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弟が優秀すぎるから王国が滅ぶ  作者: 今井米 
実兄怖いし嫌い
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第8話 弟は…

兄上との話を終えた私は、昼飯を取る。実兄(スリー)のような高級品を好むわけじゃないけど、私だって王族に相応しい手の込んだ高級な料理が好きだ。


「おいしい。。。。」


「フォー様はご飯を食べている時だけ(・・)は無邪気な少女ですねぇ。」


お前それは私のことをディスってないか?


けど、そんなこと今はいいんだ。些細なことなど気にならない。


今はただ、この甘美な至福の時を堪能するのみ。


やっぱり金がかかると素材の味が違う。確かに、平民街の屋台料理みたいなパンチの効いた料理も美味いさ。あれが食べたくなる時もある。けど、毎日食べるならやっぱりこっちが良い。


優しく鼻腔を撫でる香り。彩のある盛り付けは目を楽しませ、品のある味わいには感動を覚える。そんな料理が毎日食べ放題。


金持ち最高。国家権力万歳。


「シェード、午後の来客は誰かしら?」


権力者としての特権を十分に堪能しながら、私は控えているシェードに今日の用事を尋ねる。シェードも分かっていたようで、そつなく書類を取り出し私に見せる。


「本日の午後の来客は、ファイーブ王子とスリー王子ですね。ファイーブ王子とは午後のお茶会で、スリー王子とは夜の会食で一緒になります。他の緊急の来客、新たに入ったアポはございません。」



「そう。」




それにしても二人とも食事時にくる所はそっくりよね。他も似ていて欲しかったわ。


ファイーブは私の金髪蒼目とは真逆の蒼髪金眼。見ててチカチカするけど、私も同じようなものだから口にはださない。ファイーブは父王は南方地方の視察に行ったときに見初めた踊り子に孕ませた赤ん坊なのだそう。父王のこういうとこ大嫌い。


といけないいけない。至福の時を憎悪で汚すなんて。ロハスな心と愛を大事にしないとね。


ロハスってどういう意味だ?


食事が終わり、食器を片付ける使用人を見ながら書類仕事を片付ける。それにしてもロハス…ロハスてどういう意味なんだ?


「フォー様。」


使用人が皿を運び終わり、辺りは私とシェードのみ。そのタイミングを見計らっての発言。私はペンを止め耳を傾ける。


「どうしたのシェード?」


「スリー様からの言付けを預かっておりますが、聞きますか?」


「言付け??なんで??」


ファイーブとの出会った後、夕食はスリーと取る予定だ。それなのに事前に伝言を述べてくるですって?しかもあの兄上が持ってくる言付け…。


「‥‥聞きたくないわね」


「そんなの私に言わないでくださいよ。」


それもそうね。シェードはあくまで私の側近。それ以上でもそれ以下でもないのだからね。正直聞きたくないけれど。。。


「はい、嫌ですって訳にも行かないわよねぇ。。それで、その内容は?」


「はい。『X、完成。性能試験ヲ通過セリ』だそうです。」


「X、ねぇ。」


X。兄上が最近ご執心の魔道具。原理も性能も不確かで、その製作者の意図も分からない。


「そのXの性能試験が無事終わり、実用可能だと判断された、と。」


椅子の背もたれにもたれかけながら、紅茶を喉に流し込む。熱い液体が通り過ぎたのを感じながら、私は長く息を吐き、そして思う。


「…心底どうでもいい。」


後ろでシェードがぎょっとした顔で私を見ているが無視だ。


Xの目的も、なぜ兄上がそれを求めているのかも知っている。それが大切だということもね。でもやっぱりどうでもいいわね。どうしても興味がわかない。


「あの、フォー様‥‥、もしかして怒ってます?」


恐る恐る私に声をかけるシェード。小鹿のように怯えた目で私を見てくるが、そんなに私が怒り狂っているように見えるとでも?


別に怒ってなどいないのに。


「しょうもないものに態々大仰な言付けを使い、それに振り回される私の感情。怒る訳ないじゃないの。自分がこの上なく情けなく見えてしまうだけよ。」


Xの価値を知っているシェードは、私の言葉に慌てて口を開く。


「お言葉ですが、あの石は。。。。」


「X、ね。あの石(・・・)、じゃなくてX()、よ。」


「え?あ、あぁ。そうですね…。」


「Xなんていう恥ずかしいコードネームを使っているんだから気付きなさいな。それだけ誰にも知られたくない案件なのよ。」


だからこそ言付け。証拠に残したくなくて、小出しにしておきたいのだろう。そしてそんな事案に巻き込まれる私。不憫だ。


「兎に角この内容を前提に今晩話合おう、て訳ね。」


そう思わせといて何も触れなかったりするのがスリー兄上なのだが。本当に屑だわ。


他にも数点、報告や連絡を聞きながら仕事をこなす事数刻。いつのまにかお茶会の時間まであと僅か。


廊下から数人の足音がする。


コンコン、とノックをしたのは我が弟、ファイーブ。


「どうぞー。入っていらっしゃいな。」


「失礼します。姉上、本日は僕()お茶会に誘って頂きありがとうございます。」


深々と頭を下がる弟に、苦笑しながら私は部屋に招き入れる。


「畏まらなくていいのよファイーブ。私が貴方と(・・・)お話したくて招待したのだし。」



そう、貴方達ではなくて貴方と、ね。


ファイーブはなんと友人3人を連れてきやがったのだ。いや、別にいいんだけどさ。それで不快感を感じる私ではない。でもさ、前もって言って貰わないと用意する紅茶やお菓子が足りなくなるんだよね。



まぁ、ファイーブにとっては些細なことなのだろうけど。



ファイーブは所謂天才ってやつ。少ない努力で訓練、勉強、魔法全てにおいてトップクラスを誇る。クローバー農法とか、石灰を蒔くことで土壌が中和なんちゃらなんやら見たことも無いこと言って国内の食糧問題を解決したし、借金の制度を改革し、市場独占に対して異議を唱えて商売の平等を図り、人身売買組織を潰し、災害を喚き散らしていた第弐級風精霊を手懐けて、国内を跋扈していた毒蛇盗賊団を討伐したとかなんだとか。




今は学園に通っていて、聖剣を抜いたんだって。




相変わらず頭おかしいね。なによ聖剣て。私あれ地面とくっついているもんだと思っていたのに抜ける人が存在するなんて。しかも学園300年の歴史を傷つけるような実は聖剣偽物でした事件。何してくれてるの?文官が悲鳴上げてたよ?



でも、喜ばしいことではあるのよね。真実が明らかになったてわけだし。文官の仕事量が倍増したけど。



そんな私の思いに気付くわけもなく、ファイーブはただ無邪気に聖剣について語っていた。



「それで聖剣の作り手を探しに裏山に進んでいたら、(やしろ)があったんです!!」




「あらそうなの。」




そんなのねーよ。学園の裏山にそんなんあったらとっくに調べてるわよ。なんでファイーブにしか見えない/入れない、みたいな建物がこの王国には乱立しているのよ。


利便性皆無じゃないの。



「そこには守人の殻ゴーレムがいて、試合で勝てば案内してくれる場所なんです!」




「殻ゴーレムと言えば古代の汎用性戦闘兵ね。良く勝てたわね。」



最低でも騎士団一つは必要だ。しかし古代の殺戮マシーンを壊した当の本人は、きょとんとした顔で私の言葉を返す。




「え?獄炎と凍土の合成刀を見せたら通してもらえましたよ?」




「うんそれを使えるのは貴方だけだからね。」




「そんな、コツさえ掴めば簡単ですよ。」




「いや、普通の人はまずコツを掴む段階にすら立てないからね?」



私の言葉にうんうんと頷くファイーブのツレ。心なしか自慢げだ。


ファイーブの言った魔術はともに炎と氷の極式魔術。片方でも使えるのは国でもほんの一握りの人間のみ。そして反属性のそれらを合成。賢者ができるかどうかの神業を何でもないかのように言うから周りからのやっかみを買うっていうのに。



「それで?社には私達も行けるのかしら?」


私の疑問に、ファイーブは飲みかけていた紅茶を机に置く。そして首を静かに横に振りながら口を開く。



「難しいかと。どうやら雪巫女であるスノーと反応して開く亜空間に繋がっておりまして。」




「成程、血族証門ね。」




雪巫女…スノーね。。。私はファイーブの隣に座っている白い少女に声を掛ける。



「貴女のことよね?」




「はい。お初にお目にかかりますフォー王子。ドレイク家が長女、スノーで御座います。貴方様のお陰で我が家は取り潰されることなく…‥」


はいはい。お礼どーも。


スノー=ドレイク。ファイーブを支える貴族の中で唯一王霊議会の議席を持つドレイク公爵の愛娘。なんかファイーブがドレイク公爵の奥さんの病気を治したんだっけ。それで仲が良いらしい。




雪巫女とは北方地方の雪龍と共存していた一族の中でも波長に優れた者のこと。雪龍と想いを交わすことができて、巫女の始祖と雪龍はマブダチだったとか。




丁度200年程前に王国の一部となり、今に至るって感じだったはず。




そして実兄(スリー)はこの子の家に莫大な額の借金を負わせたんだった。なんでそういうことするの?そしてファイーブはS級モンスターを狩って借金を返した。アンタも何してんのかな?


お金建替えてあげるって言ったわよね?無利子って言ったわよね?なんでコツコツ返そうとしないのよ。なぜ態々ハイリスクハイリターンを選ぶんだ。理解に苦しむ。




二人とも大概おかしいと思う私は変なのかな。頼むから二人とも常識の範囲内で戦ってほしい。生態系とか他人の人生とかを巻き込まないで欲しい。



「それで、雪の巫女と聖剣になんの関係が?」


「はい!実は学園に刺さっていた偽聖剣は勇者を探すためでは無く、雪巫女の為の法具らしいのです!スノーが触ると第二形態、第三形態へとモデルチェンジします!」



目をキラキラと輝かすファイーブ。それもちゃんと上に報告したんだよね?シェードが何それ聞いてないみたいな顔してるけどシェードがハブられているだけよね?いやそれも嫌だけども。でもまさか報告してないとかないよね?




因みに第五形態まであるらしい。いらねえわそんな機能。報連相機能とかないの?それか問題児絶対監視するモードとか。それつけてファイーブを監視させるのが私の夢なんだよね。




「初代勇者と共に旅立った雪巫女様の祭具で、今の所有者はスノーになっています!」




それ国宝なんだけどなぁ。






国の!宝!なんだけど!!



勝手に持ち出して所有者を替えるな!!!





せめて報告しろ!!




<誰得設定>


殻ゴーレム


迷宮の奥底で、核を守るよう鎮座していることから守人という異名を持つ。このヒト型自律性戦闘兵器は古代千世紀からいるとされており、そのスペックは国をも傾けると言われている。故に殻ゴーレムが守護している存在に手を出すのは御法度とされている。


…という超、超、超重大な事項を知らないどこかの王子は派手に殻ゴーレムをぶっ壊しましたとさ。

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