる側と。ま、噂の域を出ないんだけどね。
影がそれを実現できる力を持っていて。そして過去に不自然に王族が連続死した時代があって。それを仄めかす文献がいくつかあるってだけの噂さ。
いやぁ、笑えない冗談だよね。絶対本当のことじゃん。人のことをマジで何だと思っているんだウチの国。
と、話が逸れたね。
「…そういうわけで。継承戦は王国に不可欠な儀式。けれどもその一方で、その目的を履き違えれば毒になる。それが本質ですかね。」
フォーが話終えるとほぼ同時に、シェードちゃんが紅茶を入れて持ってきた。そして複雑な表情をしているサーシャ様やのほほんとしているローズの前に菓子も置いていく。
流石一流。気が利いているね。俺のとこには無いけど。
「シェードちゃん?俺の分は?」
「ああ、忘れていました。」
忘れてました!?嘘吐けよ!!
「そういうの、虐めて言うんだけど知ってたかいシェードちゃん?」
「…不勉強で申し訳ございません。恥ずかしながら知りませんでした。」
「フォー?」
「別にいいではありませんか。嫌がらせの一つや二つ。兄上にとっては慣れたものでしょう。」
慣れてないですけど。普通に傷つくんだが。
「ていうか今、サラッとシェードちゃんの嫌がらせて認めたよね。そういうに咎めないのて主君としてどうなのよ?」
「ちょっと、シェード。幾ら兄上の事が嫌いだからといって、そういう露骨な嫌がらせは辞めなさいよ。」
「…分かりました。次からはもっと陰湿な嫌がらせをします。」
「よろしい。」
よろしくねえよ。
フォーも何で満足気なの?俺の心はもうズタボロなんだけど。
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