第22話 ばい いもうと
あの後ローズちゃんに闇カジノの場所を案内してもらった。
そこにはカジノは存在しなかった。けどエナンチオマー侯爵が暗殺者たちに色々仕掛けさせたのは本当らしい。訓練所と、暗殺者の成り損ないみたいのがあったからだ。速攻で解体した。
ついでにエナンチオマー侯爵も確保。優雅に酒飲んでたから酒蔵に火付けて、屋敷を煙責めにしてやった。ざまぁ。
彼が私を狙った動機はシンプル。姉上に中々協力しない私に腹を立てていたからだって。そして『夜斧』はエナンチオマー侯爵の専属暗殺者で一緒に姉上の狂信者していたらしい。怖っ。
では何故ローズは私にカジノだなんて言ったのか?
なんてことは無い。見栄張って言っただけだ。まあ、見栄を張りたい気持ちは分かるよ、うん。自分が大きな会社に属しているて自慢したいもんね。誰だってそういう気持ちを持つものよ。
・・・という理由ではなく。単純にそういう設定で洗脳教育していたらしい。
ローズは自分で言っていた通り半人前のペーペー。そういう奴には本当のことを教えずそういう設定を教える。その過程で暗殺術を叩きこみ、同時にそこから徐々に『姫騎士教』の教えを刷り込ませていく。それが彼らの常套手段。
性質の悪いカルト教団だ。カジノだと思って入った従業員を洗脳するとはね。ローズの言っていた他の貴族は当然存在しない。他の暗殺者が変装しただけだってさ。
でそんな悪魔的に迷惑な彼等だが、姉上との蜜月を袖にしている私に逆切れして暗殺者を派遣。なお嫉妬が9割ぐらいの理由。マジ迷惑な奴らよ。
それがここ最近続いた暗殺ラッシュの正体。
しかし優秀な私 (のシェード)が悉く返り討ちにして作戦は失敗。
焦った彼らに実は一番強い『夜斧』自らが出陣。お供として連れられたのがローズ。
なぜ悉く失敗しているのに、足手まといを連れて行くの!?馬鹿なの!?と思ったそこのアナタ!
そうなの。イカレているだけじゃなくて頭も悪いカルト集団なのよね。
ということを姉上に話した。王宮謁見の場で、だ。姉上だけに話そうとしたら姉上にここに連れられた。私はただ騎士団と懇意にしている侯爵貴族の不正を伝えに来ただけなのに。解せぬ。
あ、そういえばエナンチオマー侯爵って父王の親友だっけ?どうでも良すぎて忘れてしまったわ。
始めは信じようとしなかった皆だけれど『夜斧』君のホラーマスクを見せたら話を聞いてくれた。私だったらあんなマスク見せられたら速攻で逃げるけどね。なぜ彼らは見ても逃げないんだろう。
で今もその説明を続けている。報告書を読めぇ。。。。。
全部口頭説明とか地獄かよ。書類にしたためた意味よ。
で、丁度今。説明が全て終わった。長かった‥‥。
「そ、そんな。エナンチオマー侯爵が。。。」
狼狽した様子を見せる姉上。気持ちは…分からんけど取り合えず同調しとく。
「ええ、姉上。お気持ちは分かります。彼は表向きは善人で通っておりましたから。」
「ああ。彼は騎士団の防具や武具も無償で貸し出し、それだけではなく多額の寄付までしてくれた。一切の見返りも求めずにだ。」
いやアナタは予算割り振られているでしょ。第二王子の職務支援費用が王室から、あと財務から予算があるでしょ?なのに何で金を無断でもらっているの。
それアウトだよ?何も便宜を図っていなくても収賄認定だからね?まあいいや。
いや良くはない。あとで調べておこう。
「‥‥それは衝撃でしょうに。」
「ああ、彼がそんな人だとは全く思っていなかった。。。」
心の底から傷ついた表情をする姉上。でもそれで彼の罪は軽くなるわけもなく。
「残念ながら彼は非道な実験を繰り返し、逆らうものを裏で残虐に処刑し。弱きものから甘い汁を吸い取る悪辣非道な下衆です!」
私は、悔しそうに唇を噛み。そしてやるせなさそうに宣言する。あくまで、信じていたのに裏切られたというポーズ。
そして私の心底傷ついたという顔をしたのと同時に、その場にいたある男が声を挙げる。
「証拠はあるのかー!!」
「何ですって?」
聞き返す私。そんな私を見て男は再度声を挙げる。
「証拠はぁー、あるのかぁー!!」
私の発言に異議を唱えるのは騎士団の財務係。騎士団がどれだけエナンチオマー侯爵から金を受理しているか報告するため連れてきた人間だ。
‥‥ヘタクソ。サクラならもっと上手に演技してよ。
当然彼は私の傘下。
騎士団ってさ。人情とか仁義とかいう言葉が大好きなんだけど、お役所仕事なクールでドライな対応は大っ嫌いなの。で経理は言うまでも無くドライな仕事。だから騎士団にハブられているのよね。
そこで私の庇護を求めてやってきたのよ。断る理由も無かったし入れてあげたよ。
で、今は私の指示通りに叫んでいる。グッジョブだ。大根役者だけど。
「証拠?証拠ですって?」
「ああ、その通りだ!エナンチオマー侯爵が悪逆非道な行為をしたという証拠は、あるのか!!」
男の声に顔を上げる姉上と父王。ワンチャンの希望が見えて、心なしか顔が明るくなっている。‥‥まぁ、無いんだけどね。
私は懐から手帳を取り出し、周囲に見せつけるようにして掲げる。
「ええ、当然です!!そうでなければこのような悲しい行為に私が出る訳がありません!ここに証拠がしかとあります!」
取り出したのは侯爵の日記。
「なぁ、そ、それはなんだぁー!!」
この下手糞。まぁいいや。
「…これは、侯爵の悪事が事細かく記された手帳です!彼の惡の手先が為した報告書が挟まっております!」
「な、なんだってー!!それは本当かぁ!!」
「本当です!なんなら写しを取ってから原本を提出しましょうか!」
なんとコイツ等は自分たちのしてきたこと全て記帳して置いてあったのね。暗号とか隠し部屋とかに置いたりもせず堂々と机の上にポンと。
そのまま侯爵の屋敷に押し入った私達はビビり倒したもんよ。だって罠だと思ったし。普通悪事の証拠は隠すでしょ?でも結局罠でも何でもなかった。無駄に怯えさせられて滅茶苦茶腹が立った。
だから改竄したった。やったのは暗殺者を派遣しただけなのに、貧民から金を吸い上げ、孤児に非人道的な実験を繰り返し、暴利を貪る悪徳領主にしてあげた。筆跡?何十ページもその人の文字があれば簡単に真似できるよ。
シェードはね。私は無理。
それにしても良かったねカルト集団達。これで裏切り者の極悪人として姉上の記憶に永遠に残るよ。嬉しいだろうな。きっと地獄でむせび泣いているだろう。
うん、いいことした後は気分がいいね。
この嫌がらせを思いついたのは私じゃない。実兄だ。相談したらお茶を入れる間に教えてくれた。やっぱりこういう嫌がらせは神がかり的に天才だよねアイツ。本気で縁切りたい。
「それで今エナンチオマー侯爵はどこにいるんだフォー?」
ナイス質問姉上。
「今は私の管轄する仮牢に連れて行き、シェードに尋問させていますね。」
「そうか。ではどうしますか父上?」
「うむ、そうだな。爵位を剥奪したのちに侯爵は牢に縛り付けておこう。いくら親友とは看過できない罪を奴は犯した。」
悲しそうに目を伏せる2人。
こうして、エナンチオマー侯爵は‥‥て、ちょっとちょっと。
私の平和を脅かして。
それで終わりはないでしょう?
「こいつの肌をやすりで剥げ!脚をナイフで切れ!腕を焼き尽くし、腹を串で刺し込めろ!顔には毒をたんまりとかけ、腹を空かせた魔獣の餌にしろ!飯には自身の脚を咥えさせろ!二度と私を巻き込もうとする奴がでないよう、撤退的にこいつを嬲れ!こいつの妻も、娘も、息子も全て家宝で切り刻め!一族郎党こいつの血が混じった者全てを、こいつと懇意にしていたもの全てを魔法で焼き、こん棒で叩き、フォークで刺し、蜘蛛の糸で天から吊るせ!それが終わるまでこいつを死なせず、甚振り続けろ!!強く、苛烈に、誰もが夢に見るほど残虐に!こいつが死を希うほどに!誰もが魘うなされるような悪夢を見せつけてやりましょう!」
「・・・以上で、王国継承第4位、フォー第四王子の主張を終えさせていただきます。」
そうシェードの締めくくりと共にエナンチオマー侯爵の裁判は終了した。
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