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弟が優秀すぎるから王国が滅ぶ  作者: 今井米 
実兄怖いし嫌い
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第10話 けれど創造は破壊から

あの後少女たちがわちゃわちゃと言ってきたが、全員を相手にするのは面倒臭‥コホン、大変なので始めに声を掛けた一人だけと話をすることに。


他の少女達は抜け駆けだの同盟離脱だの、条約違反だのいっていたが。。。正直頭可笑しいのかなって思ってしまう。王子が招待した茶会で何してるのよこいつ等。


それでもまぁ、呆れ半分で一人の少女とだけ話をしてみるかと思ったのだ。ファイーブしか目に映っていないと評判の子達が声を掛けてきた理由も知りたかったしね。


「それで、私に話があるのですって?」


「はい…でも、その。あの…。」


そういってチラリとファイーブを見る王女さん。なるほど、ファイーブには聞かれたくないわけね。彼女の意図を察した私は、さっそく望みを叶えるべく声をかける。


「ファイーブは少し私と離れて、私の代わりにシェードとお話しといてくれるかしら?」


「は、はい。」


「まさか女の子同士のお話に聞き耳立てることはないわよね?」


「勿論ですよ!」



流石に主催(ホスト)である私を無視することはできないけれど、キャンキャン吼える獣を傍に置くわけにはいかない。


だから傍観してた側近のシェードを私の代わりにファイーブと話しをさせる。




「ほら、貴方達も。ファイーブの友人でしょう?あの子の傍について行ってあげなさい。」




「「は、はい!!」」




残りのファイーブ大好きガール3人衆、雪巫女ちゃんと聖女ちゃんはファイーブの傍にいることを選んだようだ。王女さんを親の仇のように睨んでいたけれど。恋する乙女は怖いわねぇ。。


…そして私に返事する時怯えていたのなんで?ねえ、何で?




・・・・イメチェン、しようかな。



それにしても。。。


私は彼女達を見る。


ファイーブは生れが複雑だから王城内では親しい奴少ないし、今は立場的に敬遠されがち。友人が少ないアイツに友達が出来るなんて素晴らしいことだ。



と思っていた時期が私にもあったのに。



・・・アイツの友人て、この王女と、王国公爵家の雪巫女ちゃんと、教会から攫ってきた聖女ちゃんだけなんだよね。しかも全員ファイーブへの好感度が激高。




男の友人ゼロなのなんでだろうね。いや、男女間の友情は成立すると思うし、友人の性別が偏っているのが悪いわけではないわ。でも問題はファイーブ以外は友情じゃなくて恋情を抱いているっていう点よね。


ファイーブはどうするつもりなのだろう。まさかこの年で父王みたくハーレム築くのかな。そうしたら私絶対許さんよ。



父王は子育てと女関係だけはカスだからね。他は平凡。平凡て言っても王家基準だから十分なんだけどね。祖父王が可愛がりすぎたのよ。もうちょっと厳しく鍛えて欲しかった。


「あ、あの。。。」


少女の声で意識を戻す。見れば不安気に私を見ている王女。


「ごめんなさいね。ついぼーとしてたわ。」


にこりと笑いながら彼女を見れば、彼女も慌てて口を開く。


「い、いえいえ!!フォー様とお話できるだなんて光栄です!あ、あの!私はエルフの国の第二王女、エリンと申します!」


「ふふふ、そんなに緊張しなくていいわよ。ほら、座って座って。」


椅子を差し出し、エリンとやらが座ったタイミングで私も口を開く。


「改めまして。私は王国が第四子、フォーよ。よろしくね、エリン。」


敢えてフランクに話しかけて甲斐はあったのか。リラックスしたようだ。


エルフとは、長くとがった耳が特徴的な種族。森人やらと呼ばれているが、正式的な名称はⅢ型純人(サードタイプ)。私達Ⅰ型純人(ファーストタイプ)とは異なり、陸では無く森を住処とする種族。


魔力に富みその技量は他の純人種族の追随を許さない。


「それで、エリンはどうして王国に?」


「実は、はは様‥いえ女王から王国にて世界の広さを知れと命を受けまして。」


「それで、単身王国へ?凄いわね!!」


「そうですか?えへへへ。お世辞だと分かっていてもフォー様に言われると照れてしまいます。」


私の言葉に耳を赤くするエリン。

お世辞じゃないんだけどね。私だったら護衛無しで外に出るとか考えられない。怖いし。スリー兄上みたいな人間がいたらどうするんだろ。


そんな風に思いながら雑談を交わす私。誰と?エルフの国の王女とよ。なぜかって?ファイーブに向こう行けって言ったら彼女が私に話しかけてきたのよ。あれ、これさっき言ったわよね?


「それで、王国に来て世界の広さを知れたかしら?王国の一員としては、広さの一端だけでも知ってもらえたのなら嬉しいのだけれど。」


「はい!森の中とは全てが異なり新鮮でした!」


ふむ。。。

朗らかに笑いながら返事をしているエリンを見る限り、嘘を吐いているようには見えないわね。


先ほどの発言と、森の位置的のエリンは態々王国を選んで来た。しかし、普通行くなら帝国とかじゃないか?国力も、流通も、影響力も。『世界』を知るなら王国よりも帝国の方がよほど適している。。。


「興味深いわね。」


「は?」


目をパチクリする彼女に微笑みながら、私は口を開く。


「いえ、エリンが知った事を私も知りたくなったの。一体どういう所が新鮮だったか教えてくれないかしら?」


「勿論です!まず食事の数と味が違います!あの食事を知れば森の質素な食事なんて喉を通りませんよ!」


「あらそうなの?そう言われると嬉しいわ。」


「私達の森でも取れる材料だけで調理した料理もありました。それでも故郷とは天と地ほどの差があります。料理道具や火の通し方、食事に対する工夫と情熱が私達とは根本的に異なります。」


「ふふふ、それでそれで?」


話を促しながらも、私は彼女の顔をじっとみつめる。そんな私の視線に気づかず、にこやかに笑いながら彼女は言葉を紡ぐ。


「工夫と言えば、家具も私達の故郷には無い概念でした。本棚や机はあるものの、その一つ一つへの装飾。そして使用目的に即して細部が異なる構造。一番驚いたのは車輪ですね!あんな簡単な仕組みと構造なのに、あるのとないのでは大違い!故郷に帰ったら早速取り入れるつもりです!」


「それは是非試してほしいわ。私も毎日車輪に助けられているからね。あれの有難みを痛感している身としては布教してくれるのは嬉しいわよ。」


「そうですか!」


まぁ、あの森は意図的に技術の流入を制限しているから無理でしょうけど。


「それで‥‥。」


「はい?」


小声で言ったからか、聞こえなかったのだろう。だから私は、エリンの耳に口を近づけ再度囁く。


「あるのでしょう?王国の負の面が。」


「!?」


驚愕の表情で私を見るエリン。王族がまさかこんなことを聞くとは!?みたいな表情ね。


「別に取り繕わなくていいわ。どんな事にも黒い部分はある。王女として、私はそれも知りたいわ。」


「‥‥ファイーブの言った通りですね。」


「はい?」


なぜここでファイーブ?


「彼が言っていました。『姉上達は本当にいい人だって』。」


「私が良い人だなんて。そんなことないわ。。。」


こんな初歩の質問を聞いていい人扱いて。却って馬鹿にされているのかと思ってしまうわよ。


「いいえ。私の知っている王国のお貴族サマに、フォー様のような事を聞いてくる人はいませんでした。」


「そう。。。」


お貴族サマ、という言葉に皮肉と侮蔑の意を感じながらも私は彼女に話を続けるように促す。


「王国で顕著だったのは、他者への強い排斥行為です。」


「排斥、行為。。。。」


ええ、と。エリンは頷きながら続きを話す。


「自分とは異なる人間を、まるで家畜の様に扱う。蔑み中傷は言うに及ばず、殴る蹴るの暴行まで。同一部族内でさえそのような暴挙を行う。残酷な一面でした。」


「そう、なの。。。」


息を呑む私を見て、エリンは哀しそうに目を瞑り首を横に振る。


「ましてや私のような異種族への攻撃は苛烈などという言葉では言い表せません。私の成績が優秀だったこともあるのでしょう。ひどいやっかみも受けました。」


「そんな酷い事が。。。。」


「ええ、今でも思い出すと恥辱で腸が煮えくり返ります。」


そう言ったエリンの瞳の奥からは、烈火のように熱く、黒鉄のようにどす黒い怨念を私は感じた。


「ごめんなさいね。」


「え?」


瞬きをするエリン。それには構わず私は言葉を続ける。


「王国の民の責任は王子の責任よ。つまり私の責任。貴方を虐げた愚かな貴族の罪もね。だからこそ、本当にごめんなさい。私達のせいで貴女を傷つけてしまったわ。」


「‥‥貴女は、本当にいい人ですね。」


そういって貰えると、報われた気分ね‥‥上手く騙せて。私が頭一つ下げるだけで反王国感情が収まるのなら安いものよ。


「ふぅ、にしても。王族であると見えない面も多いわね。。。。」


本当に知れてよかったわ。まさか高位貴族が通う学園でそのような暴挙を曝け出す無能がいるとは。今の証言を基に学園から虐めの首謀者を割り出して、後で〆なきゃね。


そんな風に潰す方法を考えている私を落ち込んでいると思ったのか。エリンは励ますように明るい声で私に声をかける。


「フォー様。それに、嫌なことだけじゃなかったのですよ。」


「そうなの?」


私だったらどんな見返りがあっても相手を許さんし、その時を好きにはならないが。


「ええ、そんな時にファイーブが私を助けてくれたのですわ!『困っている淑女を助けるのは常識なんですよ』って言ってくれて!そん時に胸がキュッとして!」



「あらあら、ファイーブも粋な事するじゃない。」




「それでそれで、その時ファイーブは『エリンは僕がずっと守る!』て言ってくれたのですわ!その時の私はもう嬉しさで胸が一杯でしたわ!」




「まあまあ!王女様にそんなこと言うなんてあの子もかっこつけちゃって!」




で今恋バナしてる。なんてことは無い。この娘ファイーブより先に私を味方につけてファイーブとの婚縁を取りもって貰おうって腹だ。あったまいいー。




…いや良くないわ。逆に私に嫌われたりしたらお先真っ暗だし、それに技量もまだまだ未熟。私に目的が気付かれるよう程お粗末な腹芸を作戦に組み込むなんて阿呆なの?それとも自分が策士だとか思っているのかしら。




「私の目が変らしくて、それで学園でいじめられていた時も私の為に決闘を申し込んでくれたり…。」




「それでそれで?」




「決闘で勝利した後、『星の瞳を恥じる必要は無い』と言ってくれたり。」



「まあロマンチックね!」



いやこれロマンチックか?星の瞳のどこに…まあいいか。



「他にも学園祭でこのネックレス、自作で『ユグドラシル』ていうらしく、これを首にかけてもらったり。。」




「それは嬉しいわねー。」




「技名を一緒に考えたりして、『獄炎凍土』も私の名づけですのよ!」




「凄いわ!他には他には?」




話のネタは最高に面白かった。人がテンションマックスの時に言う恥ずかしいセリフ聞くのっていいわよね。ニマニマしてしまう。それに何より煽りのネタになるっていうのが良い。


この子、話のネタ選ぶセンスあるわ。


ファイーブに聞こえないために音遮結界を張りながら話してくれたネタは有効に使わせてもらおう。




「確かファイーブのお気に入りは『世界樹の懺悔』ですわね!」




「だから貴方に『ユグドラシル』なんて言う名前のネックレスを贈ったのね!」




こうして楽しい女子会トークは30分ほど続いた。滅茶苦茶いいネタ仕入れたわ。


それにしても。。。。。




「ねえ、確か貴方の国は今戦争中よね?」




そっちから来てくれて本当に手間が省けたわ。



ええ、本当に。


<誰得設定>


聖女


神の声を聞けるという教会の触れ込みの元、神の信徒として教会に神の声を届ける巫女。今代の聖女は名をレリジオンという少女で、「人の魂の清らかさ」が分かるというセールスポイントを教会は掲げている。ファイーブにくっつく理由はそこであり、彼の魂はこれ以上なくう清らかなのだそう。


彼女は現体制の教会に不満を抱いており、教会全体の魂の清度を上げたいと思っている。

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