第2話 お腹が減るって、大事だよ。
「ははは、なんだそれは。因縁ではなく事実ではないか。」
まだやってら。飯が冷めちゃうよ。
話を聞けば分かるように、姉上が進んだのは剣の道だ。「民を導くのは剣の道である!」とか言って騎士団にこっそり入団し、今では騎士隊長だ。
「いやなんでそうなった!?」と思ったが俺は何も言わない。俺姉上に嫌われてんだもん。何言っても火に油を注ぐだけだ。でも王族ならみんな本当の理由を知っている。勉強が嫌いだったからなんだ。
当時から姉上は頭悪い系の脳筋で、よく木刀ぶん回して遊んでいたからな。授業中に。アレは本当に危なかった。何度か死ぬかと思ったもん。手加減無しでの木材フルスイングなんて子供って怖い。
なまじ身体能力はあったものだから、誰も止められなかった。いや、止めようと思えば止めれたのだけど、そんなことで姉上の肌に傷を付けたらそいつの首は物理的にチョンパされてる。つまり誰も止めれない。
そんな狂気と身分に満ちた姉上だが、剣の才能はあったのかそれとも王家パワーで忖度してもらったのか騎士隊長にまで昇りつめた。そして今では国民の憧れの的。みんなだぁいすき姫騎士さまだ。
美人で、王子で、そして実力もあれば性格もいい。人気にならない訳がない。
お得意の火の魔術も派手で強い。見ている側からすれば盛り上がるんだよね。
子供の頃を知っている俺等からすれば笑えないけどな。授業が飽きたからって暴力振るってた奴が騎士だぞ??悪夢かよ。忍耐が必要な任務には行かせられないし、かといって忍耐が必要ない任務なんて早々ない。
人事部からすれば頭痛の種だろうね。
それにしても姫騎士ってアラサーちゃんになってもそう言うつもりなんだろうか。ちょっと気になるが、そんな姫騎士ちゃんは兄上からの挑発にこう言ったね。
「自らを誇示するつもりはないが、騎士隊長を担う実力を持つ私をそのように思うとは、兄上は耄碌したらしい。」
不憫兄上。25歳なのに姉上に老いているって言われている。25歳の兄は妹にとってはジジイなんだよね。兄上もこれには傷ついたのか若干顔を歪ませながらも姉上を詰る。
「俺はお前と違って王族としての責務をこなしているぞ。まさかそれを知らんのか?」
「なに、こなしているだけでしょう。結果はお世辞にも良いとは言い切れまい。」
これは本当。兄上は優秀で仕事を一部任せられているけど結果はイマイチ。第一王妃が修正したり宰相が監修して兄上の仕事を手助けしてたりする。正直に言うなら兄上がいない方が効率が良い。
まぁ当たり前ではある。王の仕事は繊細なものが多いし手軽くこなせるものじゃない。利権問題なんて双方が納得するように納めないといけないとか。相手の反感を買わないようにしつつも舐められないようにとか。王国の利益を最大限確保する交渉とか。胃が痛くなるような問題が多い。
心臓がいくつあっても足りない。
それを25歳という齢で王の仕事を完璧にこなしていたら怖いわ。父王要らない子になるじゃん。兄上はこれから王としての資質を磨いていく時期なんだ。完璧はまだ求められていない。
でも父王より政に秀でている第一王妃や宰相がワーン兄上に構うからここんとこ業務が滞っているらしい。これのせいで王の兄上への評価は微妙。新卒一年目に対する評価厳しすぎない?
それでも兄上がいない方が執務が進むのは確か。それゆえ姉上にもそこを突かれてる。
「そんな兄上が王としての国を治めるなど悪夢ですな。」
「政から逃げた奴が治世を語るとは。出てくる言葉が戯言でなければ兄として妹の成長を祝福できたのだがな。所詮は学無し。お前に治世は高尚過ぎて分からぬか。」
「なに、学無き私めでも分かるようなことが兄上でも分かっておられぬようですからご忠告として進言しているのですよ。」
「つくづく戯言でなければと思う。ここまで知性を重んじ施政を語るお前など初めて見る。」
高次元の舌戦に見えて二人とも言っていることは至ってシンプル。
『オレ、オマエ、キライ。』
これだけだ。
見て分かるように兄上は途中で勉学を投げ出した姉上を認めてない。たぶん最後まで王家単位とかいう単位群を履修してからなら認めていただろうけど、姉上はそうしなかった。だから『王族として、、』という教えを徹底的に受けてきた兄上にとって姉上の行動は逃げにしか映らないのだろう。
出来る奴は出来ない奴の気持ち分からんからね。
王族なのに政治が理解できないてマジ?それ王族じゃないじゃん、ていう気持ちなんだろう。俺も気持ちは分かっちゃう。
それぐらい重いんだよね王族は。
「騎士として生きる」王族ではなくて「騎士も兼ねる」王族としての生き方じゃないと認められないんだ。
でも姉上は前者を取っちゃった。
だから兄上と姉上の仲が悪いのは分かる。
分かるけどさぁ。。。
それ後にしない?
今は飯の時間なんだよ。
魔力と殺気をぶつけ合わないでさ、もっと楽しく食べようよ。
そう思いますよね第一王妃さ…しれっといなくなっているし。
どこ行ったの?
そう思って口元を拭うナプキンを手に取ればそこには文字が。
「ごめーん☆頭痛がするので頑張って♡」
え・・・??
なんで?
そんな惨いことして楽しい?
<誰得メモ2>
魔力について
筆者を最も苦しめた存在。これがあるお陰で物語の幅が広がる一方で、逆に物語の展開が滅茶苦茶になる。筆者に力量不足という言葉は聞こえません。
始めは「魔力=エネルギー」としていたが、それだと空気中にエネルギーが漂う事に。また、魔力を使って炎を出す際、「体内に魔力というエネルギーを炎に変換する臓器(細胞)」があることに。
‥‥いやそんな阿呆な。そんなスペース体内にねえよ。そんな無茶苦茶な物搭載するぐらいならもっと生存特化の臓器(細胞)を搭載するよ。
結果、「なんか良く分からん凄い物を引き起こす」ものということに。「文武両道にしてはクオリティが高い問題」も、「幼女に木材をぶん回せる筋力あるのか問題」も、「物語の辻褄が所々合わない問題」も、「一話一話の文字数が少ないよね問題」も。全て魔力のせいです。皆さんもそう思って頭空っぽにして読んでください。なにせこの物語はご都合主義なのでね。
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